概要
工作艦とは、クレーンの他に旋盤や溶接機などの各種工作機械を装備し、艦船の補修・整備を行う艦船のことである。事実上、移動工廠となっている艦船である。実際の作業は、整備・補修を必要とする艦船に横付けし、搭載器材を用いることで整備・補修を行う。
工作艦に重視されるものは、その整備・補修能力であり、速力や武装は重視されない。そのために、特設艦船(民間船の徴用・改装)が工作艦に割り当てられることもある。
由来
軍艦の船体が重金属で作られ、多数の頑丈な砲台や装甲を備えるようになるのに従い、その整備・補修を行うにも一定の工作機械を備える必要が出てきた。
さらに必要だったのが、船を安定して停泊させられる場所の傍に、重量のある物品を荷揚げ・荷下ろしできる十分なクレーンを用意する事だった。
当初はこれらのことを行うには、工廠のある、転倒しないように地面に固定されたクレーンのある港に船を引き込むよりなく、整備を行う施設数は限られることになった。
しかし、これは艦船が破損を受けるとその度にそういった施設まで帰還しなければならないことを意味し、艦隊を外洋に展開する場合の障害となっていった。
20世紀に入り、造船・重機技術の進歩に伴い船に大型クレーンを取りつける事が可能となったため、各種工作機械や必要な物資を搭載し、必要とされる地域に移動、艦船を整備・補修を行う艦として工作艦が考案された。
実史では日・米・英・仏が海軍に実装し、主に第二次世界大戦前後に活躍したが、第二次世界大戦は海上戦闘の中心が戦艦から空母による戦闘機戦に移行した時期でもあり、以後大規模な海戦は見られなくなったことから重要性は薄れることになった。