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劇光仮面

げきこうかめん

劇光仮面とは、山口貴由がビッグコミックスペリオールにて連載している漫画作品。作者の”特撮愛”を愚直に突き詰めた内容となっている。
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概要編集

山口貴由ビッグコミックスペリオールにて連載している漫画作品。

画業30年を超える山口が初めて描く”現代劇”であり、彼が愛する昭和特撮作品群をフィーチャーした内容となっている。

本作は氏がこれまで手がけてきた作品のフォーマットから完全に外れた内容であり、倒すべき悪も無く守るべき世界はとうの昔に平和でヒーローはテレビの世界の住人という、現実と地続きの世界観となっている。

登場人物達も外連味のない等身大の存在であり、確たる自我を持てず何者にも成れない鬱屈を抱えた至極現代的なキャラクター造型となっている。

本作はそんな彼等が憧れる特撮、それも特撮の礎を築き上げた”昭和特撮”に焦点を当てており、「特撮とはどんな思いで先人が生み出したのか?」「それを見て育った者達は特撮をどう受け止めればよいのか?」「昭和特撮が生み出した”正義の味方”は当時と価値観の異なる現代人が成り得るものなのか?」「仮に世を乱す怪異が本当に現れたとして、現代社会はそれに対応できるのか?」という飽くなき思考実験が彼等の間で成される。

これは何者でもない存在が特撮ヒーローに本気で”成ろう”とする、ある種の狂気に彩られた物語であり、山口貴由が己の創作原点を洗い出す私小説である。

また、同じ世界を舞台に同じ主要登場人物達が織り成す連続した物語でありながら、単行本各巻でそれぞれ話のジャンルが異なる、という解釈も可能な構成となっているのも特徴の1つである。


ストーリー編集

仮面には物語がある。託された行動様式がある。

仮面をつけた者が、それを憑依させた時、

臆病者は何事かを決意し、何者かに変身する。

人生の主役が自分自身であることを知る芯のある者には難しいだろう。

捨て去るに惜しい自己など持ち合わせていない者こそが

仮面を受容するための空洞を用意出来るのではないか。


現代、東京。

アルバイトで暮らす29歳の青年・実相寺二矢は、大学生時代に所属していたサークル「特美研」の仲間であり、主宰であった切通アキノリの訃報を受ける。

切通との出会いを回想しながら、通夜式の会場で元・特美研の仲間達と再会する実相寺。彼らは切通からある遺言を託されていた。


「自分が死んだら、自分の劇光服を特美研のメンバーで裁断してくれ」


遺言に従って切通の劇光服・ゼノパドンを裁断するため、仲間たちの協力で自らの劇光服を纏い、空気軍神ミカドヴェヒターに”変身”する実相寺。


特撮の描く”怪人”や”怪獣”、”正義の味方”とは何なのか?

実相寺の執念はどこから湧くのか?なぜ特美研は廃部させられたのか?

そして、彼らの過去に何があり、これから向かう先とは?


やがて闇より来たる”本物”の怪異に、彼等はどう立ち向かうのか。


これは星をつなぐ者たちの物語だ。


登場人物編集

  • 実相寺二矢(じっそうじ おとや)

本作の主人公。29歳のアルバイト。線の細い痩身の青年。

自我が希薄で生への執着も薄い浮き世離れした男であるが、優れた感受性と物事の本質を見抜く眼力を持つ。

狂気じみた”変身願望”に囚われており、大学のサークル仲間の切通アキノリの死を切掛に空気軍神ミカドヴェヒターに”変身”する。

大学には一年浪人して入学したため、切通とは同い年だが学年は一つ下であった。現在、普段は絵画のヌードモデルのバイトと、模型の製作代行業で糊口をしのいでいる。

平時は思った事をトラブルを招くレベルでそのまま口にしてしまったり、29歳の時点ではある理由から他人とあまり接しない生活をしている為、他人と会話する必要が有る際は事前に自宅で想定される会話の予行演習を行なうなど、自分でも「人として大事なものが欠けているのかもしれない」と言うレベルの言動を行なうが、芝居と割り切った場合は「ハキハキとしたしゃべり方の好青年」を演じる事が可能。

痩身ではあるが、特美研時代から〝劇光服”の実装のために様々なトレーニングを積んでおり、さらに”正義の味方”への信念と執念から、「人間を片手で掴んだまま、もう片方の手で雲梯にぶら下がる」等といった、一般人よりも優れた身体能力を発揮する。

