ゲールマン
げーるまん
概要
狩人の助言者と名乗る老いた男性。
車椅子に座り、右足は簡素な義足。狩人の夢に長くいる様で、プレイヤー以外の多くの狩人とも接してきた模様。
人形の製作者なのかは不明だが、人形からは「ゲールマン様」と呼ばれ、そして古い狩人であり、事実彼に関連するアイテムは大抵が古いものなど、ただの古狩人の一言では片付けられない。しかし彼の背景などは作中で語られる事はほぼ無く、断片的に、それもごく僅かに判明するのみ。故にどうであったかという考察さえも難しい、謎多き人物。人形は「今となっては、もう曖昧で、姿が見える事も稀」といった旨の発言をしており、彼が本当に人間なのかが疑わしい。
奇妙な事に、狩人の夢で彼を攻撃すると絶命する事なく、ボスを撃破した時のような青白い靄と共に消えるだけである。これは一体──？
若干のネタバレ注意
ゲールマンはごく稀に狩人の夢の工房の裏庭で眠っている事があり、そこで彼の寝言が聞ける。それはストーリー進行に合わせて変化していくが、寝言から分かるのは彼がビルゲンワースに所属し、ウィレームを先生と呼んでいた事、医療教会創設者にして初代教区長ローレンスと友人であり、深い関わりがあった事。つまり彼は古い狩人の中でも、かなり古い──それこそDLCのThe Old Huntersに出てくる血に酔った古狩人らと同じくらいであろうと推測できる。
しかし終盤にもなると、安らかだった彼の寝言は魘されているものとなり、「この夢に疲れました」「誰でもいい、誰か解放してください」といった、かつての仲間や恩師、そして名も知らぬ誰かにさえも助けを求めるほどに疲れ果てている様子が見られる。彼が望んで狩人の夢に入ったのかは不明だが、恐らく入った結果、疲れ果ててしまうような何かがあったのだろう。
獣狩りの夜の終わりで
獣狩りの夜の元凶を狩り、狩人の夢へと戻ると、工房は燃えていた。(この状態でも問題なく中の機能が使えるが)
そして人形から夜明けが近いこと、そしてゲールマンが大樹の下で待っていると告げられる。
今まで開いていなかった扉が開いており、そこを進むと白い花が咲き誇る花畑のような、墓石に囲まれた場所があり、そこには月を背負った大樹が立っている。言葉通りゲールマンはその下で狩人をただ静かに待っている。
狩人よ、君はよくやった。長い夜は、もう終わる
さあ、私の介錯に身を任せたまえ
君は死に、そして夢を忘れ、朝に目覚める
解放されるのだ……
この忌々しい、狩人の悪夢から……
これをどう受け取るかはプレイヤー次第だが、ここで選択肢が現れる。
介錯を受け入れるか、否か。
ここで受け入れると、介錯が行われ、狩人は彼も持つ大鎌で首を落とされ、夜明けに目覚め、エンディング「ヤーナムの夜明け」に到達する。そう、確かに彼はプレイヤーを解放してくれたのだ。この狂った獣狩りの夜から、夜明けへと。
……さらばだ、優秀な狩人
血を恐れたまえよ
だがもし。
獣狩りの夜に、何かまだ求めるものがあるのか。あるいは、ただ他人に自らの運命を委ねるのを拒んだだけなのか。
ただその選択は、決して無意味でも、無価値でも無いことだ。
そしてそれは、老人にとって、見逃せぬ問題だった。
故に彼は静かにその車椅子から立ち上がる。
以下作中の重大なネタバレにつき注意
なるほど、君も何かにのまれたか。狩りか、血か、それとも悪夢か？
まあ、どれでもよい
そういう者を始末するのも、助言者の役目というものだ……
……ゲールマンの狩りを知るがいい
最初の狩人
その意外とも言える正体は、Bloodborneにおけるラスボスの一体。
最初の狩人、ゲールマン
草臥れ、疲れ果てた老人の姿はそこになく、あるのは年老いて、片足を失って、そして存在が朧気になりながらなお、その強さに微塵の衰えもない最初の狩人。優しげな声から、力強い威圧感を持つものへと変わり、まるで別人のようにさえ思える。
時計塔のマリアら最古の狩人達の師にして、最初のという事から分かる通り、狩人達の祖となった存在。狩人が速度を重視して、軽装であるのは彼の戦闘スタイルが源流にあるからであり、Bloodborneにおける最重要人物といって過言ではない。
彼の狩装束とは日常の物を調整した、本当に初期の格好であり、その手に握られた工房の仕掛け武器の原点にしてマスターピース、星に由来する隕鉄の刃を持つ「葬送の刃」は大鎌と曲剣に変形するシンプルな仕掛け武器。初期型と思われしき散弾銃と共に狩人へ牙を剥くそれは、最初の狩人という肩書きが伊達で無い事を教えてくれる。
