解説
特にSF作品においてプラズマ兵器、音響兵器、レーザー兵器などの実体のないエネルギーを利用する兵器に対し、実体のあるモノを利用する兵器を指す。また現実にレーザー兵器は実用化されていないため、ほぼ全ての兵器は実体を使用している。そこで特に大きな質量を持つ物体を撃ち出す兵器をここに分類する。
破壊力とは
運動エネルギーは「質量」×「速度の2乗」に比例する。
勿論、火薬を改良・増加し、弾速を上昇させることでも破壊力は増すが、銃より大砲の方が破壊力が大きいことは武器に詳しくない人でも分かる通り、砲弾が大きく重い方が破壊力は大きくなる。
何より空気抵抗による摩擦を考えた場合、同じ重さなら小さい方が空気抵抗が少なくなり、速度が上がれば破壊力も増すため、大きな物体を使えばいい訳ではなく比重が重視される。
しかしながらどんなに比重の重い物質を選んでも大きさが余りに小さいと差が出ない。またある程度の大きさがないと火薬のエネルギーを受け止められず、真っ直ぐ飛ばないため、一定以上の大きさが必要となる。
ただし重い物を飛ばすには、比例して大きなエネルギーを必要とし、飛ばされる物体もエネルギーに耐えられる硬度が求められる。結果として重く、硬度の高い特別な金属や構造を持った物体が質量兵器には要求され、自然と砲弾の数も少なくなる。
同時に発射する砲身も衝撃に耐えなければならず、通常より堅牢な構造が必要となって来るが、やはり使用回数は少なくなる。
この特殊さと異常さも相まって通常兵器とは、一線を画する変態兵器の一種と見做されることもある。
例)徹甲弾
戦車の戦車砲や艦砲などで使用される大きく重い砲弾。鉄より比重の重い重金属のタングステンや劣化ウラン弾が作られた。
しかしながら命中性、砲弾を運ぶ際に余りに大きい、重すぎると扱えない為、現代では砲弾の質量をこれ以上、重くするより火薬を改良して速度を重視する傾向が強い。また戦車は小型化し、戦艦と呼ばれる艦種の戦闘艦はどの国の軍隊からもなくなった。
フィクション
上記の徹甲弾の例にある通り、現実では質量兵器の研究は、どん詰まりとなった。今以上に大きく重い砲弾は扱いにくいだけで不要と見做されるようになったためである。また高性能火薬や核兵器の登場により実弾兵器の性格は、巨大化とは違った方向に変換しつつある。
そのため質量兵器は、フィクションの世界に登場するものがほとんどである。
例)コロニー落とし
宇宙から人工的に作られた衛星都市（コロニー）を落下させる質量兵器の代名詞。
地球の引力、重力効果による加速と既存の建造物を利用することで弾速と砲弾確保の問題をクリアした質量兵器。また落下するだけであるため、発射するための砲身や火薬を必要としない。さらにコロニーがもともと衛星軌道に移動する機能を有するために簡易に兵器転用が可能、遠隔操作で軌道修正が出来るなど、あらゆる面で利便性が高い。
ただし、その極めて過剰な破壊力から使用にはリスクが伴う。
質量兵器は、砲弾に特殊な素材を必要とする。そのため作品に登場させる場合、作者は様々な設定を巡らし、「何を砲弾に使うか？」という点に独創性が試される。
また質量兵器が登場する作品は、核兵器のような汚染をもたらす汚い爆弾、レーザー兵器のエネルギー源として核融合炉などが使用できない世界観であることを暗に強調する舞台装置として使用されることもあり、クリーンな兵器という側面を持つ。
しかし質量兵器であっても、その砲弾の大きさ、質量が極めて大きい場合、地球環境を著しく破壊するものもあるため、全ての質量兵器が生態系や環境破壊を避ける目的で使用される訳ではない。
現実としての構想
なお上記の「宇宙空間から人工物を加速落下させ,その質量をもって攻撃する」という構想は
実際に米国で”神の杖”（低軌道上の人工衛星から棒状タングステン体を地上目標へ撃ち込む）として研究されていると言われている
Pixiv的解説
質量兵器の代名詞たるコロニー落としから大質量の物体が落下することで大規模な破壊をもたらす光景を連想し、転じて巨乳や巨尻などが見る者に与える衝撃を表現して、これを質量兵器と称する。
関連イラスト
関連作品
『黄金銃を持つ男』
007のシリーズの一つ。大きさは全くの問題外だが、最も重い実弾兵器。
殺し屋フランシス・スカラマンガが愛用する金で作られた専用弾を使用する黄金の拳銃が登場する。黄金銃は普段、ライター、万年筆などに偽装され、組み立てて使用する。
