主な筋立て
悪知恵に長けた兎が淤岐島(おきのしま、所在不明)から因幡国に渡る為大勢の和邇(以下「ワニ」)を騙して島を繋ぐ海路に並ばせ、その背を踏んで渡ろうとしたが、最後の一頭の上でネタばらしをしたがために、激怒したワニに着物(毛皮)を剥ぎ取られてしまった。
兎が苦しんでいるところへ八十神(やそがみ)と言う神々が通りかかり、その(意地悪な)教えに従って潮に浴し風に吹かれた兎は身の皮が裂け、塩が傷口に染みて更にもがき苦しむ事に。
その様子を見かけた大穴牟遲神(オオナムヂ、大国主神)が見るに見かね、「真水で体を清め、蒲の穂を敷き詰めてそこで寝ると良い」と治療法を教え、その通りにした兎はすっかり全快した。大穴牟遲神と八十神が因幡国のヤガミヒメに求婚しに行く途中だと知った兎は大穴牟遲神に対し「ヤガミヒメは八十神ではなくあなたを選ぶでしょう」と予言し、それが的中して大穴牟遲神はヤガミヒメと結ばれた。
白兎について
よく赤目で描かれる事が多いが、本来「赤目の白兎」と言うのは明治時代に入ってから品種改良された家畜であるため、本来は黒目が正しい。
「ワニ」について
この神話に登場する「ワニ」については、言葉通り鰐を指すとする説と、西日本でサメの事を「ワニ」と呼ぶ事を根拠に鮫の事を指すとする説があるが、30万年前のマチカネワニならともかく、飛鳥時代(設定上は更に1500年ほど前だが)の日本に鰐が居たとは考え辛いので、たいていの絵本などではサメ扱いされており、pixivでもサメ説が大多数を占める。
余談
- 童謡「だいこくさま」は当然ながらこの話がモデルである。
- 現在でも傷口に塩や汗が染みて激痛が走ることを「因幡の白兎状態」と例えたりする。
- 兎がワニを騙して海や河を渡る昔話、更に動物の種類が異なるものの内容が類似する説話は、東南アジアを中心に世界各地に存在している。
- 2015年の教科書査定により、中学校の新しい歴史教科書の8点全てに古事記・日本書紀についての解説が加えられており、そのためか三省堂と東京書籍の新しい国語教科書には古事記が取り上げられ、因幡の白兎の伝承が倭建命の望郷の歌と共に掲載された。