人物像
「薔薇十字探偵社」の私立探偵。
中禅寺と関口の旧制高等学校の友人かつ一期先輩であり、木場の幼馴染。
関口と対照的に躁病の気がある。
眉目秀麗、頭脳明晰、運動神経もよく喧嘩も強いうえ旧華族の生まれという一見非の打ち所のない人物。
だが、本人はあらゆる社会的地位に無頓着で、自身を「神」、探偵とは「神の就くべき天職」であると豪語し、中禅寺兄妹以外の全ての人間を「自らの下僕」と標榜し、時として面白いものを子供のように追求する天衣無縫の変人。しかし人の道に外れた者には声を荒げて激怒するなど真っ当な面も持つ。
自社ビルで探偵社を経営する、名実ともに探偵ではあるものの「捜査は下賤の存在が行うもので、神たる自分には必要ない」として、一般的な探偵業や面倒な業務は益田ら「下僕」にやらせている。
傍若無人で傲慢な輩にも見えるが、「百鬼徒然袋-風-」の劇中、最も身近な人間の一人である中禅寺は榎木津礼二郎という「人物」をして
「榎木津はね、あれはあれで、榎木津と云う面を被って暮らしてるんですよ。何も被ってないようにも見えるし、本人もそう振る舞っているけれど――あれはそう云う面なんですよ」
と評している。
従軍経験があり、戦地での照明弾が原因で極度の弱視になっている。
視力は「ほとんど見えない」状態だと言われているのだが、問題なく日常生活送っているどころか、車の運転もできるし、動体視力は別扱いなのか物の動きを見切るのも得意。
しかも「他人の記憶が見える」という能力を持っている。
これこそ榎木津礼二郎が自身を神たる探偵と言い切る理由の一つで、子供の頃からあったものが、視力を大幅に失って以来更に強くなったという。
この能力は本人の意思と関係なく発動している上、得られる情報は視覚に限られており、音や匂いや時系列の関係性、思考や思い入れなどは一切把握出来ない。そのため榎木津自身がこれを証拠にして事件を紐解いたり犯人を問い詰めたりすることはまず無い。
周囲が事件を追う中で、榎木津が視えてしまった記憶を答え合わせするように物語が展開していくのも、本シリーズの特徴の一つである。
戦後期の昭和が舞台の劇中で「40近いおじさん」などと言われているが、平成18年の時点では存命らしい。
人の名前を覚えるのが不得手で、覚えようとする努力すらしない。
そのため、付き合いの浅い深いに関係なく適当に呼んだり、何度も間違う、罵倒ついでに変なあだ名をつけるという癖がある。
ex)
益田 龍一「マスカマ」「カマオロカ」「バカオロカ」
青木 文蔵「コケシ」
鳥口 守彦「トリ頭」
本島 俊夫「本島五十三次」「本権(もとごん)」など、間違えまくる、間違えた上に略す、「いつかのナントカいう人」呼ばわりなど、名前を覚えない関連では一番ひどい扱いを受けている。
中禅寺 秋彦「京極堂」「馬鹿本屋」
中禅寺 敦子「敦っちゃん(あっちゃん)」
木場 修太郎「箱」「下駄」「四角」「豆腐」
関口 巽「猿(サル)」「セキ」
が、「百鬼徒然袋-風-」や「邪魅の雫」では全員のフルネームを覚えている節があり、上記の中禅寺の人物評が出るエピソードでは、招待状を正しい名前で手ずから書き上げたりしている。
これも「榎木津と云う面」を表す振る舞いなのかもしれない。
京極堂や関口は、彼のことを「榎さん(エノさん)」と呼ぶ。
好きなものは猫と赤ん坊。魚を飼いたいとの記述も。
苦手なものはクッキーのような水気のない菓子と、虫の竈馬。
見た目が西洋風なのでよくクッキーなどを出されるそうで、それをよく愚痴る。
両親は健在で、特に元子爵の父親は華族制度が廃止されてなお名士と知られる傑物であると同時に穏やかな紳士なのだが、変人の榎木津すら敵わない行動力の化身な大変人という御方。劇中で共演した際には普段の躁っぷりが鳴りを潜めていた。
テレビアニメ『魍魎の匣』での声優は、森川智之。ドラマCDでは、小野大輔。
『虚実妖怪百物語』でも、榎木津礼二郎を意識したキャラクターが登場した。
関連イラスト
別名・表記ゆれ
榎木津 榎さん 神