デジタル迷彩は迷彩のデザインの一つ。
被服から、車両・航空機などの兵器に至るまで様々なものに使われている。
被服用の細かなパターンのものは「ピクセルパターン」と呼ばれることも。
概要
2種類以上の色が用いられる迷彩柄で、パターンが四角形のドットで構成されているもの。特定の柄を表すものでもなく、「それっぽい柄の迷彩に付けられる愛称」である。
電子的なテクノロジーを連想させる柄であるためこの愛称が付いたが、実際にコンピューターを使ってデザインされているものも多いためあながち間違いでもない筈。
主な”デジタル迷彩”の被服
ソビエト連邦およびロシア連邦
四角形のドット柄を初めて本格的に導入したのはソビエト連邦とする説が有力である。
- Березка(Berezka)
旧ソビエト連邦で1950~60年代に開発された2色構成の迷彩。
同国開発のゲームに擬えた「テトリス迷彩」と呼ぶ人も居るとか居ないとか。
パターンが大柄で、地色がうぐいす色で白のパターンが描かれた「KLMK」や「KZM」、カーキ色の地色に黄色(褐色)のパターンが描かれた「KZS」や国境警備隊向け迷彩服など複数のバリエーションがある。
1960年代が舞台の『メタルギアソリッド3』にも登場するが、実物もこの頃には登場していた。
かなり根強い人気のパターンで、正規軍では2008年頃まで、民兵では現在でも使用されている。
- デジタルフローラ/EMR
それまでロシア軍が使用していた『フローラ迷彩』に代わる迷彩服として2008年頃に登場。
色調がフローラ迷彩に似ていたためかこの名前が付けられたものの、パターンは大きく変化している。
被服の他に装備品などにも使われている。
派生型に砂漠向けや北極向けなどが存在する様子。
アメリカ軍
アメリカ海兵隊を嚆矢にアメリカ4軍全てで独自の迷彩柄が開発された。
各々が工夫をこらした迷彩柄を開発したものの、効果が薄いヤツやら事故が起こると危ないヤツ(後述)が出来上がっているうえに
「なんでこんなにたくさん種類があるんだよ!!」
と、議会が激怒したため、徐々に『マルチカム』や『スコーピオンW2』… をやや捩った柄の『OCP』に置き換えられる予定とか。
海兵隊が開発した迷彩柄で、この種の迷彩柄は海兵隊がお初である。
パターンはやや細かく、砂漠向けと森林地帯など向けの2種類がある。
アメリカ陸軍が開発した灰色基調の迷彩柄。
MARPATや海軍とMWUと違って、地域別の区分は無く、積雪地を除く全地域でこの柄が使えるよう計画されていたが、コンクリート打ちっ放しの場所以外に大して迷彩効果が無い事が判明した。
- ABU
アメリカ空軍が開発した迷彩柄。色調はUCPに似ているものの、濃淡のパターンは『タイガーストライプ』に似ている。
- MWU
アメリカ海軍が開発した迷彩柄で、海洋をイメージした青色基調のType Ⅰや、陸上で実戦的な迷彩効果を発揮するType Ⅱ(砂漠向け)、Type Ⅲ(緑地向け)などが存在。
但し、"イメージカラー"を迷彩柄に反映させた青色基調の『Type Ⅰ』(通称:ブルーベリー)は、将兵らから
「艦や港で作業中に落水した場合に要救助者を見つけ辛くて危ない」
とえらく不評であるため製造が停止され、1年以上の切り着替え期間を経て2019年10月1日以降は使用禁止、以降はType Ⅲが主となった。
この他に、カナダでもアメリカ海兵隊の『MARPAT』の影響が見られる独自の迷彩柄『CADPAT』が開発・採用されている。
自衛隊
陸上自衛隊の場合、被服や装備品向けにこの種の迷彩柄は導入されていない様子。
- 航空自衛隊向け
灰色基調で、コンクリートやスレート葺きの建造物などが多い環境で効果を発揮する。
ある意味市街戦向けの「都市迷彩」に近い代物。
迷彩服(作業服)の他に、88式鉄帽用の「鉄帽覆い」、防弾チョッキ1型・2型用のカバーなど様々な物品が供給されている。
- 海上自衛隊向け
青色基調で、アメリカ海軍の『NWU TypeⅠ』に似た迷彩柄。
海上自衛隊独自の迷彩柄としてはこれがお初。
「海上自衛隊であることをアピールしやすく汚れが目立たない」服ではあるが、アメリカ海軍のNWU TypeⅠと同じく落水時に発見しづらい危険性を孕んでいる。
とは云えそこそこ普及しているらしい様子。
中国人民解放軍
2007年頃に通称『07式』と呼ばれるデジタル基調の迷彩服が制式化された。
その後は、各軍や武装警察などの準軍事組織などに導入され、緑地帯向けや、荒地(岩石砂漠など)向けの褐色基調のものなど、環境毎や改良などの結果バリエーションが豊富になっている。
大韓民国
特殊部隊や精鋭部隊向けにアメリカ海兵隊の『MARPAT』に似たパターンの迷彩服が、一般兵向けにはやや灰色基調の独特な迷彩服が採用された。
兵器
陸上自衛隊の場合、滝ヶ原駐屯地の部隊が偶に都市迷彩の試験を行っていた。
自衛隊以外でも、主に車両に都市迷彩として効果があるデジタル基調の迷彩を施すことがある。
しかしながら、効果が得られる場所が限定的であるため大々的普及には至っていない。
銃火器においてもマスキングやテンプレートを用いてデジタル迷彩風の塗装が行われる事もあるが、水圧転写やGunskinsといった迷彩パターンの印刷されたフィルムを貼る事でデジタル迷彩を施すことも行われる。