概要
『ウィザーディング・ワールド(魔法ワールド)』に登場する生物。本質は感染症。
狼人間とも。
『ハリー・ポッターシリーズ』のリーマス・ルーピンやフェンリール・グレイバックが代表。
原語では「werewolf」であり、「lycanthrope」や「wolfman」ではないことに注意。
解説
狼への変身
人狼症の患者は毎月満月の夜に極度の苦痛を伴いながら狼の姿に変身する。
また満月の直前期には顔が青ざめ体調が悪くなる。
満月の夜が終わると人間に戻る。また、善悪の観念を失うのは原則として変身の間だけである。
狼状態の人狼はほとんど普通の狼と区別できないが、彼らは普通の狼よりやや口吻(鼻)が短く、人間らしい小さな瞳孔を持ち、尻尾に房飾りが付いている。そして狼より凶暴。
また普通の狼が人間をほとんど襲わないことと対照的に、人狼は人間を襲うことを好んでおり、他の生き物はほとんど攻撃しない。
マグルの民話に登場する「凶暴な狼」は、実は人狼のことであると魔法界では信じられている。
19世紀の末、当時イギリスきっての狼人間研究の権威だったマーロウ・フォーファング教授が、狼人間の習性に関する初の包括的な研究を行った。その結果、観察や聴き取り調査を行うことができた狼人間のほぼすべてが、噛まれる前は魔法使いだったことが判明している。
また、マグルは魔法使いと「味」が異なることや、マグルは噛まれた傷がもとで死にいたるケースがはるかに多いのに対し、魔女や魔法使いは死亡せず、狼人間として生きながらえるということも、教授の研究によって明らかになった。
差別の歴史
狼人間は世界中に存在するが、彼らが頻繁に生まれる魔法界では、古くから迫害を受けてきた。狼人間を狩ったり研究したりする魔女や魔法使いは、平均的なマグルよりもこうした生物に襲われるリスクが高かったからである。
狼人間をどう扱うかという問題に対する魔法省の方針は、これまで常に曖昧で、効果に乏しいものだった。
1637年に「狼人間の行動綱領」が策定されると、狼人間はこれに署名したうえで、変身しても誰も襲わないようにするため、毎月自身を安全な場所に監禁すると約束しなければならなくなった。
しかし行動綱領に署名した者は 1 人もいなかった。みずから魔法省に出向いて自分が狼人間だと申告する覚悟など、誰にもなかったからでである。
後に「狼人間登録室」が設置されたときも、同じことだった。この登録室には本来、全ての狼人間の氏名と個人情報が記録されることになっていたが、制度導入後いつまでたってもリストは完成せず、登録情報は信頼性の低いものにとどまった。
新たに噛まれた人びとの多くは、自分が狼人間になってしまったという事実を隠そうとした。それが露見すれば必ずや恥辱にまみれ、社会から追放されてしまうからである。
また、狼人間は長らく、魔法生物規制管理部の動物課と存在課の双方から疎まれてきた。狼人間を人間に分類すべきか獣に分類すべきか、誰も判断をつけられなかったからである。そのため、一時は「狼人間登録室」と「狼人間捕獲部隊」が動物課にあり、「狼人間援助室」は存在課にあるという有様だった。もっとも、登録室に登録する狼人間がほとんどいなかったのと同じ理由で、支援室を利用しにくる者はひとりもおらず、この部署はやがて廃止された。
ドローレス・アンブリッジにより「反人狼法」が起草されると、人狼の就職は不可能となった。
結果、社会に居場所がない人狼は群れを作り固まって暮らすことが多くなった。フェンリール・グレイバックをはじめ彼らの多くは社会への復讐心を持ち、積極的に人を襲い人狼を増やすようになった。それによってより差別が更に強化されるという負のサイクルが続いている。
ヴォルデモートは彼らに居場所を与えることを約束し、人狼の多くが闇の陣営へと加わった。
対策
狼状態で他者を傷つけないようにするためには自分をどこか人のいない場所に隔離するか、「トリカブト系脱狼薬(ウルフスベーン・ポーション)」を満月の前1週間毎日服用するしかない。
しかし薬の方はダモクレス(レイブンクロー生のマーカス・ベルビィのおじ)によって20世紀後半になって発明されたものであり、複雑な調合が必要。材料もけっして安価なものではない。定職に付けず貧困である人狼が簡単に入手できるものではなかった。
人狼化の原理
狼状態である人狼の唾液が非人狼の人間の血液に混入し、またその被害者が銀粉とハナハッカの混合物で治療されると、被害者は人狼に変わる。
(治療されないと傷からの出血が止まらず被害者は死に至る。)
普通の人間が人狼と結ばれても、子孫に人狼の症状が遺伝することはない。
ただし多くの人狼は自らを恥に思い、更に子孫へ遺伝すると思い込んでいるため、子供を作らない。
「人狼の子」
満月の夜に変身状態の人狼同士が交尾すると狼の幼獣が生まれる。これは大変稀な事象である。
仔狼たちは普通の狼よりも温厚、非常に知性的であり、人を全く襲わない。
ホグワーツの禁じられた森に人狼の噂があるのは、校長のアルバス・ダンブルドアの許可の下、現在も仔狼の何匹かが森に棲んでいるからである。
映画版、そして後続のフランチャイズシリーズ版
原作からビジュアル面でかなり大幅に変更が加えられている。
狼というより若干それの要素を認められなくもないようなクリーチャー的な外貌であり、なんと二足で立ち上がる。
監督のアルフォンソ・キュアロンはより大人向けの雰囲気を確立することを望んでいたため、この他にも飛ぶ吸魂鬼や、ヒッピー的なシビル・トレローニー教授、マグル生まれでなくてもマグルの服を着こなすホグワーツ生たちなど様々なビジュアルイメージを作りだした。
映画版3作目でつくられたこのイメージは今なお後続のフランチャイズ(ゲーム版など)に影響を与え続けている。