解説
ヒーローの一区分。
広義的には人間及び元・人間の犯罪者退治を専門とするヒーローのこと。狭義的には警察のような公的な治安維持機関とは別に個人で自警活動を行い、その過程において法を犯すことも辞さない者を指す。
また、個人であるが故の活動範囲の限界から、大災害からの人命救助や侵略宇宙人による大規模な世界征服の阻止などといった一個人の力ではどうにもできない事象を扱わないところにも特色がある。
但し、細かな定義については曖昧な部分も多く、特にスーパーパワーや特殊能力の類の有無については意見が分かれるところ。
一言で「犯罪者を退治する」と言ってもその手段や程度はクライムファイターの数だけ存在し、せいぜい牽制や武装解除に留める者から、命は取らないまでも肉体的にも精神的にも徹底的にシバき倒してから当局に突き出す者、果ては犯罪者と見るや罪の大小に関係無く抹殺しようとする悪党専門の通り魔みたいな者まで様々。
「法で裁けぬ悪を裁く」と言えば聞こえは良いが、原則的には彼ら自身が法を無視して犯罪者へ勝手な私刑(リンチ)を加える犯罪者でもある(社会的には警察権や逮捕権を持たない民間人に過ぎず、私人逮捕や正当防衛、緊急避難を主張するにしても明らかにその範疇を大きく逸脱している)。
「犯罪者を倒すために自らも犯罪行為を犯す」という、この破綻したロジックゆえにクライムファイターの多く(というか殆ど)がダークヒーロー、またはアンチヒーローとしての性質を併せ持つのも特徴である。
作品によっては
- 犯罪者を追うクライムファイターと、クライムファイターを追う警察
- 「市民を助けても理解を得られず、世論の指弾を受けるクライムファイター
- クライムファイターを社会の必要悪として容認しようとする市民と、法でコントロールできない以上は危険なアウトローとして排斥しようとする市民の対立
- クライムファイターの正義と市民が求める正義との齟齬、及びそれに対するクライムファイターの苦悩
……といった構図にスポットが当てられているものも存在する。
犯罪者という身近な”悪”との戦い、社会におけるヒーローの立ち位置、犯罪者を生みだしてしまう社会の矛盾と法の不完全さ等々、人間社会の枠内に収まっているが故に、現実と地続きな社会問題を扱うことができるのもクライムファイター作品の特色の一つと言えるだろう。
「法で裁けぬ悪は確かにいる。しかし、だからといって法で保障されない暴力を振るう”正義”を容認してもいいのか?その”正義”が社会正義から逸脱しない保証は何処にあるのか?」というテーゼは、現代クライムファイターを扱う作品において重要な問いかけである。
合衆国憲法修正第2条に見られるように開拓時代から民間のヴィジランテ(自警団)活動が活発だった歴史的背景ゆえに「自分の身は自分で守る」という理念の強いお国柄なためか、アメコミではバットマンやパニッシャー、ロールシャッハ、デアデビル、グリーンアロー等、これに相当する世界的に有名な都市型ヒーロー(ご町内ヒーロー)が多く存在する。
一方、日本では広義的に見れば仮面ライダーや月光仮面、快傑ズバット、変態仮面といったクライムファイターに当てはまる有名なヒーローも一応存在するが、「公権力から離れた犯罪者退治専門のヒーロー」という純然たるクライムファイターは少ない(日本の場合、敵を明確に犯罪者としている作品ではヒーローたちは何らかの治安維持組織に属しているという設定にされることが多い。これもお国柄だろうか)。
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対極の存在:職業ヒーロー