概要
本機以外にも無印エクバにはバグ(劇場版ガンダムバグルオー、障害物を貫通するケルメインなど)が多く、「有料ロケテ」と揶揄されるほどであった。
そんな中最高コストである3000、原作通りの格闘特化機として参戦したマスターガンダム。その性能は、バグの蔓延る環境下においてなお「バランスブレイカー」としてゲーム史に名を刻むものであった。
本機のエクバシリーズにおける略称「升(マス)」は、単純に「マス」ターガンダムの略であると同時に「チート」の3文字を縮めて合体させたのが由来となっている。
広く普及している呼び方だが、人によっては蔑称と感じてしまうかもしれない。
性能
現在稼働中のXBOOST(以下「クロブ」)におけるマスターガンダムは、格闘を当てた際のダメージ、ダウンさせた相手を起き攻めでハメ殺す性能は高いが、射撃武装が貧弱で、格闘の当たる距離まで詰めるのが難しい……という純格闘機に相応しい、かなり職人気質な機体である。
しかし、無印エクバ当時のマスターガンダムは、全盛期以上の格闘性能に加えて射撃武装もかなり凶悪な性能を誇っていた。
石破天驚拳
クロブまで続いている伝統の奥義。
格闘チャージでLv3まで溜めることが可能なのもそのままだが、現在の天驚拳はLv3の弾のサイズこそ大きいがチャージまで9秒を要し、弾速も遅く誘導も殆どしない。
それに対し解禁当時の格闘チャージは、Lv3まで僅か6秒。
おまけに弾のサイズが現在より大きく、誘導も異常に強かった(直角に曲がるレベル)ため、中距離以内で出された場合、ステップで誘導を切っても天驚拳の親指や小指に轢かれてしまうことが多かった。
無印エクバの仕様としてステップ後の隙が長かった(ステBDが不可能だった)ことも手伝い、最早シールドするしか確実な防御方法はない有様。
なおダメージも210と当てやすさの割にかなり高く、クロブと同様敵の射撃を一方的にかき消す効果も持っている。冗談抜きでこれを連打しているだけで大半の相手を粉砕することが出来た。
その強さは「このゲームで1番強いコンビって何ですか?」という質問に対し、
「前衛でLv3天驚拳を撃つマスターガンダムを、後衛のマスターガンダムがLv3天驚拳で援護するのが最強だよ」という回答が返ってきて、誰もそれを否定しないほど。
ダークネスフィンガー
天驚拳と共に暴れ回った。
レバー前入れ特殊格闘で出せる突進。出初めにスーパーアーマーが存在する。
解禁当時は異常なまでに低燃費、というか初動で少し減るだけで、突進中はブースト消費ゼロ。ステージの端から端をダークネスフィンガー連打で往復可能といえばどれほど凄まじいか分かるだろうか。
この圧倒的な移動力から、Lv3天驚拳で相手にステップかシールドを強要しつつ、ダークネスフィンガーで接近するのがお手軽強ムーブ……というか脳死虐殺ムーブとして大流行した。
相手からすれば「天驚拳をそのまま喰らうか、シールドの隙にマスターの格闘を喰らうか」という二択に等しく、最早対戦ゲーとして成立していない。
十二王方牌大車併(じゅうにおうほうぱいだいしゃへい)
当時は特殊射撃。通称「ハエ」。
ミニマムマスターガンダムを複数呼び出し、相手に取り付かせる。このハエが相手に取り付いた状態で再度特殊射撃を入力することで「帰山笑紅塵」が発動し、敵をスタンさせることが可能。
本来は敵を動かすために使われる技……のはずだったが、当時のハエはこの当て性能などおまけと言えるほど、凶悪な仕様を有していた。
ハエコン
既存の仕様に無理やり例えるなら、変則的な攻め継のようなもの。無印エクバの闇。
まず適当に格闘コンボを入れ、相手のダウン(無敵状態で地面に寝た状態)する前にハエを投げつける。
そして敵が起き上がり、無敵時間が切れた頃に特殊射撃を再入力。するとどうなるか。
そう、相手が何をしようと問答無用でスタンさせられるのである。
これはハエの取り付きから消滅までの時間が、相手が起き上がってからの無敵時間より長かったために起きた現象。ダウン中にハエが付いたらもう終わりなのだ。
マスターは純格闘機という位置づけであり、その格闘火力はシリーズ通して高めに設定されている。半数程度の機体は、マスターに2回格闘を当てられたら撃墜されてしまうと言えば火力の高さもイメージしやすいだろうか。
そしてこのハエコンを使われると、味方に助けてもらえない限り2回目の格闘コンボが確定する。機体によっては事実上の即死コンボと言っても過言ではない。