かつての仲間達が、社会人として就職結婚と「普通の幸福」を掴んでいく中、置き去りされたような孤独と虚無感を覚えつつも、”正義の味方”へ変身して悪を叩くことを夢想し続けている。

なお、意図的なものかは不明だが、彼の年齢である29歳は「覚悟のススメ」連載時の作者の年齢でもある。

名前の由来は、特撮関係で有名な映像作家の実相寺昭雄右翼テロリスト山口二矢(日本社会党委員長である浅沼稲次郎の刺殺犯)と思われる。

実相寺二矢


  • 切通アキノリ(きりとおし あきのり)

帝都工大特撮美術研究会(以下、特美研)の創設者。

溢れんばかりの特撮愛を持った情熱漢であり、実相寺らと一緒にサークル活動に勤しんでいた。様々な怪人の”劇光服”を製作していたが、29歳の若さで死去。彼の死からこの物語は始まる。

名前の由来は特撮関係で有名な映画評論家・脚本家・映画監督の切通理作と思われる。


  • 真理りま(まり りま)

特美研の元メンバー。大手玩具メーカーに勤務しているOL。エリートの彼氏持ち。

高校の頃まで特撮キャラのコスプレをやっており、「平塚クィーン」の称号を持つ。

切通の葬式を期に他のメンバー達と再会した。現実的で少し冷めたモノの見方をしており、特撮を商品にする職業柄もあって既に特美研時代のことは思い出として切り離し、身を固めることを考えている。

再会した当初は実相寺を空想の中に生きていると蔑んでいたが、やがて命を省みない彼の生き方を心配するようになり、なんだかんだでほっとけずに世話を焼く。

劇光服は「魔改探偵ベーアサーダ」。


  • 中野孝文(なかの たかふみ)

特美研の元メンバー。現在は神奈川県警に務める警察官

優しく誠実な人柄をしており、ある意味で現実的なヒーローとなった人物。

着実にキャリアを積み重ね、将来を誓った恋人も出来た順風満帆な社会人であるが、心の奥底には特美研時代に見た「劇(はげ)しい光」が未だに宿っている。

劇光服は「壁人キボーガー」。

名前の由来は特撮監督の中野昭慶と思われる。


  • 成田一縷(なりた いちる)

特美研の元メンバー。現在は電力会社で原子炉の廃炉プロジェクトに携わっている。

解決の目処が立たないが誰かがやらなければならない事業に関わっている、中野孝文とは別の意味で現実的なヒーローとなった人物。

明るくマイペースな黒髪の美人だが、特撮に対して一本筋の通った哲学を持つ。普段は陰鬱な実相寺も彼女と接する時には少しだけ表情が明るくなる。

日本で一番有名な特撮ヒーローである「星雲菩薩ネビュラブッディ」をデザインした特美造形師・成田優作(モデルはウルトラマンをデザインした成田亨)を祖父を持つことから、サークルメンバーに一目置かれていた。

劇光服は「星雲菩薩ネビュラブッディ」。


  • 芹沢耀(せりざわ よう)

特美研の元メンバー。陽気で明るい好青年で、良くも悪くも遠慮が無い。

飛び級で大学に進学したが、現在はポストドクター(博士号取得後も大学に残って大学の業務として研究を行なう、いわば「非正規雇用の研究者」。なお、特に理系の博士号取得者の就職先がなく、多くの優秀な研究者が「研究者だが非正規雇用」となってしまう事態は、現実の日本でも社会問題となっている)。

なお、工業大学と名のつく大学の出身でありながら生物学専攻だが、作中の「帝都工業大学」のモデルと思われる東京工業大学には理学部および生物学関係の学科も存在している(ちなみに現実の日本では前述のポストドクター問題は、他の理系の分野以上に生物学関連の分野において顕著である)。

立場的に時間の融通が利きやすいためか、実相寺と再会してからはビデオチャット等で話し合うことが増えた模様。

劇光服は「蝶忍アヤミユーリー」。

名前の由来は初代ゴジラの登場人物である芹沢大助博士と思われる。


  • 藍羽ユヒト(あいば ゆひと)

