曖昧
物語
河内国の長者に美しい娘が生まれたが、死期の迫った母親は長谷観音のお告げに従い、娘の頭に大きな鉢を被せ、直後に事切れた。ところがその後、娘の鉢は全く頭から取れなくなってしまった。
娘は父親が再婚した継母からいじめを受け、ついに家から追い出されてしまった。身の上と世を儚んで川に身投げしたが、鉢のせいで浮かび上がって溺れず、そこに通りかかった公家に助けられ、風呂炊きとして働くことになった。
公家の四男は彼女に惚れこみ結婚を申し出たが、母親から反対され、そこで四男は兄たちと「嫁比べ」をして家族を納得させようとした。嫁比べ前日の夜、娘の鉢は突然外れ、美しい容貌が露になった。
当日、美しい姿の娘に家族は驚き、鉢の中から出てきた宝物も差し出し、優れた歌詠みや豊かな学識も披露。一家は娘を四男の妻として正式に認め、二人は結ばれて長谷観音に感謝しながら幸せに暮らしたという。
ちなみに漢字だと「鉢被き」と書き、頭にかぶるという意味の古語「かづく(被く)」の変化したもので、「鉢かつぎ(担ぎ)」ではない(かづくという言葉が古語のせいかそういった誤記がよく見受けられる)。