本稿では映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』のネタバレに少し触れています。未視聴の方、ネタバレが嫌いな方は閲覧にご注意ください。
概要
出世という己の野心のために龍賀一族に取り入ろうと目論んでいた水木。
龍賀一族の繁栄の道具として扱われ続けてきた沙代。
沙代の祖父である龍賀家当主・時貞が逝去して間も無い夏の日、村道で草履の鼻緒が切れたために立ち往生していた沙代に、水木が手を貸した事がきっかけで二人は出会う。
沙代は初めて一族の一員としてではなく、個人として自分を見てくれると感じた水木に心を開き、徐々に信頼を寄せていく。自身の事情に加え、閉塞的な村の環境を疎んでいた沙代は、水木なら自分を救い出してくれるかも知れないと考え、懸命に水木へ好意をアピールする。
一方の水木は好印象を得るためだけに親切にしたつもりが、自分を異性として見るような彼女の言動に只管当惑していた。当の水木自身は年齢差も勿論だが、戦争での経験から他者への見返りの無い愛情に懐疑的になり、更には身内に家の資産を奪われた過去もあって、今は生きる事で精一杯という状況だった。知り合って間も無い“田舎のお嬢さん”との色恋にかまける余裕は無かったのである。
それでもゲゲ郎(鬼太郎の父の事で、後の目玉おやじ)と交流が切っ掛けで、次第に出世の足掛かりとしてではなく、1人の人間として彼女に向き合うようになって行く水木。
しかし龍賀に纏わる悍ましい真実と二人のすれ違う心故に、沙代の淡い恋は悲劇的な結末を迎えることになる。
物語のラストでは、狂骨の強い怨念故なのか、水木は命こそ助かったものの、頭髪は白くなり村での記憶も失ってしまう。
しかし「わからない」と言いながらも「なんでこんなに悲しいんだ」と涙を流す水木。その涙には、もしかしたら沙代の心を弄ぶ形となってしまったことへの後悔と、彼女を救えなかったことに対する悲しみも含まれていたのかもしれない。
余談
- パンフレットに書かれたインタビューによると、沙代は復讐として自分の悲惨な最期を水木に見せつける事で、彼の記憶に残り続けようとしたのだとという。
ファンダムでは
余りにも救われない沙代の運命に、多くの観客は深いダメージを負い、X(旧Twitter)や各掲示板などではどうすれば彼女を救うことができたのか、という考察が行われた。
中にはヒートアップの果てに水木をはじめとする他のキャラクターに対し、攻撃的になる人も見られるほどである。
考察や議論の際には、各キャラクターにはそれぞれの視点での物語があること、またそれぞれのファンがいることを頭の隅に置いておこう。ケンカはよせ、腹が減るぞ。