概要
本作の主人公。
ムラクモ王国出身。王国軍第一軍所属。階級は従士。
名前もない孤児で、暗殺者アマネに後継者として拾われ十二年間<深森>で育つ。
王国軍に入隊後は世間の疎さから人間社会の柵に苦悩しつつも逸脱した戦闘技術と傍若無人な振舞いは絶対的な威風を兼ね備えていき、猛者や女性達をも魅了していく。
出会う人達に身分関係なく良くも悪くも大きな影響を与え、彼に惚れこんで献身を見せる者もいれば負の感情に囚われ不幸に身を落とす者もいる。
北地特有の髪色と大きな眼帯が特徴の青年。
武器は針と剣。<濁石>持ち。
名前の由来は兄弟子カタルが拾った小狼の名前。
経歴
幼少編
書籍版によると赤ん坊のときに空からムラクモ王国の民家に落下し、老婆に育てられる。
6、7歳で王都の貧困街で孤児として暮らしていたが、類稀な動体視力を買われてアマネの弟子となり、名を与えらる。師と深界に移住して古い戦闘技術と知恵を受け継ぐ。
従士編
アマネの弟子となって十二年後、外への憧憬から自立心が芽生え<深界>から離れ王都へ戻る。生活費を稼ぐべく従士試験に参加し、班員達を導き歴史的最短時間で突破した。
従士になる気はなかったものの公爵であり左硬軍「氷狼騎士団」団長アミュの勧誘を受けて軍に入隊する。しかし左軍の従士長という好待遇で迎えられるはずがグエンの一存でシワス砦に配属となる。慣れない身分階級に苦悩する中でアベンチュリン王国の策略に巻き込まれ、同僚を人質に取られる。アミュの協力で四石会議で救出の訴えに成功し、無事に解放させたが謹慎処分となり身柄を引き受けたアミュと共にアデュレリア領へ移動した。
賓客として屋敷で貴族作法や剣術を学び、遊学で訪れたサーサリア王女と対面。彼女の命で山へ向かった親衛隊に同行し、狂鬼アカバチの襲撃に遭う。サーサリアと二人で逃げ続け捜索隊が駆け付けるまで最後まで守り通した。この功績で従曹に出世し、アミュから家紋が刻まれた名剣を賜る。彼女の左軍の勧誘を断り、自らオウドへの配属を希望した。
従曹編
オウド軍内の荒れた環境と年下の上官という立場に悩むが、幸いにも再会した旧友の助力を得る。
サンゴ、シャノア国との対戦で初陣し、単身では優勢したが部下共々サンゴ国の捕虜となり名剣を奪われる。司令官ア・ザンに目をつけられるが剣聖バ・リョウキとの剣試合で自由の身となり、残った仲間を救うべく深界に潜り狂鬼マルムシで渦視城塞を襲わせた。途中でリョウキを下し、宝剣・岩縄を入手したが己の剣を取り戻す事は叶わぬまま制圧に成功する。
戦後は囚われていたガ・シガを傭兵として雇い、次の配属命令を受けて宝玉院の剣術指南役になる。紆余曲線あったものの生徒達の信頼を勝ち得、グエンから評価されるようになるがサーサリアの想い人である事が原因で殉職前提のターフェスタ公国への特派大使護衛の任を命じられる。
国同士の密約で嵌められたジェダを救うべく監察官フクロウと協力し真犯人を捜索。変装していた准将プラチナと一時行動を共にして別れ、真犯人に到達し事の真相を知る。
警備を分散するべく協力者ヴィジャを脅迫して暴動を扇動。プラチナで沈静化させ、その間に救出したジェダや仲間達と無事に帰還した。これにより従士長に出世し、ジェダの策で武勇伝が国中に広まり世に<濁石>の英雄と名を馳せる。
従士長編
ユウギリ戦争が開戦し、自分を慕い集まった一般人や傭兵達で集結した独立部隊サーペンティア隊の実質的な隊長となる。ムツキ要塞の運営も担当してジェダを副官に指揮官の才を発揮する。途中でジェダに協力してサーペンティア家に囚われるジュナを救出し、要塞に匿った。
