「わぁー 夢みたい……!」
「うれしい…… 戦えんの!」
概要
ゲーム『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のダウンロードコンテンツ『ゼロの秘宝』に登場するキャラクターで、彼の姉ゼイユと並ぶDLCにおける主人公のライバル枠。
『碧の仮面』の舞台であるキタカミの里出身で、『藍の円盤』の舞台であるブルーベリー学園に通う、おっとりとした繊細な性格の男の子。
姉からは『スグ』というあだ名で呼ばれている。
キタカミの里で鬼と恐れられているオーガポンを勇敢で格好いいと感じているようで、『鬼さま』と呼んで憧れの対象にしている。その憧れはかなり強く、小さい頃は鬼を探して何度も夜の山に入っていたほどで、よく大人に怒られていたらしい。
よく姉のゼイユの背中に隠れ他人に心を開くことは少ないが、パルデア地方からやってきた主人公が気になる様子。
一人称は「おれ」。驚いたり興奮したりすると「わや(めちゃくちゃだ)」や「けっぱる(がんばる)」「〜べ(〜でしょといった推測や一緒に〜するという意味)」といった東北弁らしき方言で喋る癖がある。このため、キタカミの里のモデルが日本の東北地方であるとする説の根拠のひとつとなっていた。
姉はスマホを持っているが彼は買ってもらってないらしい。
ストレスが貯まると食事を抜くなど、心身に影響が出やすい傾向がある様子。
容姿
赤紫のインナーカラーが入った黒髪で、瞳は金色。首にほくろがある。
真剣になると瞳孔が細くなり、ハイライトが消えまるで蛇のような瞳になる。
姉とおそろいの黄色いヘアバンドとウエストポーチは常に身につけている。
よく見ると唇には姉と同様に色が付けられている。
一見すると主人公と同じ位の身長・体格に見えるが、彼の着られなくなった甚平を主人公が譲り受けるイベントがあることから、実際は主人公よりも長身であることがうかがえる。
主人公より体がかなり細く、骨が浮くほどの痩せ体型である。
姉の美貌を受け継いでか、作中では見た目がかわいいと評価されている。
ファミ通.comによる体験会リポートでは、彼の首にあるほくろの位置が注目を集めた。
普段は制服姿だが、『碧の仮面』のオモテ祭りでは白色の甚平を着用し、頭にオーガポンのお面をつけた姿に。
手持ちポケモン
発売前に彼の手持ちとしてカミッチュが紹介されているが、実際のバトルでは厳密な切り札は設定されておらず、先発のみ固定となっている。
1戦目
2戦目
3戦目
4戦目
前編最終戦
本編クリア後などの進行状況次第では、道具を持たせたガチの勝負になる。
- ダーテングLv.71(クリア前はLv.33) ♂(きあいのタスキ所持)
- メガヤンマLv.72(クリア前はLv.37) ♂(アッキのみ所持)
- カミッチュLv.72(クリア前はLv.36) ♂(たべのこし所持)
- ダイノーズLv.71(クリア前はLv.33) ♂(ヤタピのみ所持)
- ニョロボンLv.72(クリア前はLv.38) ♂(オボンのみ所持)
- グライオンLv.76(クリア前はLv.37) ♂(ヤチェのみ所持)
活躍
ゼロの秘宝 前編
故郷であるキタカミの里が合同林間学校の開催地となり、姉弟で参加生徒に選ばれる。来て早々姉のゼイユをバトルで打ち負かした主人公に興味を持ち、「主人公に夢中」とゼイユに揶揄されながらも課題である村の伝承の看板巡りのペアになることに。
スグリは主人公に一枚目、二枚目の看板だけでなく大好きな鬼が住むと言われる洞穴も案内し、オモテ祭りでは屋台でりんご飴を奢ってあげるなどすっかり打ち解ける。その後、主人公とゼイユの鬼退治フェスの点比べになり、スグリも無理やり参加させられ散々な結果で二人の元に戻ったところ、なぜか二人の態度がよそよそしい。
次の日の朝、家の前で出会った主人公と課題の続きをしようとするとゼイユに強引に追い払われる。その場は去るも家の門の影から主人公、ゼイユ、そして祖父の様子をこっそり伺う事に。
すると、昨晩主人公とゼイユは伝承の鬼オーガポンに遭遇し「みどりのめん」を拾っていた事、それを自分に秘密にしていた事が明らかになる。そして村の伝承の真実はまったく真逆であること、オーガポンのお面を作った先祖は村人に真実を伝えたが信じてもらえず迫害されたこと、そのせいで真実は一族の秘密にしていかなければならないこと、だが今の自分にはまだ教えられないこと、そして自分には秘密のままみどりのめんをオーガポンに返そうとしていることを知る。
その後、再会した主人公に何を話していたか聞いてみるもはぐらかされ、主人公まで自分をのけ者にする事にショックを受ける。三枚目の看板の前では「ひとりだけのけ者にされた鬼が可哀そう」とかまをかけるもまたも曖昧な返答をされ、主人公は自分に本当の事を語る気はないと悟ったスグリは心を閉ざす。
そして思いつめたスグリは、次の日主人公とゼイユがおめんの材料を取りに行ってる間にみどりのめんを持ち去ることにする。
