遠藤周作
えんどうしゅうさく
人物
小説家。東京生まれ。慶応大学仏文科卒。雅号は狐狸庵山人。山本健吉が定義した「第三の新人」の一人で、安岡章太郎や吉行淳之介らとは大きく作風が異なるが、若い頃は彼らと盛んに情報交換を取り交わしていたため、昨今ではそのグループに含むのが一般的。そして、第三の新人で圧倒的な知名度と実績を誇る戦後を代表する作家の一人である。
「白い人」で芥川賞受賞。その3年後に発表した『海と毒薬』で一躍時の人となる。
その後に発表した江戸鎖国時代の禁教政策とポルトガル宣教師を題材にした『沈黙』はその内容をめぐって物議を醸しだしたものの、三島由紀夫の『金閣寺』、大岡昇平の『野火』、安部公房の『砂の女』などとともに、今もなお戦後文学の最高傑作の一つと呼ばれ、ノーベル文学賞候補にもノミネートされた。他にも戦時中に実際に行われた人体実験をモチーフにした『海と毒薬』などがある。
敬虔なカトリック教徒としても知られ、日本人でありながら敬虔なクリスチャンである自分に疑問を抱き続けるなど、宗教的観念は氏の作品に常に描かれている共通の事項である。その一方で、『狐狸庵先生』(湖里庵という琵琶湖畔の料亭から。遠藤は鮒鮓が好物だった)と名乗りユーモアに溢れたエッセーや対談を数多く残す二面性があり、本人曰く躁鬱病で自分が行ったり来たりして、躁のときは明るい作品を、鬱のときは暗い作品を描いていたらしい。
芸術院会員。1995年、文化勲章受章。翌年に肺炎を併発し死去。
代表作
- 『白い人』(1955年)
- 『海と毒薬』(1958年)
- 『沈黙』(1966年)
- 『死海のほとり』(1973年)
- 『イエスの生涯』(1973年)
- 『侍』(1980年)
- 『深い河』(1993年)