概要
迷彩が施された衣服である。
作業用、戦闘用、狩猟用、ファッションなど、迷彩が施された服は全て当てはまるが、通常「迷彩服」と言った場合は、ファッション以外の目的を持つ服装、特に戦闘服を差す場合が多い。
なお、多くの迷彩服は2色以上の色を組み合わせた迷彩柄のものが多いが、迷彩とは姿や動きをごまかすための配色全てを差し、雪上用の白1色、夜間用の黒や紺1色、砂漠用のデザートイエロー1色など、単色迷彩という1色のものも含まれるため、迷彩イコール柄モノではない点に注意。
また、視覚的にはそこまで視認性が低下しないように見えても、暗視装置といった機会を通した場合や、距離が離れることで高い効果を発揮するものもある。
基本的に視認性を低下させる事が目的なので、場所や目的に応じて迷彩の配色パターンが異なる。
例えば山林などでは緑・茶・黒の迷彩柄、雪原や都市部では白・灰色・黒の配色になったりする。
不適切な配色の迷彩服を着用すると却って目立ってしまうが、イラクに派遣された自衛隊のように目立つことを意図して敢えて不適切な迷彩服を使用することもある。
特に偽装が重要となる鳥猟向けとしても普及しており、そのような狩猟向けのものが発展して軍用パターンの元となる場合もある。(なお、鳥以外の獣は多くが色弱で色の識別がしづらく、オレンジ色のハンターベストのような目立つ色であっても認識しづらいため色を合わせる必要性は薄く、誤射防止にオレンジを主に黒と灰色を組み合わせた狩猟獣から見ると迷彩効果が高く人の目から見ると非常に派手、というものもある)
軍用の戦闘服において、現在ではボディアーマーの普及により袖や襟部は従来品同様の素材、もしくは難燃性素材だが、胴体部分には通気性や速乾性の良い素材や保温性の高い素材を用いたコンバットシャツと呼ばれるものも登場している。
コンバットシャツは装備で隠れる部分である胴体部は単色のままで見える部分の迷彩パターンは施されていなかったが、装備の形状によっては多くが見えてしまうため、迷彩パターンを施したものも登場している。
代表的な迷彩(迷彩服)
一般的に、柄と色で判断される。
2005年ごろから米陸軍で配備が始まった全地域型迷彩。
グレーを基調としたカラーリングで、周囲に溶け込むというよりは人の視覚印象に残らない効果を追求した配色である。
アフガニスタンに派兵されている兵士を中心にマルチカムにおされて数が減ってきてはいるが、現役の迷彩であり、更新の予算の問題やストライカー旅団のように変更する予定のない部隊はまだ多くあり、州兵や警察も使っていることから全面廃止は全軍統一迷彩が採用される2018年以降となると思われる。
下記のマルチカムとの併用の為にコヨーテブラウン色で染め直されたものも混在している。
2000年代初頭に米陸軍のACU用迷彩服パターン選考に参加したものの、UCPに敗れ採用されずに主に民生用として販売されていた。
さまざまな地形に対応でき、グラデーションが配されている。
アフガニスタンに派兵している兵士向けに改良型が採用され、OCP(Operation Enduring Freedom Camouflage Pattern)と呼ばれるパターンとなっている。
イギリス陸軍(パターン違い)やグルジア(ジョージア)陸軍でも採用されている。
迷彩とは別に近赤外線の反射が植生と比べて不自然でないようにする対ナイトビジョン処理が後付でされているが、対IR処理という言葉からサーマルサイトによる熱探知を誤魔化す処理がされているという誤解が多い。
2013年、茶系の砂漠向けのMULTICAM ARID、白系の雪上向けのMULTICAM ALPINE、濃い緑系の緑地用MULTICAM TROPIC、黒色系の法執行機関向けのMULTICAM BLACKが登場した。
米国Crye Precision社製。
UCPのようにデジタル迷彩の一種だが、採用したのは米海兵隊。
カラーもUCPとは異なり、茶・黒・緑とウッドランド迷彩のようなカラーリングである
正規に納入されるものには良く見るとUSMCのロゴマークが迷彩模様にまぎれている。
- AOR1(DIG2)
デジタルパターンの砂漠用迷彩。
同じ砂漠向けデジタルパターンであるデザートMARPATとはパターンが違う。
ブロック1とブロック2があり、色合いなどが異なる
U.S.NAVY SEALs(アメリカ海軍特殊部隊)で運用されている。
米国London Bridge Trading社製で、現在は実物生地は輸出規制が行われている。
- AOR2
AOR1と同パターンを使用する緑地迷彩。
AOR1同様にU.S.NAVY SEALs(アメリカ海軍特殊部隊)で運用されている。
ブロック1とブロック2があり、色合いなどが異なる
イラクやアフガニスタンといった中東地域が注目されている情勢では、緑地向けの為にAOR1と比べマイナーだったがヨルムンガンドの海軍特殊戦コマンド シールズチーム9 アルファ小隊が使用したことで有名になった。
- A-TACS(Advanced TActical Concealment System)
