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タロム航空371便墜落事故

るーまにあじょうくうのしにがみ

タロム航空371便墜落事故とは、1995年3月にルーマニアで起きた墜落事故である。その事故原因の意外性で視聴者を呆然とさせた。
目次 [非表示]

事故概要


発生日時1995年3月31日 9時08分
発生場所ルーマニア オトペニ国際空港近郊
機材 エアバスA310-324
乗員11名
乗客49名
犠牲者60名(すなわち全滅)

寒空の中の惨劇

がちらつくルーマニアのオトぺ二空港を9時07分に離陸しブリュッセル空港に向かったた371便は、左に向け旋回したところで何故か左にコースをそれ傾き急降下し始める。そしてそのまま地上に激突。離陸してからわずか2分足らずの出来事であった。


墜落の衝撃で粉々になった機体はそのまま火災を起こし、搭乗者は全員犠牲となってしまった。


様々な仮説

SIAAと呼ばれるルーマニアの調査当局がエアバス社の支援を得て早速調査を開始。エンジンをはじめとしたかなりの残骸が地中にめり込み6mほどのクレーターができたことから、機体は80度という急角度で地面に激突したことが分かった。

まず、目撃証言や、墜落の2週間前にタロム航空のボーイング737に対する爆破予告があったことから、爆弾によるテロの可能性を疑われたが、飛散範囲がそこまで広くなかったことからこの説は否定。目撃者は、事故機が木っ端みじんになりながら炎上したため爆発したと勘違いしたようである。

次に気象条件が疑われたが、雪こそちらついていたものの、乗員たちはちゃんと離陸直前に除氷作業を受けており、管制官から気象に関する情報も得ていた。


そこで機体整備に目を向けてみると、意外な点が判明する。事故機は定期点検を欠かさず受けてはいたが、上昇中に上昇推力に設定すると時たまオートスロットルが左側のエンジンをアイドリングまで落としてしまう不都合を抱えていたのだ。これはA310そのものが抱えていた不都合なようで、デルタ航空なども認識しており、製造元のエアバスもその欠陥を直そうとしていたが、フライトの度に発生するわけではなく、さらには地上では再現ができないため、発生原因がわからない状態になっていた。そのため、タロム航空では、離陸時、パイロットのどちらか一方がスロットルレバーを手で抑えることで左右の推力を均等に保つという処置を行なっていた。

このことは371便の機長も知っていた。さらに言えばこの機長はタロム航空で14,312時間も操縦しており、周囲の評判も申し分ない名パイロットで、健康診断もパスしており、副操縦士についても、経験や健康面での問題点はなかった。


そうこうするうちに、FDRとCVRのデータの復元が完了する。


衝撃の事実


まずFDRから調べてみると、離陸前は管制官と普通にやり取りし離陸後も1分間は正常だったのが、そのあと急に傾きバランスを崩して、19秒で捻じれながら地面に落下していったことが分かった。さらに調べると高度2000フィート(600m)前後で例の不都合が発生していたことがわかる。


しかし、機長はこの不都合の存在と対処法を知っていたはず。なのになぜ対処できなかったのか?訝しんだ調査官たちは次にCVRのパイロットのやり取りに耳を傾ける。


午前9時06分の離陸直後、まず、「副操縦士が操縦し、スロットルの不調は自分が対処する」という機長の発言が出てくる。だが、その後何故か、副操縦士のフラップなどの操作に対しては復唱したのに、スラットの操作には無言であった。飛行機の操縦時には、操縦担当(この場合は副操縦士)が操作手順を声を出した後、相方(この場合は機長)はそれを確認のために復唱するのが規則で決められているはずである。


……が、次の瞬間に調査官の耳にその疑問が吹き飛んでしまう会話が飛び込んできた。


 副『機長、大丈夫ですか?』

 機長『……ぶんが……』


 調査官「ッ!?聞こえない。もう一度だ。」

嫌な予感がよぎった調査官たちが音量を上げてみると…


 機長『…気分が…悪い……ヴァァァ…』


なんと、機長は心臓発作と思われる症状を突然訴えたかと思うと、そのまま断末魔のうめき声をあげながら黙り込んでしまい、それ以降何の反応も見せなくなったのである。つまり、復唱したくても苦しくてそれどころではなく、唐突に意識を失ったか亡くなってしまったようだ。そして間の悪いことに、その最悪のタイミングで、スロットルの不都合が起きてしまった。だが、上述の通り外は雪のため雲が立ち込めており、機長の突然の変調に気を取られた副操縦士はスロットルの不都合での傾きを雲のせいで把握できず、空間識失調に陥ってしまう。(加えて、彼の操縦経験の9割以上はイリューシン製の機体によるものだったため、西側の姿勢指示器には不慣れだった。ちなみに、機長が倒れた後3秒以内に機長を見捨てて操縦に戻らなければ助からなかったとのこと。機長に大丈夫かと状態を聞いたところですでに手遅れだったそうだ。)そしてバランスを崩して雲の層を抜けた時には立て直しの時間は失われており、CVRの最後には副操縦士の絶叫が響き渡っていたのであった。


離陸してから1分後に機長がうめき声をあげながら倒れ、その後30秒足らずで墜落。公的な原因は”機器の不具合と機長の急病に起因するパイロットエラー”とあるが、実際のところ、副操縦士を非難するにはあまりに不幸な偶然が重なりすぎた顛末に、調査官は唖然としながらこうつぶやいた。


 「……一分間……それで終わった……」


その後


なお、原因の一つとなった不具合については製造元のエアバスが補修に努め、9か月後には不具合の解消方法を記した作業指示書を通知。さらに1年後には補修が義務化され、その後不具合が再発する事はなくなった。


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