概要
青山学院大学英文科を卒業後、10年近くホテルマン生活を送る。
69年、ホテル勤務の知識を生かした『高層の死角』で江戸川乱歩賞を受賞。翌70年発表の『新幹線殺人事件』がベストセラーになり、流行推理小説作家の仲間入りを果たす。
代表作は『人間の証明』(に始まる棟居刑事シリーズ)『野性の証明』『腐蝕の構造』『悪魔の飽食』など。松本清張や西村京太郎などと並び「森村誠一の〇〇」というドラマタイトルだけで客(=視聴者)が呼べる作家である。
2023年7月24日、肺炎で死去。享年90。
人物
戦時中の辛い体験(終戦1日前の熊谷空襲で生家を焼かれ自身も九死に一生を得る、等)から強い反戦、反軍思想を抱いていた。軍隊、軍人が権力を有し横暴することの恐怖と危険、をテーマにした作品が多いのはそのため。同じような戦争体験を持つ大藪春彦とは親交が深かった。
また若い頃は山歩き好きだったことから、環境破壊問題等への痛烈な批判・提言も多い。
ホテルマンになった理由は「学校の成績が悪かった上に当時は未曽有の就職難で、雇ってくれる所があればどこでもよかった」。「自分に最も適さない職業、嫌で嫌でたまらない仕事生活」だったという。ホテルで働くことを「鉄筋畜舎の囚人」などと、事ある毎に何度も繰り返し振り返っている。
映画『人間の証明』にホテルフロントクローク役で特別出演(しかもロケ地が古巣の某ホテル)した際のことも「一種の復讐」「ホテル従業員サイドに戻らないためにこれからも懸命に小説を書いていく」とまで述べている(そこまで言わんでも´・ω・`)。‥‥ただし小説家になろうと強く志したキッカケはそのホテルマン時代、いわゆる缶詰目的で宿泊する作家から預かった原稿を盗み読みし、その続きを自分なりに書いてみるようになったこと。
『人間の証明』映画化等で世話になった角川春樹を「半生における恩人」とし、その角川が麻薬スキャンダルで失脚後もその姿勢は変わらなかった。自身の著作の多くを後にハルキ文庫へ移してもおり、自身の家族葬にも「角川兄弟(春樹と弟の歴彦)だけを呼ぶように」と遺言していた。