湯川学
ゆかわまなぶ
帝都大学の理工学部物理学科第十三研究室に所属する天才物理学者。
年齢は初登場時は34歳で、『沈黙のパレード』の時点で40歳を過ぎているとされる(『透明な螺旋』では髪にところどころ白髪が混じっているとの記述も)。
どんなに少ない事実からでも論理的な思考で事件を解決していくことから、警察関係者からは「ガリレオ」と呼ばれている(ただし、本人はその呼ばれ方を嫌がっている様子)。実写ドラマ版では、学生時代の同期である草薙俊平や研究室の学生から「変人ガリレオ」と呼ばれている。
しかし、大学時代の友人である草薙(ドラマ版では彼の部下である内海薫や岸谷美砂)がしばしば超常現象絡みの事件について相談に訪れ、(なんだかんだ言いつつも)興味を示しその事件の捜査に協力している。
なお、本業の物理学に関しては、磁気に関する研究をしていることが語られている。
かつてはモノポール(単極子)の証明に関する研究を行っていたが、結局うまくいかなかったらしい。
また、その副産物として「磁界歯車」なる理論も考案したが、特定の条件下でなければ効果がないことが判明し、製品化や特許の取得などには至らなかったようだ。
しかし、それでも最終的に教授の座にまで上り詰めたところを見る限り、学界では彼の研究は一定の評価を与えられていたことが窺える。
『もしもモノポールと出会えたなら』という一般向けの磁気学の書籍を書いたこともあり、『透明な螺旋』ではそれがきっかけで思いがけない展開が起こることになる。
性格・思考など
基本的にマイペースな性格で、感情を荒げることは殆どない。ただし、大学時代の友人が事件に関わっていたことを知った際には「なぜそんなことを…。」とショックを受けているシーン(『容疑者Xの献身』)があり、元教え子が容疑者とされたある事件では「彼はそんなことをしない!」と珍しく感情的になるシーン(『禁断の魔術』)もあった。科学者らしい偏屈なところもあり、相棒の草薙の揚げ足を取るようなことをいうこともしばしば。
ドラマ版ではコメディリリーフを担うシーンが多く追加され、捜査中に遊んでいるとしか思えない行動をすることがある(後でちゃんと調べていたとわかるのだが)。ドラマ版では意外と女好きというスケベな一面があるが、原作では女性の色香が苦手。ただし後者が描写されたのは、ドラマ放送時から何年も後である。
彼自身の興味・目的は、あくまで「超常現象の原理や正体を解明すること」であり、事件の起きた背景や真犯人の正体、事件の顛末がどうなったか等については一切興味を示さない。ただし、自分の仮説を証明するための実験を通して、犯人像を特定したことがあるほか、スランプを克服するために自分に科学的な監修を依頼してきた野球選手の浮気調査を「浮気のことが気になってプレイに支障を来たしている。あなたの心の蟠りを解消したい」と自ら進んで引き受けたことがある(ただ、後者の場合「自分の実験や理論がスポーツ力学でも通用することを証明させたい。そのために障害となるものは取り除きたい」という彼の個人的な思惑も絡んでいるため、100%善意で行った行動とは言い難いのでは…という見方もある)。
子供の相手は苦手としている。本人曰く「子供は論理的ではないから」らしい(ある事件では、子供と長時間見つめ合ったことで体に蕁麻疹が出た)。ドラマ版では子供が近づいただけで蕁麻疹が出るという設定が付け加えられ、子供が近づくと「それ以上近づくなっ!」と急に叫び出す。
ただ、彼の中では未成年=子供というわけではないようで、中学生や高校生とは普通に会話をしている。
また、『真夏の方程式』では彼とある少年の交流が物語の主軸となっている。さらに言うと、湯川自身も「あんなに偏屈な子供は久しぶり」と割と嬉しそうであり、少年が事件に間接的とはいえ関与してしまったことを知った際には、彼にしては珍しくその少年のことを心配し、寄り添う行動を取った程。このことから、たとえ子供であっても湯川自身が自分と馬が合うと判断すれば問題なく接することはできる模様。
女性は論理的な人物もいるため特に苦手意識を抱いてはいない。ドラマ版では端正なルックスから女子大生からの人気が非常に高いという設定になっており、彼の講義では多数の女子学生が聴講に訪れている。
また、テレビスペシャルでは「事件現場近くのビーチにはビキニ姿の若い女が大勢いる」という台詞にのせられて事件に協力するというシーンもあり、女性に対する興味は少なからずあるようだ。
ただし、偏屈な性格ゆえにやはり関係は長続きしないらしく、現在のところ交際している女性の存在は確認されていない。ただし、教え子からは内海と付き合っていると勘違いされたことがある。
『透明な螺旋』では、高校2年から大学生にかけて6年越しで交際していた女性がいたが、結局相手の女性に他に好きな人ができたために関係を解消したと語っている(ちなみに、その女性は現在は結婚して家庭を持っているとのこと)。
癖・嗜好など
実写ドラマ版では、事件に興味を示した際に、「実に面白い」「実に興味深い」と言ったり、不可解な事象に遭遇した際に突如笑いだし、真顔で「さっぱりわからない」と言うのがお決まりのパターンになっている。このうち、「面白い」という台詞に関しては原作でも口にすることはある。
また、謎が氷解した際には、頭の中を整理するために所構わず数式を殴り書きし、最後はフレミングの左手の法則のようなポーズを顔に当てるのもお約束。その際は「そういうことか」「ようやく物理学らしくなってきたな」など一言コメントする。