武闘派のコスプレイヤー。覆面ヴァイパーのマスクを被り、悪質なコスプレイヤーや半グレのようなグレーゾーンの悪人を制裁し、ネットの有志が決めるクライムファイターランキングで一位を取ることに躍起になっている男。だが、胸の内には「本物のヒーロー」への純粋な憧れがあり、実相寺を本物と見込んで戦いを申し込んだ。

火事場の馬鹿力を常に発動出来る特異体質の持ち主であり、その身体能力は常人を上回るが、筋力に骨格がついて行けず自傷してしまうという弱点にもなっている。この体質のせいで、何度も人生に躓き、その度に「蛇が古い皮を脱ぐように生れ変りたい」という願いを込めて、体に蛇のタトゥーを入れ続けてきた。

なお、この「火事場の馬鹿力」は「いつでもリミッター解除が出来る『能力』」ではなく、あくまで「生まれ付きリミッターに不具合が有る状態」なので、力の制御そのものは苦手であり、本人にとってもいつ火事場の馬鹿力が発動するか判らず、学生時代に拳闘部に入っていた頃は「パンチの強弱を付けられない」というボクサーとしては致命的な欠点が有った。当然ながら、ちょっとした喧嘩やトラブルでも相手に大怪我をさせてしまう可能性が有り、しかも、それを本人の意志では制御困難という自分自身で「本人にとっても周りにとっても厄介」と認識しているような特性の持ち主。

単純な運動神経に関しては超一流スーツアクター並で、ヴァイパーの必殺技「ヴァイパージャイロ」をトランポリン無しで実演できるほどの跳躍力と空中姿勢制御能力を持つ。

生業はデリバリー配達員で自分を「端役にさえなれない点」と認識していたが、TV特撮「覆面ヴァイパー」の主演俳優だった岩倉芯との出会いが切っ掛けで「偽ヒーロー狩りのヒーロー」という「役」をネットから与えられる事になる。

主人公・実相寺が作中で「星をつなぐ者」と呼ばれるのに対し「劇的なる者」と呼ばれている。

「特撮好きだったから劇光服を製作した者/成行きでコスプレ・ヒーローになった後に原作にハマった者」「特撮はテクノロジーだと考える者/特撮とは肉弾だと考える者」「ヒーローとは人間を超えた『兵器』であり衆目下では戦うべきではないと考えている者/ヒーローとは人間の極限であり衆目下で戦うべきと考えている者」「一ノ谷特撮(モデルは円谷プロダクション)の劇(はげ)しさを継ぐ者/70年代東栄特撮(モデルは東映)の劇(はげ)しさを継ぐ者」など、様々な面で主人公・実相寺とは対照的な人物。

単行本第3集では、実質的な「もう1人の主人公」となっている。


  • 鹿角亜門(かづの あもん)

特殊清掃会社に勤める青年。至って普通の見た目だが、どこか不自然で「作ったよう」な雰囲気を漂わせている人物であり、感情の起伏が乏しい寡黙な人柄をしている。

実は関東近郊で発生している不審死事件に関わっている犯罪者であり、巧妙な、と言うより人間離れした手口で事件を闇に葬っている。

藍羽ユヒトの身に起きた事件を独自に調査していた実相寺らが接触しに来たことで、彼等を”始末”するために動き出した。

見た目に反し、太平洋戦争終戦直後〜1950年代にはある程度以上の年齢だったかのような発言をしているが、その正体は……?


  • 伊栗鼠(いりす)

鹿角亜門の仲間と思われる少女。本人は「兄妹」と称している。

中学生〜高校生らしい服装・容姿をしているが人間を殺傷可能な、ある特異な能力を持っている。

劇中の都市伝説「炙る少女」本人らしいが……?

雑誌掲載での初登場時は「今風の女子学生」に見える外見だったが、以後のエピソードや単行本では「昔の女子学生」風の外見となっている。

彼女のみの固有能力・固有特性なのか、彼女の「同類」にも共通する特性なのかは不明だが、関節の可動範囲が常人よりも遥かに大きく、近接戦闘においては、常人には絶対に不可能な動き・技を行なう事が可能な一方で、電撃への耐性は常人を下回り、常人であれば気絶程度で済む電撃を食らった場合でも、鼻や指を欠損するほどの重大な傷を負う場合が有る。

何かの理由で何度も人を殺傷しているようであり、かつ、その現場には鹿角亜門も現われて、彼女が取り逃がした者の口封じや死体の始末などを行なっている。

だが同時に「彼女と亜門の会話が微妙に噛み合っていない」「彼女と亜門が同じ現場で人を殺傷している理由にはズレが有り、亜門は独自の思惑で彼女が行なった殺人の証拠隠滅を行なっているようにも見える」などの不審な点も見受けられるのだが……?


