脳外科医竹田くん
のうげかいたけだくん
この概要は竹田くんと古荒先生の出会いから始まる。
はてなブログで2023年1月から連載している4コマ漫画。
赤池市民病院にやってきた脳外科医・竹田くんとその指導医となった脳外科長・古荒医師を中心に院内での出来事を描いた作品なのだが、その実態は医療事故を中心に医療の現場の闇を描くホラー漫画。
劇中に登場する赤池市民病院の関係者達は、
- 腕が未熟なのにも関わらず手術をしたがり、次々に重い後遺症や死に繋がるレベルの重大な医療ミスを連発する竹田くん
- 竹田くんの技術の拙さを不安視しながらも、彼に甘い顔をしてしまい執刀を止めようとしない古荒医師
- 定年での逃げ切りを図り、竹田くんの起こした医療ミスを隠蔽することばかりに腐心する院長
- 医療事故の検証を途中で放棄したり、医療ミスの被害者家族をクレーマー呼ばわりしたりする医療安全推進室の面々
- 医療ミスで重い後遺症を負った患者をリハビリ施設にたらい回しにしたり、いじめの対象にして看護のストレスをぶつけたりする看護師達
…等々、一部の例外を除き揃いも揃って患者を軽視する無責任で手前勝手な人物ばかり。
そんな環境の中悲惨な医療ミスとそれに対する杜撰な対応が繰り返された結果、事態は被害者達を置き去りにしたまま竹田くんによる虚偽のパワハラ裁判、そして大規模な報道へと発展していく。
劇中で多くの患者が後遺症で苦しんだり亡くなったりする中、周りの人間は竹田くんをまともにコントロールするどころか事態の隠蔽に終始するなど胸糞の悪い描写が多く、読後感は非常に悪い。
しかし4コマ漫画という形式のためテンポよく見れてしまうため一度読み始めたら良くも悪くも見るのをやめられない。グロテスクな部分はデフォルメ化しているにもかかわらず痛々しく見える。
そのためこの作品を見る場合覚悟を決めて読むことをお勧めする。
あらすじは僕がしっかりと教えよう・・(このリンクのあらすじを参照)
病床数360床の赤池市民病院に竹田くんがやってきた。履歴書には、前の職場での執刀経験が乏しく執刀経験を積みたいことが意欲的に書かれていた。
古荒科長はやる気のある彼を歓迎していたが医局に属していない竹田くんを不安視する富士院長。手術をさせなかった竹田くんの元上司の浅尾先生は「困った奴」と称していた。
それでも人手不足は院長と科長の共通の悩みの種。古荒医師の指導能力に期待をかけ、富士院長は竹田くんを採用することにした。
これが地獄の始まりとも知らずに……。
困った登場人物ですが面倒見てやってください。
赤池市民病院関係者
竹田くん
京都からやってきたフリーの脳外科医。以前の職場では上司に恵まれず執刀の機会を与えられなかったと語り、執刀経験を積むことへの意欲を強く見せる。
しかしその実態は脳外科医の基本的な知識・技能すら十分に身につけていないのにやたら手術をしたがる上、他人を踏み台としか考えていない自己顕示欲と権力欲の塊というとんでもない問題児。
執刀を任せてもらえなかったのは単純にその拙い技術と性格が原因であり、赤池市民病院では野放しにされた結果重大な医療過誤を頻発させてしまう。
手術そのものには意欲的な一方、本来一番大事なはずの患者の生命や健康を軽視している節があり、必要のない患者にもあの手この手で手術を勧める。また、自身の医療過誤の被害者やその家族に対しても正確な事情を話さず「認知症のせい」「避けられない合併症」などとごまかして責任逃れをするなど不誠実な対応を取る。
仕事机を散らかしたり、ものを頻繁になくしたり、遅刻・早退・無断欠勤を繰り返したりと普段の勤務態度も悪い。