初戦ではターフェスタ軍の司令官ゴッシェの討伐、リシア聖輝士団、晶士隊に大打撃を与えるが予期していた狂鬼タイザの群れに襲撃される。単身で敵味方問わず救出に向かい、群れを殲滅した。多大な功績は有耶無耶となったがリシア教からは聖白功労勲章を授与される。
体調不良に苛まれる中でサーサリアからの招集を受け、ユウギリ滞在中に第二戦が開始。身を案じた彼女に監禁されるが仲間達の手で脱走に成功する。要塞に帰還後、副司令官アスオンの命令で非戦闘員を含んだ私兵の独立部隊が戦地で大半が死亡させられた事を知り、激情に駆られ上官殺人未遂を犯し牢へ収監される。クロムの提案に乗り、捕虜や仲間達と謀反を起こして復讐を成し遂げた後は公国に亡命。領主ドストフから仮の准砂将の地位を賜る。
人物
性格
冷静沈着。向上心も強く好奇心旺盛。甘い物が好き。片目に酷い火傷跡があり、人の視線に敏感。
序盤では俗世から離れた生活を送っていたせいか人間社会に馴染めずにいたものの、徐々に慣れていった。
孤児の出生故か家族という繋がりに固執しており、所属する部隊に愛情を注いでいる。
誠実で無欲的でいたが、部下達の死を経てからは出世を求める野心家となった。
恋愛
女性に非常にモテており、アイセやシトリ、サーサリアの好意には自覚はある。
アイセやシトリには独りの人間としても好意的に想っているが、サーサリアの危うげな想いには引き気味。女性陣にはジェダが率先して牽制しており、自身も立場を理由に向き合っていない。
能力
類稀な動体視力を持つ。従曹編では時が停滞して見え、従士長編では晶気の光を可視化できる程に変化している。
人体の破壊技術を取り込んだ近接格闘術を扱う。それは滅んだ<深森>の集落から代々受け継がれてきた秘匿の古来武術である。
戦闘技能も含め豊かな才能を持ち合わせており、不慣れな剣術や乗馬、礼儀作法や勉学など瞬く間に吸収している。ただし料理だけは論外。
体力も化け物並みで、六日間完徹したり三日三晩移動し続けも疲れた程度である。
本人の活躍で老若男女に問わず好かれる才は格闘術と並ぶ武器。何故か一部の<彩石>持ちから体臭を執心され、その者達は無意識下にシュオウに強い献身を見せる。
容姿
銀髪隻眼。ムラクモ王国では灰髪と見られているが、北方諸国では貴族でもごく一部しか持たない混じりけの無い銀髪と認識されている。
火傷を隠した大きな眼帯が特徴。目の色は黒で、鋭い目つきをしている。顔立ちは東地の土着民寄り。
年齢は自称20歳。体格は長身痩躯。身長176㎝。
輝石
輝石は<濁石>。
割れても復活するなど謎が多く、第一幕の終わりでは晶気の光を可視化できるようになる。
謎(ネタバレ注意)
シュオウの存在がこの物語の最大の謎である。
・空から降ってきた赤子。
・<輝石>が割れても生きている。
・<紅界>の狂鬼が献身する存在。
上記の謎に加え、実は第五話で火傷をしない体質である事も判明している。
シュオウの体に熱いスープが降りかかったとき、彼は何故か一切火傷を負わなかったのである。当時の読者からは気にもされていなかったのだが、五話から十年後に更新された幕間編にて、実はとんでもない伏線が隠されていたのではないかと話題になっている。
グエンの語りで、かつて東地を支配していたアマテア家は炎の晶気を操っていたという。
シュオウの火傷耐性に加えて名前がシュオウ→朱王→朱雀=炎鳥に連なる読み方にもなる為、彼が炎鳥を家紋としていたアマテア家の末裔ではないかという考察がファンの間で一気に浮上した。
しかもアマテア国王への恋慕の末に国ごと滅ぼした当時のムラクモ家の姫の病んだ姿は完全にサーサリアと重なり、彼女の行動に四苦八苦するシュオウと関係が酷似している。
ただしシュオウの名前を名付けたのはアマネであって、彼の右目には火傷の痕があるのであくまで考察の一つに過ぎず真実は謎である。