作中に登場するヒーロー/ヴィラン編集

ヒーロー編集

  • 劇光仮面1945

作中に登場するほぼ唯一の「劇中劇の登場人物でない(作中世界における)実在のヒーロー」にして作品タイトルにもなっている存在。

飛行帽・旭日旗を模した模様が描かれた弥勒菩薩の仮面・背中には圧縮空気の入った金属瓶と云う奇抜な出で立ちをしている。

戦後の混乱期に現れた怪人で、警察でも手が出せない進駐軍の不良兵士達を圧搾空気仕込みの円匙(大型スコップ)で闇討ちしてまわる武装自警団であった。

「中の人」は元「伏龍」特攻隊隊員であり、「怪人の父」と呼ばれる美術造形家・狭山章の戦時中の同僚。

なお「劇光」とは「劇(はげ)しい光」の意味。名前のモチーフは正義の味方という言葉を世に知らしめた最初期の特撮ヒーロー月光仮面であろう。

また、その行動・経歴は「空手バカ一代」における大山倍達にも似ている。

ある意味で「『正義の味方』になれる者が居るとすれば、心に何らかの重大な欠落が有る者だけ」「『正義の味方』が実在したなら、単なる『怪しい人』『危い人』との区別は困難」と云う事を如実に示した人物。


  • 空気軍神ミカドヴェヒター

戦時中に作られたが海底に遺棄された改造兵士。

戦後になって甦り、非道な人体実験を行いながら裁きを免れていた軍人達を誅戮する。

背中に背負った圧縮空気瓶内の空気を近接戦闘や化学戦に使用するという設定。

なお、劇中の設定では現実世界のダース・ベイダーに相当すると思われるキャラクターの元ネタがこのミカドヴェヒターなので、メタ的に言えばデザイン・コンセプトの1つは「明るい色のダース・ベイダー」の可能性も有る。

名前や設定の元ネタは特撮Vシネマミカドロイドであろうか。

また旧日本軍により作成された「兵器」である事や様々なギミックが搭載されている事、化学兵器戦にも対応しているという設定から強化外骨格・零を、より「リアル」な設定でリファインしたものとも言える。

「甦るまで海中に遺棄されていた」「背中に背負った圧縮空気瓶」など劇光仮面1945を思わせる要素が存在するが……?


実相寺のミカドヴェヒターの劇光服は、設定通りにギミックに高圧の圧縮ガスを用いる仕様となっており、背中の圧縮ガスボンベからベルトに装着されたチャンバーに高圧ガスを充填し、セットした軍刀真剣)を猟銃並の圧力で打ち出して超高速の居合抜きを行う「軍刀加速尾錠」、ブーツの踵に内蔵されたシリンダーをガスで打ち出して約3メートルもの垂直跳躍を可能とする「爆芯踵」といったギミックを備える。

胴部には衝撃吸収シリコンシートが仕込まれており、ピッチングマシーンから放たれた投球にも耐えるほどの防御力を持つ。

武装は軍刀の他、ペンキを射出する南部十四年式拳銃トイガン、グローブに仕込まれた砂鉄電磁石で拳に集中・硬化させて打撃力を向上する「防刃手袋」、唐辛子粉末と石灰を混合した刺激剤をブーツの脛から散布する「き2号瓦斯弾」等を装備する。


  • 空気軍神ミカドヴェヒター「漆黒」

上記の「空気軍神ミカドヴェヒター」の夜間迷彩仕様。早い話がフォームチェンジ

コスチュームの大部分が黒になっているが、ガスマスクやヘルメットの一部など通常形態では黒っぽい色だった箇所は白っぽい色になっている。

実相寺が使用する劇光服は、ある方法で「変身」を実現しており、通常のミカドヴェヒターより背中の圧縮空気ボンベが小さい(ただしボンベは2本になっている)。

また、劇中では装備品の1つである南部十四年式拳銃のトイガンには「合法的に入手出来る材料だけで製造可能な毒ガス弾」という物騒な弾が込められていた。(※良い子は真似をしないでね)


