麗しの王子、クリストファー殿下の婚約者として過ごしてきた侯爵令嬢、エリアーナ・ベルンシュタイン。
本好きが高じて彼女につけられたあだ名は、本の虫ならぬ「虫かぶり姫」。
王子とは名ばかりの婚約関係だが、そんな彼女の耳にも最近とある噂が入ってくる。
権力闘争をおさめた王子は、ようやく意中の姫君を妃に迎えられるとか。
そして彼女はある日、王子が素の自分を噂のご令嬢に見せている現場を目撃する。
婚約者のお役目はこれで終わり。
なのに、なぜ胸が痛むのでしょう……。
概要
小説家になろうにて連載されているウェブ小説。著者は由唯氏。
既刊は2020年4月現在、書籍版が一迅社アイリスNEOより5巻、漫画版が月刊ゼロサムより2巻。
中世ヨーロッパ風の世界が舞台。「お洒落やお菓子よりも本を読むことが好き」という変わった侯爵令嬢である主人公が、王家を取り巻く陰謀や因縁、事件に立ち向かい、婚約者である王子と関係を深めていく波乱を描いた恋物語。基本的には主人公から見た視点で、独白のような形でストーリーが展開される。
あらすじ
主人公であるエリアーナ・ベルンシュタイン侯爵令嬢はクリストファー殿下の婚約者として側に仕えていた。
しかしクリストファーが成人を迎えてもエリアーナとの成婚の儀を挙げないため、政治的な理由で婚約者に据えただけの、お飾りであるのではないかという噂が流れる。
そしてその日、エリアーナはクリストファーがある子爵の令嬢と屈託のない笑顔で話しているのを目にして、婚約の破棄を悟るが————
キャラクター
- エリアーナ・ベルンシュタイン
本作の主人公。ベルンシュタイン侯爵家の令嬢。愛称は「エリィ」。
ベルンシュタイン家は代々、「三度の飯より本が好き」と評されるほど本好きの血筋として有名であり、エリアーナもドレスや宝石類よりも未知の本が大好き。
クリストファーと婚約を結んだのも「婚約者になれば王宮書庫の出入りは勿論、閲覧や貸出も自由」という言葉に飛びついたから、というほどの筋金入り。
そのため「虫かぶり姫」「図書館の亡霊」などのあだ名で呼ばれる。
当初は単なる政治的な理由からのお飾りの婚約者であり、婚約破棄されるまで本を読んでいれば良いと思っていたが、日々を過ごすにつれてクリストファーに思いを寄せるようになり、お飾りではなく本当の婚約者としての自覚と覚悟を持つようになる。
前述のとおり読書が好きであるが、その内容は常軌を逸している。
小説や伝記のみならず、医学書などの科学的な専門書、歴史や文化学などの学術書、植物図鑑や動物図鑑、果ては航海日誌や地方で配布されている回覧板など、活字が書かれているものならばあらゆるものを読破し、それらの内容を全て理解し解釈するだけの頭脳を持ち合わせている。
また読んだ書物の内容を記憶しており、複数の書物に記載された内容を照合することで、新しい発見や出来事の推理、統計を導き出すことも容易に行うことが出来る。
作中ではこの能力を活用し、王国の危機や事件を王子と共に乗り越えようと奮闘する。
- クリストファー・セルカーク・アッシェラルド
サウズリンド王国の王太子。エリアーナの婚約者。将来を嘱望される王子として知られている。愛称は「クリス」。
幼い頃からエリアーナを見初めており、彼女を婚約者にした。
非常に聡明かつ常に微笑を浮かべる爽やかな好青年に見えるが、腹の中では物事を強かに判断し、王家についてまわる陰謀などを的確に潰していく策士であり鬼謀の持ち主。
エリアーナのことを深く愛しており、彼女に婚約の破棄を告げられた際は、まるで時が止まったように動けなくなってしまったほど。
エリアーナとお互いを支え合い、お互いを信頼しながら、王家とその因縁に立ち向かっていく。
- アレクセイ・シュトラッサー
公爵家の嫡男で王子の従兄。クリストファー王子の側近の1人で、氷の貴公子と呼ばれる文官。
文官としては非常に優秀だが毒舌家。また「使えるものは使う」という信念の持ち主らしく、手が足りないときは王子の婚約者であるエリアーナにも容赦なく雑用を押し付けるほど。
- グレン・アイゼナッハ
近衛大将軍の父を持つ伯爵家の三男。クリストファー王子の側近の1人。近衛隊所属で王子の専属護衛。
よくクリストファーやアレクサイにいじられ、事あるごとに揶揄されているが、気の抜けない王室において数少ない気の許せる相手。
王子には忠誠を誓っており、「何があったとしても王子に剣を向けることは無い」と宣誓している。