コントラストの低いデジタルパターンの輪郭を崩したグラデーションのパターンとなっている。
元々はハンティング向けのパターンだったが、現場の兵士の意見を元に改良、特にアフガニスタン向けに開発され、岩山や都市部、乾燥地帯の緑地で高い効果を発揮する。
米国Digital Concealment Systems社が開発。
全地域型ではなく、砂漠や岩場向けのAU CAMO、草原や森林部向けのFG CAMO、都市部向けのLE CAMO、新型パターンの都市部向けGHOST CAMOなど、いくつかのカラーバリエーションがある。
- 迷彩Ⅱ型
旧迷彩に代わって1992年に陸上自衛隊に採用された迷彩で、海上自衛隊や航空自衛隊の一部部隊も使用している。
日本の森林山野にマッチする配色で旧迷彩よりも大幅に性能が向上している
- デジタルピクセルパターン
近年、自衛隊に登場した迷彩パターンである。
航空自衛隊の物はグレーを基調としたもので、高射部隊以外の隊員が着用している。
(高射部隊は、従来の茶色系迷彩である)
海上自衛隊は米海軍のNWUより明るい青色基調の物を着用している。
陸警隊などでは迷彩Ⅱ型を着用しているようだ。
- フレクター(Flecktarn)
第二次世界大戦後の新生ドイツ連邦軍が採用した迷彩で、迷彩Ⅱ型に似た迷彩だがドットの配置パターンやカラーリングが異なる
熱帯地域での使用を意識して作られたが、優れた汎用性で類似の迷彩パターンが各国軍に採用されている。
主に森林地帯での使用に適している。
ファッション用の迷彩ではこの迷彩やパターンを流用した別カラーの迷彩が使われることが多い。
- 3Cデザート
米軍が使用していた砂漠用迷彩で、その名のとおり3色で構成されている。
米軍では湾岸戦争やイラク戦争初期に見られたが、米軍等から装備の供与を受けている新生イラク軍でも使用されているのが見られる。
コーヒーステインという通称もある。
陸自ではこの迷彩を参考に砂漠用迷彩が開発された。
- 6Cデザート
米軍が使用していた砂漠用迷彩で、6色使用されている。
特徴的な黒い模様から付いた通称がチョコチップデザート。
湾岸戦争中に3Cデザートに変更されたが、実際には終戦時まで使用されていた。
現在でも中東の国の軍隊がこれと、これをアレンジしたデザインの迷彩を使用しており、地味に人気である。
空自ではこの迷彩を参考にした砂漠用迷彩が開発されていたが、実際に使われることは無かった。
- デザートナイトカモ
米軍が使用していた砂漠用の夜間戦闘用迷彩で、2色使用されている。
湾岸戦争中に使用されていたが、現在は暗視装置の能力向上に伴い現用としては廃止。
旧世代の暗視装置では迷彩効果を発揮していても、現行のものでは非常に目立ってしまい、降下を発揮しないが、その特徴的な格子状の模様からファッション要素的な人気が再燃している。
ベトナム戦争あたりから登場した迷彩。
原型はフランスのリザード迷彩を参考に生み出されたといわれる。
60年代に南ベトナム政府軍が採用、更にCIAやアメリカ軍(一般部隊ではなく、グリーンベレー・レンジャー・LRRPなど特殊な任務を遂行する部隊)が使用したといわれている。
ベトナム戦を模したサバイバルゲームなどで使用者を見かけることができるほか、ウッドランド等と異なりいかにもな雰囲気から愛用しているユーザーもいる。
色違いにデザートカラーも存在する。
米空軍がUCPのようにデジタルパターン化したタイガーストライプを採用しており、使われている服はABUと呼ばれる。
現在の基準でタイガーストライプ生地を製造しているタイガーストライプ社も登場している。
80年代以降ごろからロシア軍が使用している迷彩パターン。各国に似たような迷彩が存在する。
ロシア軍では一般部隊から特殊部隊まで幅広く使用している
- DPM(Disruptive Pattern Material)
WW2のデニソンスモックで使用された三色迷彩がルーツとなるイギリスの迷彩。
ローデシア迷彩を経由し、現在のパターンとなった。
トロピカル迷彩と呼ばれる事もある。
緑地向けと砂漠向けがある。(イギリス以外にもアレンジを作成して使用している国もある。)
砂漠向けは英軍からも装備の供与を受けている新生イラク軍でも使用されているのが見ることが出来る。
- リアルツリー
Real Tree社の民生の狩猟向けの迷彩。
植生や季節に応じた様々なパターンが用意されている。
植物の絵がプリントされており、森林での静止した状態でのハンティング向けに最適化されている。
- モッシーオーク
米国Mossy Oak社の民生の狩猟向けの迷彩。
植生や季節に応じた様々なパターンが用意されている。
ハンティング向けの為、BreakUpInfinityのブレイズオレンジのように人間の目からは派手で目立つようなパターンも用意されている。
- クリプテック
米国Kryptek社の開発したパターンで、名の通りに爬虫類を思わせる多角形を組み合わせたパターンを前面に用いており、背景にはぼかしたパターンを用いている事から3D迷彩とも呼ばれている。
戦場と狩猟とどちらでも使えるように作られている。