  • 星雲菩薩ネビュラブッディ

外宇宙から来たガス状の知的生命体が誤って死なせた地球の宇宙飛行士を甦らせた存在。

ただし、その際にガス状知的生命体が「宇宙船」と「人間」を1つの生命体と誤認してしまった為に、巨大な金色の巨人が生まれてしまった。

その後は甦った際に得た能力を駆使して怪獣や侵略宇宙人と戦うヒーローとなった。

劇光仮面1945とは「弥勒菩薩を思わせる顔」と云う共通点が有る。

おそらくは元ネタはウルトラマンスペクトルマン

作者本人は意識していない可能性が高いが「地球外知性体により蘇生させられた際のアクシデントで超能力を得た」と云う設定は、偶然にもあるアメコミの悪役と類似点が有る。

元ネタであるウルトラマンと同じく、登場する怪獣達は「日本人の祖先に滅ぼされた少数民族の守護神の成れの果て」「隠蔽された宇宙開発事故の生き残りが怪獣化した姿」「科学文明の暴走により母星を失なった難民」など「人類の過去の所業の報いの具現化」や「未来の人類も似た運命を辿るかも知れない外星人」などの本放送当時の視聴者にとって「他人事ではない」存在が多かった。

そして、ウルトラマンのスペシウム光線に相当する必殺技の正体は、「移送の技」であり、爆発四散したと思われていた怪獣達は、宇宙空間で生きる事が出来る時代・場所が見付かるまで眠り続けていたのだった。


成田一縷のネビュラブッディの劇光服は、医療用AEDを機電ギミックとして組み込んでおり、マスク内部でスイッチを噛んで通電させることで、30A・1200Vの電気ショックを掌から発することが可能。元々は救命用の装備だが、接触時間次第で大型哺乳類を失神させる程の威力があるため、護身用の武器にも使える。

また、徒手格闘をメインに戦うネビュラブッディの設定とスーツの形状から、他のメンバーのように大きく嵩張る装備を持たないため、最も身軽に動ける利点がある。


  • 壁人キボーガー

土木工事車両より変形する人型ロボット。

元々は軍事独裁国家において民主化運動弾圧の為に使われる予定だったが、電子頭脳の故障により非人道的な命令を受け付けなくなり、修理の為に日本に送られる。

だが、手違いで正義の心を持つ1人の少年と巡り会った事で正義の戦士となる。

おそらくは元ネタは電人ザボーガー。また、少年が無線通話で操縦するいわゆる「箱ロボ」的な形状の変形ロボットという点は大鉄人17とも共通点が有る。

なお、1980年代半ばまでの韓国は軍事独裁国家であり、国内の民主化運動に対して苛烈な弾圧が加えられていた一方で、当時の韓国政府と日本の自民党政権は概ね良好な関係にあった。

「軍事独裁国家で民主化運動弾圧の為に使われる予定のロボットが、何故か修理の為に日本に送られる」という一見するとおかしな設定は、その「軍事独裁国家」のモデルが「民主化前の韓国」であったと考えると一応の辻褄は合う。


中野タカフミのキボーガーの劇光服は、厚さ2.5~3ミリのステンレス板を材料とした板金加工と溶接で造形された西洋甲冑のようなもので、インナーとしてバッテリー駆動のパワーアシストスーツを重ね着した上に着込む仕様となっている。その防護性能は高く、劇中では大学のアメフト選手の全力タックルを真正面から受け止めた際、装甲が少々ひしゃげた以外にはびくともせず、着装者である中野には一切ダメージが通らなかった。

これに劇光服製作予算のための夜間の引っ越しバイトで鍛えられた中野の肉体と荷物運びの技術も併さることで、廃車を持ち上げてひっくり返すほどのパワーを発揮する。

この他、下腿裏には押し込まれることを防ぐための「後退防止用ドーザー」を展開するギミックを持つ。


  • 蝶忍アヤミユーリー

蝶のモチーフを持つ忍者系の変身ヒーロー。元ネタはネーミングからして忍者キャプターか。


芹沢のアヤミユーリーの劇光服は、紫外線によって色調を変えるフォトクロミック素材で出来ており、夜になるとデフォルトカラーの極彩色から暗灰色へと変化する。

また、掌には投光装置が仕込まれ、マスクは防塵・防毒ガスマスクとなっている等、忍者系ヒーローの設定を汲んでか、ステルス性や情報収集能力を重視した仕様となっている模様。

