概要
1956年にシリーズ第1作「警官嫌い」が出版され、以後、約50年にわたって書き継がれた。警察の捜査活動から登場人物の私生活にいたるまでをリアルに描く「警察小説」(police procedural)というジャンルを確立した作品として知られる。
本シリーズは、アメリカ東部に位置する都市、アイソラ(Isora)を舞台としている。多種多様な人種が居住し、それぞれ独自の文化を根付かせている全米屈指の大都市であり、また全米屈指の犯罪が多い街でもある。87分署刑事課の刑事はこの管轄で毎日発生する窃盗から殺人まで、様々な犯罪に日々対処していく。
主な登場人物
スティーブ・キャレラ (Stephen Louis "Steve" Carella)
演:ロバート・ランシング
本シリーズの実質的な主人公。身長180cmほどの鍛えられた体を持つ男で、その顔つきは時に東洋系と間違われる精悍さを持つとされている。妻・テディに心底ほれている。
マイヤー・マイヤー (Meyer Meyer)
キャレラの同僚でユダヤ人。親が悪意を持って名と苗字を同じにし、また非ユダヤ人街で育ったため、いじめに遭うなど苦労をした人物。
アーサー・ブラウン (Arthur Brown)
黒人の大男で、好男子と評される。
コットン・ホース (Cotton Hawes)
赤毛の大男で、こめかみのところだけ白髪。
ボブ・オブライエン (Bob O'Brien)
今までに捜査の行きがかり上やむを得ず6人の人物を射殺しており、それが心に傷を負わせている。
バート・クリング (Bert Kling)
シリーズ1作目「警官嫌い」にて、キャレラの助手を命じられたパトロール警官であった。その後刑事になり、87分署刑事課の面子に加わる。
ロジャー・ハヴィランド (Roger Havilland)
ブル(Bull)とあだ名されるが、この言葉には警官を表す俗語と、大柄な人間をあらわす俗語の両方の意が込められている。粗暴な、平たく言うと暴力警官。
タカシ・フジワラ (Tack Fujiwara)
通称はタック。分署内はおろか作中においても珍しい日系人。
ハル・ウィリス (Hal Willis)
警官の身体基準である身長5フィート8インチ(約170センチ)に辛うじて届いている小柄な刑事。柔道の名人である。
フランキー・ヘルナンデス (Frankie Hernandez)
プエルト・リコ系。87分署の中のプエルト・リコ系住人が多く住む地域で生まれ育った。
ピーター・バーンズ (Peter Byrnes)
警部。87分署刑事課の責任者で、キャレラらの「親父」。刑事達を叱咤する頑固爺だが、部下に対する愛情を欠かしたことはない。
アルフ・ミスコロ (Alf Miscolo)
庶務係の警官。彼の淹れるコーヒーは美味で、刑事たちがよく飲んでいる。
サム・グロスマン (Sam Grossman)
科学捜査のプロ。
ピーター・クロニグ
グロスマンの部下、というより弟子。同じく科学捜査のプロ。
アイリーン・バーク (Eileen Burke)
おとり捜査を主に行う、特殊捜査班の捜査官。赤毛でスタイルの良い美人。
アニー・ロールズ
性犯罪専門の特別捜査官。
オリー・ウィークス一級刑事 (Oliver Wendell "Fat Ollie" Weeks)
当初は83分署の刑事として登場し、後に88分署に異動する。
太っちょで着るものにかまわず、粗雑で不快な体臭を漂わせる。
デフ・マン/つんぼ男 (The Deaf man)
天才的な犯罪者で、度々87分署管内及びアイソラ市全域で犯罪活動を行っている。補聴器をつけている姿を度々目撃されていることから「デフ・マン/つんぼ男」と呼ばれているが、本当に耳が不自由かどうかは不明である。
ドラマや映画になった作品
日本
- 天国と地獄(1963年、東宝) - 「キングの身代金」
- 恐怖の時間(1964年、東宝) - 「殺意の楔」
- 幸福(1981年、東宝) - 「クレアが死んでいる」
- 火曜日の女シリーズ『木の葉の舟』(1970年、日本テレビ)
- 87分署シリーズ・裸の街(1980年、フジテレビ、連続ドラマ)
放送中にドラマの写真(本編スチール)がハヤカワ文庫の表紙に使用された。また、2時間ドラマの枠でも製作された。
- 太陽にほえろ! 第571話「誘拐」(1983年、日本テレビ) - 「キングの身代金」
- 火曜サスペンス劇場『わが町』(1992年-1998年、日本テレビ、2時間ドラマ)- 「キングの身代金」「クレアが死んでいる」など