事態に気づき追いついた主人公とゼイユに対し、スグリは昨日の朝の話を聞いていた事を明かし「昔の村の人々がオーガポンをのけ者にしたように自分をのけ者にした」と強く訴える。その後お面を賭けて主人公とバトルをするが負けてしまい、苛立ちから近くのともっこの像の柱を殴り、お面を返し、走り去る。
その後、しょぼくれていたところをゼイユに見つかるが、ともっこたちが復活しオーガポンに危機が迫っている事を知り、主人公に合流しオーガポンを救い出す。その後お面の件を「カッとなってしまい本当にバカなことをした」と謝罪した。
三人は聞き込みでともっこの居場所を突き止め、残りの3つのお面も取り戻すことにする。
だが、スグリは村人に怯え村の中に入れないオーガポンを可哀想に思い、二人とは別行動し村中を駆け回り伝承の真実を伝え解くことにする。彼の決意は功を奏し、主人公とゼイユがともっこから3つのお面を取り戻すころには伝承の真実が広まり、村人達はオーガポンを暖かく迎え入れた。
その後、三人はオーガポンを住処の洞窟まで見送るとオーガポンは名残惜しげな素振りを見せ、ゼイユは主人公がオーガポンをゲットする事を提案する。それを聞いたスグリは待ったをかけ「自分だってオーガポンと一緒がいい」と相棒になる権利を賭けて主人公に勝負を挑む。
だが結果は敗北。スグリは崩れ落ちるように地面に伏せ、勝てないとわかっていても諦めきれなかったと吐露する。そして主人公がオーガポンを捕まえると声を震わせながら「主人公みたいになりたかった」と伝え、走り去った。
その後は部屋にこもり続け、引率のブライアの都合のためすぐ学園に戻る事になり、林間学校の最後まで主人公と顔を合わせる事は無かった。
そしてブルーベリー学園の自室では…
「もっと 強く…ならないと」
「強く 強く! 強く!! 強く!!!!」
「待っててな…(主人公)」
そう言って髪を結び上げた。
ゼロの秘宝 後編
後編以降の彼については、こちらの記事を参照。
戦闘BGM
通常版
「碧の仮面」の他の楽曲同様、どことなく和風なイントロから始まる。
バイオリンで主旋律が奏でられ、裏で鳴っている木琴の音が特徴的だが、シリアスな主旋律や裏のベースから不安定な印象を与える。
最終戦
通常版の曲をエレキギターでアレンジしたもの。
対旋律としてピアノが追加された他、ループ直前にはノイズが入っているため非常に不穏。
余談
- 名前の由来
由来はおそらく落葉低木のカシスの近縁種「酸塊(スグリ)」。果実は酸味が強くケーキやジャムに利用される。
また、後編の舞台名の由来である「ブルーベリー」の和名は「ヌマスグリ」、姉のゼイユの名前の由来と思われるのはスグリ科の落葉低木「フサスグリ」の別名「グロゼイユ」、祖父のユキノシタはそのまま「ユキノシタ」で「スグリ」と同じユキノシタ目と、関連項目の由来と植物的な繋がりが見受けられる。(ただしブルーベリーは植物の正確な分類では別の種類である)
花言葉は諸説あるが「私はあなたを喜ばせる」「あなたの不機嫌が私を苦しめる」「あなたに嫌われたらわたしは死にます」とちょっと重い。
なお、名前の子音をとるとsgr、つまり「シゲル」と同じになる。
英語版での名前はKieranで、姉からはKikiと呼ばれている。
- 年齢について
フランス語版テキストでは14歳と表記されていたが、日本語版も含めた他の言語圏のバージョンでも14歳の設定が適用されているかどうかは不明(日本語版では該当する箇所は“お子ちゃま”と表記されており、具体的な年齢については触れられていない)。
- スグリの暴走の原因
ゼイユも認めているが、主人公とゼイユが祭りの夜にオーガポンと会ったことを黙っていたのがスグリが暴走して事態が厄介なことになったそもそもの原因である。話さなかった理由は「ひどく落ち込むかもしれない」「夜の山に入ったら危ない」というゼイユなりの気遣いだったが、祭りの夜の時は安全面を考えてしょうがなかったとしても、翌朝祖父に真相を尋ねる時まで彼を除け者にしたのは良くなかったと言える。
これ以外にもゼイユのスグリへの過干渉はプレーヤーも眉をしかめるような理不尽なものが見受けられ、それがスグリが自主性を育む障害の一つになっていた。しかしそれでもゼイユは彼の大切な存在で、彼の中の大きな部分を占めていた。その姉が最初はよそ者扱いしていた主人公を自分よりも優先しはじめ、さらにオーガポンとの仲まで取り持とうとするのを見たスグリの混乱と苦痛は想像するに難くない。
また、主人公も秘密に加担している間は白を切ったりはぐらかしたりする選択肢しか出しておらず、これにはスグリに正直に話したいのに選択肢に無い事を苦しんだり、主人公という存在が友情にヒビを入れるような嘘をついていいのか疑問に思うプレーヤーも多い。
この件について主人公とゼイユがきちんと謝る場面は少なくとも前編中にはない。(かろうじてスグリがお面の件について謝った際の選択肢の片方に「こちらこそ」があるが…)