この他、金属繊維が織り込まれた防刃マントを機電ギミックによって金属フレームでグライダーのように広げ、高所からの落下時の衝撃を和らげる「忍法アンブレラユーリー」や、相手の鉄製凶器を吸着して封殺する強力磁石剣「マグネユーリー」等を装備している。


  • 魔改特捜ベーアサーダ

体の各部に「鋏」のモチーフが有る女性の変身ヒーロー。

必殺技も両足を鋏に変形させ敵の体を両断すると云うもの。

おそらく元ネタは阿部定

なお、「怪人犯罪のプロファイリングを得意とする」「変身前に旭日章を付けている」などの事から変身者の社会的身分は「警察官。少なくとも日本の警察関係の機関に所属する公務員」と思われる。

原作は永井豪をモデルにしたと思われる漫画家が描いたお色気路線の作品だが、特撮版はデジタルリマスター版を見ると主演女優が化粧品などで痣を隠しているのが判るなど、撮影現場はかなりハードな状況だった模様。


真理りまのベーアサーダの劇光服は、ワックスで煮固めて作られた分厚いレザーや強化繊維プラスチック等が用いられており、ナイフでも貫通しない防御力を誇る。

必殺技は胴締めの体勢からロングブーツ側面に装備された自転車用のミニ圧縮空気ボンベを開放し、ロングブーツを瞬時に固く膨張させることで再現しており、これに締め付けられれば相手は窒息、或いは自らの呼吸によって肋骨を粉砕骨折する羽目になる。

この他、胸部装甲の先端部分に根菜程度なら容易く乱切りにする二対の回転刃「スライサーB88」、ブーツの踵部分に液体接着剤入りのクラックボールをバネ仕掛けで射出する「ヒールショット」、撹乱用のレーザーポインター「ベーアアイポーク」、メインウェポンとして二対一組のチェーンソー「ベーアカッター」を装備する。


  • トライジオン

悪魔でありながら人間を愛してしまった戦士。

その二面性を象徴するかのように左右非対称な姿となっている。

おそらくは元ネタはキカイダーデビルマン


  • 覆面ヴァイパー

70年代の変身ブームの火付け役となったヒーロー。

元ネタは仮面ライダーであり、撮影当時のエピソードなども忠実に踏襲している。

ヴァイパーが一世を風靡したのは演者達による体を張ったスタントにあり、製作した東栄は高度な特撮技術を持たなかったが故に、肉体で特撮を生み出すという路線を開拓したのである。

ために演者のヒーローに対する意識も非常に高く、初代覆面ヴァイパーを演じた俳優の岩倉芯は杖をつく老体になっても”正義の味方”としての心構えを自らに課しているほどである。

ただし、撮影時の「技術や予算の不足を『肉弾』で補う」という方針の為、劇中では「その後に何らかの重大な事故が起きた」としか思えないシーンが度々有り、主演の岩倉芯はモデルになった人物と同じく撮影中に大怪我を負いベトナム戦争での負傷者向けに開発された治療法を受ける事になる。

元になった(初代)仮面ライダーとの主な外見上の相違としては「マスクが毒蛇をイメージしたもの」「体の各部に蛇の鱗を思わせる意匠」「ベルトのバックルが秘密結社パンドーラの怪人たちと同じものになっている」「変身機構の一部と思われる金属製の首輪(変身前でも付けている)」「胸部から腹部にかけてのプロテクターが蛇の腹にも見える意匠になっている」など。

なお、変身ポーズは「ヴァイパーアシッドと呼ばれる物質を全身に行き渡らせる為の動作」「いわば自分の意思で行なう臓器変換手術」という設定。

ちなみにソーシャルゲーム「アリス・ギア・アイギス」にも同じ元ネタで覆面ヴァイパーに似た名前のヒーロー「ヴェイパーヘイズ」がいる。


藍羽ユヒトのヴァイパー衣装は、岩倉芯から譲られたヴァイパーの限定レプリカマスクの発光眼をゴーグルに改造している以外に実戦的なギミックの類を持たず、ユヒト自身の身体能力のみを武器としている。