ゲールマンは人型ボスであり、パリィが有効ではあるが、ラスボスの名にふさわしい火力を持ち、狩人特有の高速戦闘を更に尖らせたような高速戦闘を仕掛けてくる。それはプレイヤーキャラの比ではなく、大鎌を軽々と振り回し、格ゲーじみた踏み込みからの曲剣による斬撃など、別会社のゲームじゃないんだろうかという程にスタイリッシュに動き回る。右足が義足故に、走る事は出来なく、せいぜいが早歩き程度だが、軽快なステップとローリングの前には、些細な障害にもならない。むしろその遅さが、逆に一種のトラップのようなもの。
大鎌形態は一撃が重く、しかし速度も距離も併せ持つ。溜め攻撃は最初のモーションこそ同一だが、そこから派生する多彩な攻撃故に見切るのが厄介。しかし銃撃を差し込み易く、また死ななければ立て直す事も容易である為、慣れてしまえば問題は事故のみである。
体力が75%を切ると曲剣に変形させ、その左腕に散弾銃を握る。この形態は手数が多く、また深く踏み込み距離を詰めてから攻撃してくる事が多く、銃撃をしようとタイミングをうかがっているとバッサリ斬られる事も多々。だか踏み込みさえ注意してしまえば回避は問題ない。
しかし真に気を付けるべきは散弾銃で、斬撃から逃れて立て直そうとしたところに散弾の追い打ちや、散弾による牽制からのコンボなど、ダメージこそ微々たるものだが要所要所でこちらを焦らせる。もちろん散弾特有の怯みと共にリゲインゲージを消し飛ばされるので、リゲイン狙いで輸血液を温存しようものなら、そのまま死に繋がり兼ねない。
体力が50%を切ると、咆哮と共に青白いオーラを纏う。この状態は「古い狩人の遺骨」を使ったプレイヤーと同じく、ゲールマンのステップとローリングの速度と距離が上がり、また常時スーパーアーマー状態となる。加えて武器を自由に変形させ、変形攻撃が追加され、銃には強制パリィ状態にさせる単発を放つ、空中に飛び上がり時間差で衝撃波が地を薙ぎ払う技や、広範囲の爆発攻撃を使う。火力もステップ性能も上昇しており、行動はさほど変わらないが油断を許さない。ここまで来ると別ゲー感も大きいが、しかしBloodborneらしさを決して失っていない辺り、良く出来たボスと言えよう。
ゲールマンの多彩な猛攻は凄まじく、防戦一方では狩られるだけ。ここで求められるは、その猛攻を掻い潜り、こちらも一撃一撃を重ねていくことである。このBloodborneの戦闘の基本である、回避と攻撃の両立こそ、ゲールマン撃破のカギだ。
しかし幸い防御力は低い為、畳み掛けるチャンスを逃さなければ、ゲールマンに殺られる前に、倒す事ができるだろう。
ゲールマンの戦闘曲「The First Hunter」はBloodborneでも唯一の、静かな曲。ここまでおぞましい曲のオンパレードだった今作の中でも、それ故に目立つ鎮魂歌のような音楽であり、白い花畑での戦闘と、ゲールマンの刃と共に舞う花弁は、宇宙的恐怖や醜い獣、狩人の成れの果てなどを狩り続けてきたプレイヤー達にとって、最後まで人であり続けた最初の狩人の姿と共に、印象深い事に違いない。
全て、長い夜の夢だったよ……
獣狩りの夜、再び
介錯を拒み、ゲールマンを倒した狩人は、赤く染まった月から異形の魔物が降り立つのを目撃する。それは狩人へと近付き、我が子を迎え入れるように抱き締める。
画面は暗転し、車椅子を押す人形の姿と、そしてゲールマン同様に車椅子に座った狩人の姿が。
そして人形は静かに告げる、また獣狩りの夜が始まると。
つまりこれは狩人の夢の真の支配者によって、ゲールマンの後を継がされてしまったエンディング。だがエンディング名は「遺志を継ぐもの」であり、前記のゲールマンの寝言などから察するに、ゲールマンを解放し、安らかに眠らせる事を狩人は求めたのではないだろうかとも解釈出来るが、そこは受け手次第であろう。
なおこのエンディングで判明するのは獣狩りの夜がまた始まるという事であり、プレイヤーキャラは獣狩りの夜を、所詮一時的に終わらせただけに過ぎないこと、 ゲールマンの介錯とは、疲れ果ててなおプレイヤーら狩人を夢に捕らえさせない悲しい自己犠牲であったという、あまりにも恐るべき真実である。
彼を撃破する事で古びた狩人証を入手し、それでゲールマン装備一式と、葬送の刃がショップに追加される。葬送の刃のテキストからは、彼にとって狩りとは弔いであり、そこに快楽も研究もなく、獣となった哀れな命への、葬送の狩りだった事が読み取れる。
月より来る異形とは、ローレンス達の月の魔物「青ざめた血」。
これを超えるには、三本の三本目。
その果てに、新たな命が血より生まれ出ずるとしても。