これらの所業から次第に院内スタッフや患者からの評判を落とし、ついには執刀禁止を言い渡されるに至るものの、反省するどころか不貞腐れてさらに勤務態度を悪化させた上、恩があるはずの古荒に医療事故の責任を押し付ける、虚偽で古荒を暴力パワハラ上司に仕立て上げて彼と病院を逆に訴えようとする等の暴挙を繰り返していく。
古荒
赤池市民病院の脳神経外科科長で竹田くんを引き取った彼の指導医にして恩人。
確かな手術の腕と人望があり、やる気ある竹田くんを見守る優しい上司なのだが竹田くんが失敗しまくるせいで彼の医療ミスのケツを拭かされる苦労人。
性善説に基づいた独自理念をもっており、採用した以上は彼を育てなければならないという使命感ゆえに竹田くんを見限るに見限れず、彼から冤罪のパワハラ裁判をふっかけられるという憂き目にあってもなお師弟関係を崩そうとしなかった。
しかし科長にして指導医という立場でありながら、竹田くんが何度医療ミスを繰り返そうと執刀を任せ続け、さらにはわざわざ自分の担当患者を竹田くんに回して執刀させたこともあるなど、彼に甘い顔をしすぎたせいで被害を拡大させてしまった加害者の1人という面もある。
そんな彼の姿勢は劇中で「おもちゃを壊してしまう子供に懲りずに何度でもおもちゃを与える親」に例えられている。
竹田くんの手術禁止処分ののち、恩師の薬師丸先生から「なぜ(竹田を)止めないんだ!お前も同罪だぞ!」と厳しい叱責を受けたことで漸く我に返ったようで、医療過誤被害者へ誠実な対応を行うようになり被害者家族からは信頼を寄せられているらしい。竹田くんの指導医としての責任の重さを考えれば当然の贖罪と言えなくもないが、現状赤池市民病院サイドの人間でまともに事件と向き合おうとする人物が彼以外にほぼいないのがこの漫画の提起する問題の根深さを示している。
富士院長
赤池市民病院の院長。古荒医師の上司。
止血ができず使い物にならないという竹田くんの採用に難色を示したり、彼の執刀を院長命令で禁じたりと、竹田くん個人への対応は古荒よりもまとも。
しかし医療安全推進室の報告を受けるまで竹田くんの一連の事故について把握していなかったなど無責任な面も。
また、竹田くんへの厳しい対応に関しても患者の安全を重視してのことではなく、定年が近いために極力自分が責任を引っ被らないようにしているだけで、彼の医療事故を表沙汰にしないよう隠蔽を行なっている。
竹田くんによる医療事故報告書を虚偽と把握しながら、病院の正式な報告書として認めてしまった張本人でもある。
花房看護部長
赤池市民病院の看護部長。
疲弊する看護師達を気遣う身内には優しい人物だが、竹田くんの手術のミスで後遺症の残った患者をリハビリ施設に回し、内心では「世話が面倒だから早く放り出したい」と毒づくなど例に漏れず患者を軽視している。
森中・杉下
赤池市民病院の医療安全推進室の職員達。どちらも元看護師。
老けた顔をしている方が森中で小太りの方が杉下。
竹田くんの医療ミスの被害者達をクレーマー扱いしたり、竹田くんの書いた医療事故報告書を「どうせ私たちしか見ないし」と虚偽と知っていて黙認したり、竹田くんの手術の杜撰さを酷評する調査書の内容を見て思考停止した挙句にその後の検証を放棄したりと職務をほぼ投げ出しており、院長共々竹田くんが公に咎められない原因を作り出してしまっている。
院沢
赤池市民病院の看護師。
抗議にやってきた患者の家族からの質問をはぐらかしてばかりの竹田くんに呆れて彼を叱責したところ、逆恨みを受け古荒共々不破弁護士の圧力を受けた病院側に解雇されそうになってしまう。
さほど出番は多くないのだが、院内には滅多にいない、患者に誠実に向き合う姿勢を見せた人物であるため印象に残りやすい。