なお、演者である岩倉芯の更にモデルである藤岡弘、氏は蛇が大の苦手である


  • 覆面ヴァイパーゼクウ

2000年放送のTV番組に出た仮面ライダークウガを毒蛇モチーフにデザインしなおしたような姿のヒーロー。「色即是空」がネーミング元。

初代覆面ヴァイパーと同じく体の各所の蛇の鱗を思わせる意匠が有り、顔の下半分もクウガに似ているが毒蛇の牙を思わせるアレンジがされている。どちらかと言えば仮面ライダー龍騎に登場した同じ蛇モチーフである悪のライダー「仮面ライダー王蛇」に近い。

元となったと思われる仮面ライダークウガと違いベルトのバックルは「毒蛇をモチーフにしたヒーロー/怪人のシンボル」「悪の組織のエンブレム」の両方の解釈が可能な禍々しいものとなっている。

なお、変身ポーズは初代とは違いあくまで「ラグビーにおけるハカのような戦意高揚の儀式」という設定らしい。


  • 覆面ヴァイパーアゴー

名前のみ登場。ゼクウの後番組らしい。

仮面ライダーアギトを元にしたヒーローと思われる。


  • 宇宙正義レンポーK

このキャラのコスプレをしたコスプレ防犯員(ただし、前々からネット上では強そうな相手にはヘイコラするような人物だという噂が有った模様)が登場したが、作中では詳しいストーリー・設定などは述べられていない。

宇宙刑事シリーズを元にしたヒーローと思われるが、外見にはかなりの相違が有る。



  • ネビュラブッディトロワ

星雲菩薩ネビュラブッディと同じシリーズの作品と思われる。

「成田一縷の結婚相手(一縷とほぼ同年代と思われる)が子供の頃に観ていた」「SF作品としても優れているという定評が有る」などから、現実世界におけるウルトラマンティガに相当する作品と思われる。


  • ブッディゼロ

このキャラのコスプレをしたコスプレ防犯員(ただし、家出少女を保護するフリをして猥褻行為を行なっている、保護した家出少女に売春等の違法行為を強要している、などの悪い噂が有る)が登場したが、作中では詳しいストーリー・設定などは述べられていない。

ウルトラマンゼロを元にした星雲菩薩ネビュラブッディと同じシリーズのヒーローと思われる。


  • 人魚戦隊ヤオビクニーズ

90年代の戦隊ヒーロー。

顔にはシュノーケルを、胴体には袈裟をモチーフにした造形が有る。

何故かメンバーのコードネームは戦隊によくある色(レッド,ブルーなど)ではなく、ハーブスパイスの名前となっている。


  • 少女兜ハチカズキoo(ダブルオー)

80年代の特撮美少女ヒーロー。

モチーフは鉢かづき姫とドラマ版スケバン刑事であろうか。スケバン刑事との違いは、被せられた鉄仮面を人生の檻ではなく、自らを護る砦と再解釈している点にある。

偶然か、何かの伏線かは不明だが、その外見は劇中世界の都市伝説「炙る少女」に出て来たものと似ており……?


ヴィラン編集

  • シャゴラス

「覆面ヴァイパー」初期の悪役怪人であり、シャコを模した能力を持つ改造兵士。

地下のパイプラインに潜伏し、強力な捕脚肢で地盤を陥没させ住宅地を消失させた。

デザインをした狭山章は無意識の内に「伏龍」を重ねてしまった。


  • ゼノパドン

「覆面ヴァイパー」シリーズの悪の組織「パンドーラ」のエリート怪人。

実は「鼻の穴」に見える箇所こそがスーツアクター用の「覗き穴」。


  • ヴルード

1954年の同名の怪獣映画に登場する怪獣。

ゴジラが元ネタと思われ、姿以外の設定も、ほぼゴジラと一致する。

成田いちるは「どう処理すればよいか判らない」「処理出来たとしても保管場所がない」と云う大事故を起した原発のデブリを、圧倒的な力を持ち、行く先々を汚染しながら居場所を求めて彷徨い続ける、この怪獣に喩えた。


  • カイゾックル

90年代の戦隊ものの悪の組織「魔海密漁団」の怪人。

モノアイで、海賊を思わせる装甲を持つ。

セリフからして、同じ組織に属する怪人たちは基本的にモノアイらしい。


本作内における「特撮ヒーローものの定番」についての解釈編集

  • 何故、特撮ヒーローの姿やコスチュームは派手な色のものが多いのか?