なお前述したマスター2機のコンビと対面した場合、助けようとした味方も後ろからもう1人のマスターにハエコンを喰らい、2人仲良く蒸発という見るに堪えない光景が繰り広げられることも。
ハエコンから逃れるには、何とか味方にマスターガンダムをダウンさせてもらうか、覚醒ゲージが満タンの時のみできる「抜け覚醒」を選ぶしかない。
しかし抜け覚醒はエクバシリーズを通して最悪クラスにディスアドな行為であり、ハエコンから逃れられたとしてもマスター側の優位は揺るがない。
一応このハエ、リロード時間自体は長いのだが……何と覚醒でリロードされる。
抜け覚醒をしても、覚醒したマスターに結局追いつかれてハエコンおかわり、なんてことも日常茶飯事。
格闘
前格闘のスライディングキックは、非常に長い突進距離と優秀な射撃すり抜け効果を持っていたことから大きな脅威となった。
射撃をすり抜けてくるなら格闘で、と考えた勇敢なプレイヤーもキックの持つ強判定の前に文字通り蹴散らされていった。
すり抜け方は本当に胡散臭く、Gザクの太いメインも、ZZガンダムのゲロビすら潜り抜けて蹴り飛ばすケースがあったため、当時の環境ではほぼ迎撃不能。
インフレの進んだクロブでもそうそう見ない当たり方をする理不尽の権化であった。
前格に隠れがちだが、3000コストの純格闘機だけあって他の格闘も強力。
特に横格闘は発生、判定、回り込み、伸び、コンボの柔軟性全てを兼ね備えた「強い横格」の元祖とも呼べる武装である。
鞭
極めつけ。
サブ射撃でマスタークロスを伸ばして攻撃を繰り出す。レバー入れで挙動が変わるがどちらも理不尽なことに変わりはない。
N鞭
レバー入力なしで、敵の方向に真っすぐマスタークロスを伸ばす。
発生が早く射程が長いうえ、横BDで軸をずらした敵すら捕らえられる銃口補正と亜空間判定を持つ。対戦ゲーでこんな言葉を使いたくはないが「近距離でボタンを押せば当たる」。そういう武装である。
横鞭
レバーを横に倒すと、マスタークロスを振り回す。
振る挙動が視認できないほど発生は神速であり、「マスターに格闘を差し込んだと思ったら、地面に寝転がっていた」と証言するポルナレフを数多く生み出したトラウマ製造機。
とりあえず振り回しておくだけで相手は近づけない、最強格の拒否武装として名を馳せた。
ゲームに与えた影響
無印エクバには3000コストの覚醒ゲージが他コストより溜まりやすいという仕様があり、3000コストが先落ちして覚醒を3回使う戦法が非常に強力であった。
結果として対戦環境は「3000コストが低コストを先落ちさせ、敵3000コストのコストオーバーを狙う」という戦法一色に染まってしまった。
マスターの攻撃性能はこの風潮と非常にマッチしており、使用率も勝率もすさまじい数値を記録する。これは低コストの選び方にも影響を与え、ランクマッチでは「自衛力」のみが重要視されるようになっていく。
1秒でも長く高コストの攻めから生き残れること
低コストの評価基準はこれだけであり、大半の機体が「マスターを捌けないから」という理由で弱機体の烙印を押されていった。
逆に「自衛が強い」の1点のみで立場を築いていたドラゴンガンダム(格闘機なのに攻め性能はまるで貧弱)のような機体も存在し、これはマスターを筆頭に上位3000コストが環境を大きく歪めていたことの証左であろう。
余談
全盛期無印マスターについて色々書いたが、この記事に書かれていることは全て仕様である。
射程距離が万能機並に長いのも、下格に謎のシールド判定が付いているのも、決してバグではない。意図して実装されたものなのである。
先述の通り無印エクバはバグの多いゲームであり、そのバグを利用した強機体、強行動も多数あった。もちろんマスターガンダム関連の重大なバグも存在した。したのだが、バグの存在を考慮してもしなくても「無印エクバ最強」の座に本機が君臨していたのは当時の勝率(全盛期には75%)や下方修正の数(下方4回は史上最多タイ。もう下方されなかった武装の方が少ない)が物語っている。
無印エクバはとうに稼働を終了しているため、全盛期無印マスターが再び世に出ることは恐らくない。
しかしエクバシリーズには度々環境を壊すほどに凶悪な性能を持った機体が出現する。いつか、この全盛期無印マスターをも超えるぶっ壊れ機体が出てきてしまうのだろうか。
関連タグ
EXVS:主戦場。散々に荒らしまくっていた。