その他
不破弁護士
竹田くんの依頼を受けた人権派弁護士。ナレーションには「弁護士というより闘士に近い」と称される、良くも悪くも正義感と使命感の強い人物で、竹田くんの言い分を信じ込み「執刀禁止処分は古荒によるパワハラ」と主張して病院に執刀の解禁を要求した。
一応憎まれ役のポジションではあるが、上記の医療事故報告書の一件や事故の検証を放棄していたことなど、病院側の常識的にありえない対応のせいで竹田くんの主張を信じても仕方ない状況が出来上がっていたのも確かで、依頼人の言うことを鵜呑みにする考え足らずの弁護士とも断じ難い部分がある。
何より保身しか頭になく職業意識も低い医療関係者ばかりが登場する中、曲がりなりにも正義感から動いていて職務もきっちり果たしているため、劇中の人物の中では相対的にかなりまともな部類に入る。
浅尾先生
京都の病院で竹田くんの上司を務めていた医師。頸椎含む脊髄治療のスペシャリスト。
彼を「困った奴」と評し、決して執刀を許さず助手に置いていたまともな人物。
現時点海崎教授のように巻き込まれた例はいまだにない。
海崎教授
竹田くんが京都以前、滋賀の医局に所属していた頃の指導医。
彼を「史上最低の医師」「彼と仕事するのはもう2度とご免」と評し、医局から追放した。
しかし不幸なことに竹田くんを助手にした手術の件で後に裁判に巻き込まれてしまった模様。
薬師丸先生
赤池市民病院の黒石副院長の知人。偶然にも、古荒医師の大学院時代の指導医でもあった。
脊髄を専門にしており、富士院長から検証に忖度を加えてくれることを期待されて竹田くんのかかわった医療ミスの検証を依頼される。
…が、「患者を自分の家族と思って治療する」ことを信条とする彼は手術内容を酷評。完膚なきまでにこき下ろし、市民病院サイドの逃げ道を絶った。
その後、師匠の立場でもって古荒医師を叱責し、彼を正しい医の道に戻すことに成功する。
余談が来るなら来い迎え撃ってやる!
- かつてはpixivでも部ごとにまとめられた『竹田くん』を読むことができたが、現在はブログでの連載一本に絞られている。4コマ漫画という形式上、登場人物の心理描写など細部がデフォルメされやすく、一話ごとに注釈を書き入れる必要があったため。
- 詳しい言及はここでは避けるが実際にあった医療事故を元にしている。モデルになった病院が現時点で存在を認めていない医療ミスについても描かれているが、関係者の証言を元に描いたとしか思えないほど生々しいため読者を恐怖させる。
- 2023年3月から5月末まで公式に無料に配信された医療漫画K2と比較されることがある。K2は医療で命の賛歌を歌うため本作品とは全くの真逆であるが、K2の無料配信の期限終了間近にタイミング悪く『竹田くん』が流行ったことにより、「K2を読んでお医者さんへの感謝で心が暖まった矢先に竹田くんで冷や水をぶっかけられ、精神が乱れる。」というサウナ後の水風呂のような現象を引き起こしている。温度差次第では氷風呂に浸かってしまいヒートショックを受けることも。
- 公開後も作者の手により頻繁に書き直されている。書き直された箇所と修正理由はすべてブログで公開されており、作品を理解する上で重要な情報であるため一読をお勧めする。作者曰く、連続医療過誤事件の全容をテンポよく認知してもらうために(特に第一部の)初期のバージョンでは『連ちゃんパパ』を意識したブラックジョーク風の演出になっていたのだが、マンガが想定以上にバズったため、今後多くの人の目に触れることを意識したうえで、『竹田くん』がある種の教訓として読まれるようにシリアスな演出に修正したとのこと。