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概要

1939(昭和14)年から翌年にかけて雑誌〈奇譚〉に連載(「遠島船」だけは探偵小説雑誌〈新青年〉が初出)。全24作。

現代小説や歴史小説ユーモア物や冒険物など多ジャンルの作品を世に送り出し、「小説の魔術師」「小説の名手」の異名をとった久生十蘭(ひさお・じゅうらん。1902-1957)による探偵(推理)小説分野の代表作ともいえる作品(事実、創元推理文庫『日本探偵小説全集8 久生十蘭集』ではこの『顎十郎』シリーズが分厚い一冊の大半を占めている)。

幕末江戸を舞台に「顔の面積の半分以上が悠々と」という魁偉な面相の持ち主で中身も飛び切りの奇人な「顎十郎」こと仙波阿古十郎(せんば・あこじゅうろう)が持ち前の推理力と、いつどこで覚えたのかいまいち不明な博覧強記雑学知識等を武器に市中で起こる難事件を次々と解決していく捕物帳作品。

今なお「ジュウラニアン」と呼ばれる熱狂的愛読者を有する十蘭の人気評価、そして作品完成度の高さから「もっとも本格推理小説に近い捕物帳小説」と評されることもある。

ただし表題にもなっている主人公の特異すぎるルックスが災いしてか映像化例が圧倒的に少なく、その点で他の捕物帳作品と比べて一般層知名度が低いのは否めない。

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