概要
元々、京野菜の定義は明確ではなく、京都で栽培を重ねた結果品質が確立したものや、京都独自の栽培方法により生み出された品種をこのように呼ぶ。
京都の食文化と、季節ごとの暑さと寒さと昼間の寒暖差が大きいという気候に合う、明治以前から続く栽培の歴史から数々の京野菜が生まれている。
その一方で、伝統野菜だけでなく、広義には栽培開始時期に関係なく京都で作られる野菜全てを京野菜とみなせる、という京都市の見解もある。例えば、万願寺とうがらしのように栽培の開始時期は戦前であるが、伝統野菜に準じるもののという扱いである。
1988年(昭和63年)3月京都府農林水産部は「京の伝統野菜」の定義を以下に定めた。
- 明治以前に導入されたもの
- 京都府内全域が対象
- たけのこを含む
- キノコ、シダを除く
- 栽培または保存されているもの及び絶滅した品種を含む。
現存する品種
ダイコン
- 辛味大根
- 青味大根
江戸時代後期、郡大根(絶滅)が突然変異してできたものとされる。地上に出た根の部分は日が当たって薄い緑色になる。吸い物の具や、青味の部分がキュウリの代用、刺身のつまに利用され、また漬物にも利用された。
- 時無大根
- 桃山大根
滋賀県の大根が京都に渡ってきたとされる。緻密な肉質で漬物に向く。現在は種子保存用もしくは自家用の栽培がほとんど。
- 茎大根
- 佐波賀大根
- 聖護院大根
江戸時代に尾張から渡った長い根の大根が、栽培を重ねるに連れ丸型になったと推測される。
菜類
- 鶯菜
- 酸茎菜(カブの変種)
- 水菜
- 壬生菜
- 畑菜
カブ
- 松ケ崎浮菜蕪
- 佐波賀蕪
- 舞鶴蕪
- 聖護院かぶ
- 大内蕪
ナス
- もぎなす
- 賀茂なす
丸なすの系統で、江戸時代に上加茂で作られたとされる。
- 山科なす
カボチャ
- 鹿ヶ谷かぼちゃ
果実は瓢箪型で、表面はでこぼこしているか平滑である。果皮は熟すと深緑色から赤みがかった褐色に変色する。津軽から持ち帰った菊座カボチャの種を愛宕郡鹿ケ谷村で栽培し、栽培を重ねるに連れひょうたん型に変化したという。
トウガラシ
- 伏見唐辛子
- 田中唐辛子
- 山科唐辛子
その他
- 海老芋(里芋)
里芋が海老のように曲がって育つよう、特殊な方法で土寄せをしたもの。
- たけのこいも(里芋)
- 堀川ごぼう
根は比較的短く、中心部が空洞になる性質を持つ珍しいゴボウ。空洞に食材を詰めて調理する。
- くわい
- 京うど
- 京みょうが
- 九条ねぎ
- 京せり
- 京たけのこ
- 桂瓜(シロウリ)
- ジュンサイ
- 聖護院きゅうり
絶滅した品種
ダイコン
- 郡大根
曲がりくねった独特な形状をしており、断面が徳川家の葵の紋に似ていることで珍重されたが、青首大根の登場で次第に栽培数を減らし、ついには絶滅した。
瓜
- 東寺まくわ
江戸時代の青物市場に関する記述に登場するマクワウリ。
カブ
- 東寺蕪
京の伝統野菜に準じるもの
- 万願寺とうがらし
シシトウガラシとピーマンの「カリフォルニア・ワンダー」の交配によって育成された品種。
- 鷹峯とうがらし
- 花菜(菜の花)
ブランド京野菜
1989年より、京都府、流通団体、京都農協などが中心になり設定した農産物を指す。
「京の伝統野菜」と12品種、「京の伝統野菜に準じるもの」と2品種が重複する。以下は、いずれにも重複しないものを記載する。
- 金時にんじん
- やまのいも
- 紫ずきん(大豆)
- 黒大豆
- 京 夏ずきん(枝豆)
- 丹波大納言小豆
- 丹波栗
- 京こかぶ
- 京たんご梨
- 京たんごメロン
- 京丹波大黒本しめじ
上記のように、黒大豆や丹波栗などは伝統野菜ではなく丹波・丹後地方の特産物であるが、それらもブランド京野菜に含めることがある。
新京野菜
近年は、京都の気候風土に合った珍しい新野菜を「新京野菜」と呼んでブランド化している。
現在は合計12品目。
トマト
- 京てまり(ミディトマト)
- 京あかね(ミニトマト)
菜類
- 京唐菜(葉唐辛子)
- 京ラフラン
ダイコンとコールラビの交配種。
- みずき菜
京ラフランに更に改良を加えたもの。
里芋
- 京北子宝いも
- 京の里だるま
ミョウガ
- 京の花街みょうが
カボチャ
- 風鈴かぼちゃ
生食用のカボチャ。
ササゲ
- 京夏豆ふみづき(さや文月・さや葉月)
トウガラシ
- 京の黄真珠
ピリッとした辛味があり、果実は黄色くて丸い。乾燥品が1年中出回る。