純粋な戦闘であれば迷彩服のような「景色に埋没する」衣装が有利であろうが、「ヒーロー」「正義の味方」の真の任務は「悪を討つ事」ではなく、あくまでも「人命救助」。

なので、助けを求めている人々が『助けが来た』事を視認し易い派手な色の姿・コスチュームを使用している。


  • 何故、特撮ヒーローの武器は奇抜なものが多いのか?

武器である以上、敵に奪われたり、第三者の手に渡るリスクが存在する。

そのような場合に悪用される事を防ぐ為に「特殊な訓練を行なった者でないと使い込なせない」「特定の条件(例えば戦隊メンバーが全員揃っている)を満たさないと使えない」という仕様となっている。

劇中用語編集

  • 劇光服

特美研がサークルの独自性を模索する上で打ち出した概念。「怪人の父」と謳われた美術造形家・狭山章との対話を経た実相寺と切通により、狭山から聞かされた劇光仮面のエピソードをヒントに提案された。

簡単に言うと実用性(護身性)のあるヒーロースーツのこと。所謂「着ぐるみスーツ」であるが、特撮番組の演出を実際に再現するための機能が備わっている。すなわち、変身ヒーローの必殺技を実演出来るのである。当然、モノによっては危険性が高く、装着の際には複数人を交えた厳重な管理を要する場合もある。

素材にも特美で一般的に使われるラテックスウレタンだけでなく、レザー金属材料、繊維強化プラスチック等も使うことで防護性・耐久性をも高めているが、その分、通常の着ぐるみスーツと比較して重量は大きく上回る(真理りま曰く「とっても生意気(キュート)で物騒(シュート)なコス」)。

その仕様上、着装者のみでの着装・脱装は極めて困難または不可能な場合が多く、また着装・脱装に時間がかかる場合も有る(劇中では、劇光服の着装者以外にもコスプレをした人物が登場するが、この点が劇光服と他のコスプレとの違いの1つ)。

また、上記の重量などの制約から「逃げる事が最善手の状況に陥ったとしても、そもそも逃げる事に向いていない」「劇光服を着用した状態で全力で動ける時間は、普通のコスプレ衣装に比べて短かくなる」など実運用にも様々な制約が有る。

オーバーテクノロジーの産物などではなく、あくまでも現実の特撮技術に沿って生み出されるものであり、知識がある者なら手作りすることも可能。

乱暴な言い方をすれば気合いの入りまくったコスプレ衣装であり、それ以上でもそれ以下でも無い。使い所を間違えれば単なる凶器に成り下がる代物であり、コレを着れば”正義の味方”に成れるというような話では当然無い。この物語において劇光服とは特撮ヒーローの体現であると同時に、着る者に「正義の味方とは何であるのか?」という命題を突きつけてくる存在である。


  • 実装

単なるコスプレではなく、劇光服のような「本物」を身に付けたり、外側だけでなく心までもヒーローになりきる事。

おそらくは、工学などにおける「設計図から実物を作る」「仕様からプログラムを作る」の意味の「実装」ではなく、「装」に対する「装」の意味と主人公の名前「実相寺 二矢」のダブルミーニングと思われる。


  • 劇(はげ)しい光

身も心も「実装」したヒーローに同調した時に見える白い光。

この光を見たのは、作中で明示されている限りでは、今の所、中野タカフミと主人公の実相寺二矢のみ。

ただし、作中では、この「激しい光」を見る事が出来る事は必ずしも肯定的に描かれているとは限らず、「ロボットでありながら非人道的な命令を拒絶する」キボーガーに同調した中野と、復讐鬼であるミカドヴェヒターに同調してしまった実相寺では、ほぼ正反対の事態を引き起してしまっている。


  • くり二号受容体/人雷

第26話で藍羽ユヒトが変貌した「ある物」を、鹿角亜門はこう呼称したのだが……地中に埋めた爆薬が「地雷」、水中に沈めた爆薬が「水雷」ならば、「人雷」の意味は……?


  • ブドウ七号適合体/人龍

上記の人雷の中でも移動可能な者。

単行本4集までに登場した人龍と明言されている者や、人龍と思われる者は、明らかに一種の「怪人」と化しているが、人間に擬態する事は不可能ではない模様。(ただし「機電付きの精巧なマスクを付ける」などの現実でもギリギリ有り得そうな方法で常人に擬態している)

字面からして「伏龍」から「犬」の字を抜いたものにも見えるが……?


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山口貴由 スーパーヒーロー 特撮

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