M29
もでるにじゅうきゅう
概要
1956年にスミス&ウェッソン(S&W)社から発売された拳銃で44マグナム弾を使用する。当時「最強の拳銃」と謳われ、実際当時において44マグナム弾は最強の拳銃弾であった(44マグナム弾はそれ以前に「最強」の座にあった357マグナムをその座から引きずりおろす形でM29と共に登場している、このため登場当初は文字通り最強の銃である)。
歴史
1953年、当時のS&Wの社長、カール・ヘルストロムは高名なハンターにしてガンライターでもあったエルマー・キース(1899~1984)からある依頼を受けた。それは、「新しく考案したハイパワーカートリッジを使用するヘヴィデューティなハンティング用リボルバーを作ってほしい」というものであった。
キースが考案した新カートリッジというのは、S&Wが製造していたヘヴィデューティガンである44ハンドエジェクターに使用されていた44S&Wスペシャルを改良し、ケース長をのばしたものであった。もとの44スペシャルのマズルエナジーが456ジュールだったのに対し、この新型カートリッジのマズルエナジーは1405ジュールという桁違いのパワーを発揮するパフォーマンスを持っていた。
早速翌年には銃器・弾薬メーカーの大手であるレミントン社に新型カートリッジの設計図が持ち込まれ製品化された。この新しいハイパワーカートリッジにつけられた商品名が《44マグナム》であった。
1955年には44ハンドエジェクターをベースとしたプロトタイプが完成し、翌年S&Wはこのハイパワーハンドガンにプロダクツコード《M29》を与え製造・販売を開始した。
かくして鳴り物入りで登場したM29だが、登場当初は威力が高すぎると大不評であった。(本来は対人用ではなく狩猟用。)
が、当時の一部の警察官はその大口径と武骨なデザインに魅了され、自腹で購入し携帯していた者もいたようだ。
現在では同S&W社のM500に「最強の拳銃」の座を譲っている。
「最強の拳銃」のキャッチフレーズを世に広め、人気者に押し上げたのは、誰あろうハリー・キャラハンである。
(実はハリーは炸薬の量を減らした減装弾を使用していた事を映画『ダーティハリー2』で明かしている。)