概要
ドイツの哲学者ニーチェが1887年の著書「道徳の系譜」にて提唱した概念。ちなみに、ルサンチマンそのものはフランス語である。
ルサンチマンとは、弱者が強者に対して抱く「恨み」や「嫉妬心」であり、自覚・無自覚を問わず抱いている劣等感または不平等感から生まれる負の感情である。ただし、ルサンチマンを有する弱者は強者に敵わないことを理解しており、それ故にその負の感情を大々的に表に出すことはない。精々が陰口や皮肉を言う、強者を懲らしめる妄想を抱くなどに終止する。ただし、強者が弱者に転げ落ちたときはその限りではなく、普段では考えられないような過剰な反応を示すこともある。
元々はデンマークの思想家キルケゴールがこの感情を「強者の足手まといになる道徳観」として強者の立場から提唱したが、後にニーチェが弱者の立場から再定義し、「弱者の道徳観」とした。またキリスト教に懐疑的だったニーチェは、ローマ人に虐げられたユダヤ人のユダヤ教から生まれたキリスト教は、その根底にルサンチマンがあるのではないかとも考えていた。
一般的にこの弱者による「恨み」や「嫉妬心」など負の感情は悪しきものと捉えられがちだが、ニーチェはこれも人の本質の一つであるとし、そこから生まれる反骨心や向上心が人類を押し上げるものとして、肯定的にとらえている。