概要
戦闘機同士の空中戦。中でも最も典型的にイメージされる、互いが複雑な機動を駆使して攻撃に有利な位置を奪い合う近接戦闘を指す。格闘戦とも呼ぶ。
互いの相対速度が速すぎる為、正面及び側面への攻撃が非常に困難である事から相手の後方について攻撃するのが基本となっている(同方向に同等の速度で進む形になるので相対速度が最も低くなる)。
攻撃する側は、相手を機銃の照準内に捉えるないし空対空ミサイルでロックオンする為に敵機の後方から接近し、逆に被攻撃側は相手を自機の後方に回り込ませないように回避機動を取りつつ、自分が攻撃側に回れる機会を狙う。
言葉の由来は、上記の機動が犬が喧嘩をする時互いに相手の後ろに回り込もうとする姿に似ている為、とされている。かつてのドッグファイトは武器の性能により敵機の後方につくことを目的とされたため、このような名前が付いた。
ドッグファイトに突入した場合、機体性能によるゴリ押しが効かず、パイロットの力量による影響が大きくなり、さらに運の要素すら絡んでくる。パイロットの優れた技術により、一見決定的にすら思われた性能差が覆される様はロマンにあふれており、ドラマチックですらある。
レーダーやミサイルの発達した現代では、遠距離からのミサイル攻撃に比重が置かれ、『エースコンバット』のような華麗で派手な超近接戦は現実にはなかなかおこらない。
近年のミサイルは、黎明期の50年代~60年代に比べて射程距離や命中率が劇的に向上し、更にはチャフやフレアの欺瞞にすらだまされることがないように設計されている。そのため戦闘機同士の交戦距離は大きく延びており、敵機が豆粒どころか全く見えない、という距離で戦闘が始まることも珍しくない。
とはいえ映画やゲームのようにいつまでも敵機を追いかけまわしてくれるほどの持久力はミサイルにはない。
公表されてる射程は、多くの場合敵機が全く回避機動を取らない前提のものである。逃げ回る戦闘機にまともな命中を見込もうとすれば、ステルス機でもない限りは、敵機のレーダーに探知され、敵機のミサイルを回避しながら、ミサイルの持久力で追随できる距離まで接近する必要がある。やはり戦闘機の能力に機動性は欠かせない要素である。
かつてはミサイル万能論が盛隆し、戦闘機には機動性はいらない、という意見さえあったほどだが、ベトナム戦争でそれが誤りだった事が実証された。ミサイルの撃ち合いであっても機動力は不可欠であり、湾岸戦争においてもドッグファイトは発生している。
そのため現在でも格闘戦の性能が軽視されることはない。DACT(Dissimilar Air Combat Training、異機種間戦闘訓練)ではドッグファイトが発生するように仕向けられることもあり、実戦では無敗の機体が撃墜判定を受けることもある。