ロメリア戦記
ろめりあせんき
「ロメ、いや、ロメリア伯爵令嬢。君とはもうやっていけない。君との婚約を破棄する。国に戻り次第別れよう」
アンリ王子にそう切り出されたのは、念願の魔王ゼルギスを打倒し、喜びの声も収まらぬ時であった。
しかし王子たちは知らない。私には『恩寵』という奇跡の力があることを
概要
ウェブ小説投稿サイト「小説家になろう」にて、有山リョウ氏により投稿されている作品。
正式なタイトルは「ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~」
ガガガブックスより書籍化、ブレイドコミックスよりコミカライズされている。
イラスト及び漫画は上戸亮氏、キャラクター原案はコダマ氏が担当。
2019年6月に「ロメリア戦記 ~魔王を倒したら婚約破棄された~」というタイトルで連載されていたが、一部の設定や内容を引き継ぎ2019年8月に書き直されている。
魔王討伐に向かった勇者のパーティの一員として活動していた主人公が、彼らに追放された後の活躍を描いているが、魔王討伐後に予想される混乱や魔王軍残党との戦いに備え戦っていく架空戦記である。
最大の特徴として、主人公は非戦闘員であり全く戦うことができないため、兵士を育成し養うための環境や状況を整えることや兵站や補給といった戦争の裏方の要素に着目しており、それらを確保するための政治や交渉事などの駆け引きといった権謀術数を主眼においた作品となっている。
登場人物
- ロメリア・フォン・グラハム
本作の主人公。グラハム伯爵令嬢。愛称はロメ。
アンリ王子と婚約しており彼の魔王討伐の旅に同行していたが、婚約を破棄されてしまう。
本人は戦うことができない非戦闘員で、道中では金銭の管理や交渉などを引き受け、貴族としての知識を使ってサポートしていたが、実際に命を懸けて戦っている仲間からは不満に思われ軋轢を生んでおり、本人も圧倒的な力を持つアンリ王子との間に壁を感じ、恋は冷めてしまっていた。
弱い人間の立場から魔王軍配下らの精強さや残忍さを目の当たりにしていたため、魔王の死後もその残党が被害を齎すことを予想し、軍隊を整備することを決意する。
魔王軍による凄惨な現場を見てきた旅の過程で肝が据わり、可憐な容姿とは裏腹に腹に一物を抱え、策をめぐらせ、大を活かすために小を切り捨て裏切る胆力を備えている。
『恩寵』という奇跡の持ち主であり、周囲の仲間に幸運と好調をもたらし、逆に敵対する者には不運と不調をもたらす能力を持っているが、自分自身には何ら効果を及ぼさない。
勇者パーティ
- アンリ王子
ライオネル王国の王子。ロメリアと婚約していた。
3年前に王国を飛び出し魔王討伐の旅を始めた。
困った人を見捨てられず助けようとする優しさと、魔王やその配下らと戦えるだけの武功を備え、謀略を好まない気質の豪傑なのだが、一方で王家や貴族としての常識に乏しく、大事の前の小事を切り捨てることができない直情的な性格であり、ロメリアとの婚約破棄についても勢いでやってしまったような様子を見せる。
- 聖女エリザベート
救世教会より認められた聖女。
アンリ王子に惹かれており、ロメリアとの婚約を破棄させた。
- 賢者エカテリーナ
女性。高い魔力を持ち、強力な魔法を駆使する。
その威力は凄まじく、十人の兵士を一度に吹き飛ばすことができるほど。
- 呂姫
東方からやってきた女剣豪。魔王軍の配下ですら鎧袖一触で斬り捨てられる実力者。
反面、どうにも物事を暴力で片づける癖がある。
カルルス砦
ロメリアが軍隊を組織するため訪れた、ライオネル王国カシュー地方の要塞。
- セルベク
領地代官にしてカルルス砦の最高指揮官。
汚職に手を染めており、横流しした武器が盗賊の手に渡り領地に実害も発生させている愚物。
しかし地位の確保や保身には余念のない強かかつ剛胆な性格の持ち主。
- アル
新兵の一人。貴族の令嬢であるロメリアにも軽率な態度を取り、強気の姿勢を崩さないお調子者。
戦いになった際には気勢をあげ一番に敵に向かっていくなど勇敢な一面もある。
- レイ
新兵の一人。そばかすの浮いた顔に幼さの残る青年。
教会の孤児院出身であり、読み書きや簡単な計算ができ、ロメリアが有事の際には臨時で指揮を行うなど頭の回転が速い。
気弱で臆病な一方で人一倍功名心が強く、目に見えた武勲を上げられないことに焦っている。
用語・設定など
- ライオネル王国
アクシス大陸に存在する列強の一つ。ロメリアやアンリ王子、聖女エリザベートの出身国。
魔王ゼルギスに侵攻されていた。
- 魔大陸ゴルディア
魔王ゼルギスの治める大陸。
魔族が支配する土地であり、人類は奴隷として酷使されている。
アクシス大陸と魔大陸ゴルディアの間には広大な海が広がっており、魔導船などを使うしか行き来する方法がない。
- 魔王軍
魔王ゼルギスの率いる魔族の軍隊。精強かつ残忍であり、数々の村や街が焦土にされてきた。
その強さは筆舌に尽くしがたいほどで並の兵士では歯が立たないうえ、策略や戦略にも通じているため、対抗するにはそれ以上の数をそろえて綿密な作戦をたてるか、勇者らのような超人をぶつけるしかない。
- 魔物
何らかの理由により、凶暴化し人を襲うようになった野生動物の変異個体。
魔王ゼルギスは自在に動物を魔物に変える術を持っていたとされている。
個としての強さはさほどでもないが、その繁殖力や群れを成しての行動は侮りがたく、各地で大きな被害を与えている。