とにかく二人はじっくりと時間をかけてスグリに向き合わなければいけなかったのだが、ともっこ復活でそれどころではなくなった上に、事件解決後にブルーベリー学園組が早々に離脱しその機会は失われてしまった。
またSV本編では生徒の目線に立ってトラブル解決に取り組む教員をはじめ生徒をフォローしてくれる大人たちがおりパルデア組の冒険を影から支えていた。しかしDLCの村の大人や教員はそこまでは関わって来ない。またゼイユとスグリの親は不在であり、圧が強いとはいえ保護者的な役割を同じく不完全な子どもであるゼイユが務めざるを得えなかった。それどころか後編では暴走する彼を己の目的のために利用した大人までいた始末である。
様々な思惑があるにせよ、結局のところ誰もまともにスグリに取り合う者はいなかった。
彼の持つ問題が悪化した原因は、様々なボタンの掛け違いやタイミングの悪さが原因と言える。
- 主人公への憧れ
スグリは主人公に嫉妬していながらも恨み言はほとんど言ってはおらず、劇中でも主人公の事を認めている発言が多い(彼が明確に恨み言を言ったのはオモテ祭りでオーガポンに会ったことを黙っていたことだけである)。むしろ、主人公に対しては憎むべき相手ではなく、羨望の存在ないし越えたい相手として認識していると思われる。
オーガポンを賭けた戦いにおいても、スグリは主人公が本気で戦ってくれることを望んでおり、むしろここで手加減などしてスグリにオーガポンを譲ろうとしても、スグリ自身が納得しなかったであろうことは容易に考えられる。
また、そのバトルについてスグリは「自分がわがままを言っているだけ」であることを認めており、諦めきれない気持ちを整理させるために主人公に勝負を挑んでいる節がある(勝負中も「(オーガポンの相棒が)主人公の方がいいのはわかっている」と発言している)。負けた後も、主人公にわがままに付き合わせてしまったことについてきちんと謝罪している。
オーガポンとの戦いに関しても、ゼイユのように応援はしていないが、しっかりバトルの様子を見ている。
このことから、主人公へ嫉妬しているといってもスグリが主人公を過剰に憎んでいたり嫌っていたりしているということはないと思われる。
- 入れ替えられたポケモン
初戦ではすべての手持ちポケモンに対して専用セリフが用意されているキャラクターである。
途中から(前編の四戦目は空きがあるにもかかわらず)パーティから複数のポケモンが外れている。そのため、スグリがポケモンを外した/入れ替えた理由について様々な考察がなされたため、一部のユーザーからは「戦力外として捨てたのではないか」と邪推されてスグリが嫌われる一因にもなってしまったりしていた。
しかしその後、番外編でのペパーとの会話でカミツオロチが昔からの相棒であり、またリーグ部での会話でかつて起用していたメガヤンマ、オオタチなどについても「みんな大切で一番を決められない」とちゃんと愛情を持っている事が明かされた(ペパーも「一番がいっぱいいてもいい」と肯定的に答えている)。
むしろ、プレイヤーであれば誰しもがやるであろう「ボックスに預けた」というだけであった。考えてみればプレイヤーが当たり前のようにやる手持ちの入れ替えをNPCがやると批判されるというのもおかしな話ではある。
そもそもの話、ブルーベリー学園は基本的にダブルバトルが主流であり、シングル戦とダブル戦は勝手がかなり違うため、ルールに応じて最適なチームを編成することは何らおかしいことではない。
事実、預けられた2匹の内
とどちらもシングル戦が得意なポケモンである
なお、ここから『碧の仮面ではわざわざシングル戦用にチームを育てていたのではないか?』と考察される様になった。
また、「後編のチャンピオン戦でスグリがリストラしたポケモンを出したのに反応がなかった」というコメントがあるが、戦略的に手持ちから外しただけで、愛着はあるし捨てていないのだから反応しないのも当然である(そもそも別個体なので反応のしようがない)。
- 欲望を増幅されている?
前編でともっこ像を殴ったときに発生した紫色のモヤがモモワロウに洗脳された人々のエフェクトと同じであることや、スグリの言動に異変が生じ始めたのが桃沢商店の前の会話であり、そのシーンでは余白がある不自然なアングルで背景にモモワロウの置物が映りこんでいること、前編序盤と後半では性格がかなり変わってしまっているように見えることなどから、モモワロウやともっこ達との関わりを予想した声もあったが、結局番外編でも彼らとの関係は明言されなかった。
ただ、もし本当にモモワロウ達が関与していたとしても、操られていたというよりは欲望を増幅させられていたと言うべきものであり、スグリが自分の意思で迷惑をかけてしまったと自覚しているからこそ重く受け止めて反省し、現在のように成長したことに繋がっていると言えよう。