金の比重は１９．３２であり、これはウランやタングステンよりやや重く、鉄の約２．５倍も重い物質であり、質量を活かした武器という意味では普通の弾丸より威力が出ると思われる。しかし拳銃の弾のサイズでは比重の差は出にくく、弾の形状、銃の構造にもよるが爆発的な差はないだろう。
ちなみに最も重い物質はオスミウムで22.57である。
『海底軍艦』
大和級四番艦轟天号ないしラ號など同じコンセプトだが、異なる数多くの艦が登場する。
シリーズによって違いはあるものの、最大の特徴は艦首に回転衝角（ドリル）を装備しており、全速力で突進し、衝角攻撃で敵を粉砕する艦そのものが質量兵器となっている。また両舷、艦底にも回転ノコギリを装備している艦、ドリルが三本になっている艦、ドリルが分離してロケットのように発射できる艦など、とんでもない艦ばかり出てくる。
『ガンダム』
コロニー落としと言えばガンダム。ただ、コロニーは本来兵器ではないので質量兵器と呼んでいいのか微妙である。シリーズによっては隕石や小惑星をぶつけるという作戦も登場した。
『銀河英雄伝説』
ドライアイスの小天体に宇宙船のエンジンを乗せ、限りなく光の速さに近い加速を与えて撃つという作戦が登場した。相手は阻止するどころか発見することもできないまま、この作戦を許しており、実効性の高い点が特徴。
大質量であることは勿論、亜光速で吹っ飛んでくるため威力は桁違いである。
『超時空要塞マクロス』
巨大な戦艦が人型ロボットに変形して敵の戦艦をぶん殴り、そのまま味方部隊が敵艦内に突入する、ダイダロス・アタックが登場する。衝突部位をバリアーで覆うなど、マジンガーのロケットパンチより、ちゃっかりしている。
月面からマスドライバーで射出した岩を地球へ落下させる場面が物語の山場で登場する。曰く「井戸の底(地球)へ石を投げる」。落下の衝撃だけで核爆発並みのスパーク(赤外線～X線)が発生した。
マスドライバーは、噛み砕いて言うと「宇宙にコンテナを打ち上げる巨大な大砲」であり、もともとは平和利用のために建造され、SF作品では兵器として転用されることがあるものの兵器ではない。
『トップをねらえ！』
惑星に推進装置を取り付けて利用する兵器が登場した。
木星を利用したバスターマシン３号ブラックホール爆弾、地球を利用したバスターマシン・ドゥーズミーユ(douze-mille)など。
ドゥーズミーユはスーパーメガティックPK（超能力）で亜光速まで加速した地球をぶつけるという、かなりぶっ飛んだ兵器だったが敵も理論上、宇宙で一番重いブラックホールを体内に取り込んでくるなど、物理学に喧嘩を挑んだ。
『ダイの大冒険』
空を移動する大魔王バーンの宮殿から地上に向け、巨大な石柱を落下させる「ピラア・オブ・バーン（バーンの柱）」が登場する。
単に巨大な質量兵器であるだけでなく魔法の触媒としても機能を有し、全ての柱が魔方陣を描くことで地上全土を吹き飛ばすバーンの魔法に利用された。使用後の兵器を敵が残骸と見做して自然に警戒しなくなるという心理の裏を突き、攻撃自体が次の作戦の布石に繋がる、相手が悔しがることを好む狡知なバーンの趣味を反映した兵器。
『NARUTO』
「山土の術」や巨大な岩石落としなどの大規模土遁、「天碍震星」、口寄せ・「屋台崩しの術」、大規模水遁など、兵器の概念に当てはまるかどうかは不明だが、質量を利用した攻撃方も少なくない。
『鋼の錬金術師』
人間の命＝魂を集めた賢者の石が登場した。
賢者の石（魂）を錬金術で質量に等価交換し、自由に元素、物質を取り出すことが出来る。ホムンクルスたちは、これを利用して重さや大きさを自由に変える能力や失った手足を回復する能力を発揮した。終盤では「太陽を作ることもできる」と豪語して核融合をやってのけた。
核融合は「サッカースタジアム一杯のヘリウムをサッカーボールに圧縮するようなもの」と例えられるように見た目には手のひらに乗るサイズだが、とんでもない大質量兵器を出現させた。
『ベルセルク』
多くの質量兵器は火薬を利用して射出するか、落下による重力効果を利用するが、ドラゴン殺しは異常に大きな鉄の剣である。中国のことわざに「屠竜の技」という言葉があるが、それを直喩的に表現した武器であり、ドラゴンを殺すために必要と思われるだけ巨大な剣として鍛造された。
質量兵器としては小さいが、人間の武器としては常識を超える大きさが読者に強い印象を与えたという意味ではPixiv的には質量兵器と言えよう。
戦慄のタツマキなどのエスパーは質量攻撃を多用し、タンクトップマスターなどの怪力キャラクターなども質量弾を用いる。
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