曾祖父の遺産である家と畑を相続することになった主人公、実椋(みくら)は、25歳にして仕事を辞めてその家で暮らし、畑の収益で生活していくことを決意する。
だが、その辺り一帯には他とは違う特別な事情があり、引っ越し当日、実椋はその事情と相対することになる。
山を覆う『獣ヶ森』に住まう人々、人でも獣でもない不可思議な存在……『獣人』
人間社会から隔絶されたその森で生きる獣人達との日々を送ることになった実椋は、それも覚悟した上の相続だと前を向いて、無駄に前向きに獣ヶ森でのスローライフを送ることになるのだった。
概要
小説家になろうにて連載されているウェブ小説。著者はふーろう/風楼氏。
Cross Infinite Worldより英語版が書籍化されている(英題:So You Want to Live the Slow Life? A Guide to Life in the Beastly Wilds)。イラストは猫月ユキ氏が担当。
現代日本が舞台。ファンタジー要素は薄めで、主人公がどこか日本の片田舎を思わせる獣ヶ森と呼ばれる場所で獣人と交流し、のんびりとスローライフを送る日々の様子を描いている。
あらすじ
森谷 実椋(もりや みくら)は、亡くなった曾祖父の富保(とみやす)から相続した、森の中にある家と畑を訪れていた。
古民家であるそれは、富保が病気で危篤になってからは誰も来ていないはずなのだが、小奇麗に掃除されている。
畑を確認すればそちらもしっかり手入れがされており、不思議に思っていた実椋は、若い女性に出会った。
茶色の髪の上にちょこんと乗っかっている大きな耳に、その背中の後ろで揺れているシマリスを思わせる大きな尻尾。
彼女は獣と人の中間のような人間……獣でもあり人類でもある『獣人』なのだ。
驚いている実椋に女性は声をかける。
「お前も富保のように私達と契約してくれるのか?」」
登場人物
小説家になろう版 第一章までの主要な登場人物を紹介する。
人間
- 森谷 実椋(もりや みくら)
主人公。男性。25歳。亡くなった曾祖父である富保から、獣ヶ森にある家と畑を相続した。大手商社の総合職に勤めていたが退職し、僅かばかりの貯金をもって引っ越し、新生活を始める。
さっぱりとした性格で、商社に勤めていた経験から多少は商売事にも知識がある。
テチのことを真っすぐに美人だと褒める、恫喝まがいの契約を断るなど胆力のある一面も見せるが、動物の解体など現代社会では接する機会のないことは苦手。
畑を管理していくと同時に、趣味として燻製のような保存食作りに精を出す。
- 森谷 富保(もりや とみやす)
主人公の曽祖父。故人。獣ヶ森にある家と畑を管理していた。
まだ元気なころ実椋は何度も遊びに来ており、誰も相続したがらず親族で押し付け合っていた家や畑を受け継ぐ決意をする理由にもなった。
- 里衣良 青果(さといら せいか)
初老の男性。富保の取引先の一人。
農作物を買い叩いていたためテチからは蛇蝎のごとく嫌われている。
富保が亡くなり実椋が跡を継いだと知った後は、同様の契約を結ぼうと迫る。
獣人
- 栗柄 とかてち(くりから とかてち)
シマリスの獣人。女性。富保と契約して畑の栗やクルミの世話をしている。
周囲からはテチと呼ばれる。
ぶっきらぼうな物言いで男勝りだが、まっすぐで素直な性格をしており、富保の跡を継いだ実椋と新たに契約を結びなおすと同時に、獣ヶ森での生活の仕方などを色々と教えてくれるようになる。
化粧っ気はないが美人で、普段は農作業用の服を着ているがワンピースやドレスなどの可愛らしい女性用の衣服も良く似合うが、本人は自身を「可愛らしくない」と評している。
- 栗柄 あるれい(くりから あるれい)
シマリスの獣人。男性。テチの兄。
周囲からはレイと呼ばれる。
家族思いの優しく明るい性格で、テレビ番組などで見る人間のお菓子を食べたいという子どもたちのためにパティシエを目指し、本などで勉強して独学でお菓子作りを学んでいる。
その腕は確かで人間である実椋からしても美味しいと思えるほどなのだが、お菓子の蘊蓄を語るのが好きで、またお菓子の売上も設備投資に回してしまうためテチからは良い顔をされていない。
暴力沙汰は苦手で、畑にイノシシがやってきたときは対処をテチに任せて我先に逃げていた。
- コン
シマリスの獣人。人間で言うと5~6歳の子供で、テチらとは違いまだ獣そのものの姿をしている。
長音を多用した話し方をするヤンチャ盛りの子供といった感じで、実椋と仲良くなる。
用語
- 獣人
獣ヶ森に住む、獣と人の中間のような人間。
体格は人間のそれとほぼ同じで、幼少期は動物がそのまま人間の子供の大きさにしたような姿であり、大人になるにつれて人間に近い姿になる。
身体能力は人間のそれより非常に高く、3~4km先の人間の話声を聞き取れるほど視聴覚能力も優れている。
かつては人間と戦争していたが今は和解し、貿易を行っている。
そのため高齢者は差別意識があるが、テレビ番組などでは獣人が主人公のドラマやアニメが登場したり、獣人も人間の文化に高い関心があるなど、若い世代ではそういった感覚は薄れてきている。
- 獣ヶ森
日本国内にある獣人が住む自治区。
日本の法律が適用され通貨も円で日本語が使われており、wifiも通るし通販もできるのだが、法律上は外国扱いとなっている。
日本古来の自然が息づく緑豊かな場所で、電気や上下水道などのインフラ、自動車などの科学技術も取り入れられてはいるが、それを見事に調和させている(実椋曰く、「まるでファンタジーに出てくるエルフの都市のよう」)。
空気が澄んでおり土壌も肥えているため、獣ヶ森で採れる農作物や畜産物は大きい上に栄養豊富で美味であり、高値で取引されている。
中に入るには検問を通る必要があり、許可を持つ人間でなければ基本的に中に入ることはできず、武装した自衛隊が警備を担当している。
富保の持つ家と畑はちょうど獣ヶ森に突き入れるような形で存在しており、例外的に獣ヶ森にある日本国領土という取り扱いになっている。
関連タグ
領民0人スタートの辺境領主様:同作者の作品。こちらはファンタジー世界で行う領土開発の物語であり、獣人のほかにも森人や洞人といった種族が多数存在する。
牧場物語:作品の雰囲気や設定に近いゲーム。
StardewValley:同上。