が、これは実写ドラマ版において独自に付け加えられた要素であり、原作では彼がこうした行動を取ることはない。見せ場を作るための演出の一環である。
…しかし、『沈黙のパレード』では、考え事をする際にフレミングの左手の法則のようなポーズをとるシーンがあり、原作がドラマの設定を拾った形になっている(さすがに数式を殴り書きするようなことはなかったが)。
原作に忠実に構成された劇場版では、湯川が数式を書いて頭の中を整理するシーンは挿入されていない。原作の湯川はどこでトリックに気づいたかラストまで一切話さないので、読み終えた後、もう一度読んでみると面白いかもしれない。
原作・ドラマ版共通の設定として、インスタントコーヒーが好きという設定がある。これは、インスタントコーヒーを美味しいと感じているからではなく、単に「レギュラーを入れる時間が無駄だから」というある意味合理的な理由からである。ちなみに、彼の淹れるコーヒーの味は薄いらしい。
内海は飲んでくれるが、岸谷は元々インスタントコーヒーが苦手なため飲もうとせず、カフェのコーヒーを持参して来る。
特技は学生時代から続けているバドミントン。子どもの頃は地元のチームで活動していたとのこと。高校では陸上部に入っていたが、バドミントン部の駒が足りない時に助っ人として参加することがあったようだ。
その腕前は相当なもので、現在でも大会で優勝することがあるほど。ちなみに、プレイする際は打点や反射角などを物理的に計算しながらプレイしている。このため肉体的には刑事である草薙より鍛えられており体力もある(バドミントン勝負で草薙を圧倒した)。
ドラマ版ではアーチェリーやクライミング、ボクシング、野球(キャッチボール)等、様々なスポーツで優れた腕前を披露している。
名前の由来は、日本人で初めてノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士だと思われる。
作者曰く、当初俳優の佐野史郎(左)をイメージしていたらしく、実際、第1巻の巻末に佐野による解説が寄せられたほどである。だが実写ドラマ版以降は福山雅治(右)をイメージしてしまうようになったらしい。その後、原作『聖女の救済』終盤で内海薫がipodで福山雅治の楽曲を聴いているシーンが挿入されている。
二次創作でも実写ドラマの影響からか、福山雅治とのコラージュや、彼を思わせる長身でスマートな体系をしたハンサムな青年として描かれていることが多い。
『名探偵コナン』の「青山剛昌の名探偵図鑑」でも62巻で取り上げられたことがあり、その際にも福山雅治演じる実写版を元にした容姿で描かれている。
ちなみに、演者の福山は後に『ゼロの執行人』の主題歌「零-ZERO-」を担当する等、『コナン』やその作者である青山とも縁が深いが、意外にも両者が直接顔を合わせたのは、青山がゲスト審査員として出演した2024年のNHK紅白歌合戦が初めてだったという。
トリックは原作準拠のため大きな違いはないが、ストーリーは原作とは完全に別物となっている。例えば原作では2ページくらいしか登場しなかった人物がドラマ版だと悪の黒幕になっている。しかも湯川とは深い関わりにある立場である。
このほか、湯川の身近な登場人物が被害者・被疑者と関わりのある立場になることが多く、いわゆるヒロイックな展開が多く描かれている。
またドラマ版では主人公格である草薙がサブキャラクターに降格されているため出番が殆どなく、別の人物がその役回りを演じている。例えば原作の草薙は『聖女の救済』に登場する真柴綾音に惚れているのだが、ドラマ版だと湯川が彼女と同級生ということになっている。
堀井岳 - 同じ福山雅治が演じた、古畑任三郎第3シーズン8話に登場する犯人。車椅子に乗っているという違いはあるが、職業が化学に関する仕事(湯川が物理学者、堀井が科学研究所所員)、眼鏡に白衣姿、非常に頭が切れるが、人間の思考に興味を示さない点など、湯川と共通する部分が多い。古畑任三郎もガリレオと同じフジテレビ系のドラマである。
草薙・内海「「そうな」」「のか」「ですか」
湯川「そうだとも」
以下、最新作の重大なネタバレを含むので、未読の方は注意!! |
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実は、上記の晋一郎夫妻は学の実の両親ではない。
彼の本当の親は“アサヒ・ナナ”という名で活動している絵本作家の松永奈江という女性である。
松永は20代の頃に、ある男性と恋仲になっていた。その男性は当時学生で、その学業の優秀さを買われて、大学卒業後にアメリカの研究機関に留学する話まで持ち上がっていたほどだった。
当然、奈江は男性から一緒にアメリカに行くことを誘われたが、自分が行っても邪魔になるだけだと考えた奈江はその誘いを断り、その男性と別れた。
その直後にその男性との子どもを身ごもっていることが判明し、生まれた子供に父親のような頭の良い人になってほしいという願いを込めて“学”と名付けた。
しかし、経済的に余裕がなかったことを理由に自分の手で育てることは両親に反対されたために結局断念、晋一郎夫妻に養子として息子を預けたのである。
その後、奈江は一度夫妻から学を連れ戻そうと行動を起こしたこともあったものの、紆余曲折を経て断念。いつまでも過去に囚われていてはいけないと、新しい再婚相手を見つけて、それ以降しばらくの間は学と会うことはなかった。
学の書いたある本と出合うまでは…。
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