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M29

もでるにじゅうきゅう

.44マグナム弾を使用するS&W社製の大口径リボルバーの代名詞の一つ。
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概要編集

1956年にアメリカのS&W社から発売された、.44マグナム弾を使用するリボルバー。

.44スペシャル弾を使用するM1950を原型とする。

発売当時、.44マグナム弾は最強の拳銃弾であった。


歴史編集

1953年、S&W社は高名なハンターで銃器のプロ、著述家であったエルマー・キース(Elmer_Keith)から、「自分が考案したハイパワーカートリッジを使用できる、ヘヴィデューティな狩猟用リボルバーを作ってほしい」という依頼を受けた。

1955年、キース考案の新カートリッジ「.44マグナム弾」専用フレームのプロトタイプが完成し、11月にはプロダクツコード「M29」を与え製造・販売を開始した。


鳴り物入りで登場したM29だが、当初売れ行きは不調であった。その理由は皮肉なことに「威力がありすぎる」ことだった。.44マグナム弾の反動は強烈で、手を擦り剥いて血が出ることから「ブラッディ・ハンド」なるあだ名がつけられる始末だった。


本来想定されていたユーザー(ハンター)からは「グリズリーなどの大型獣を確実に足止めできるハンドガン」として評価が高かったが、1956年、スターム・ルガー社が.44マグナム弾をシングルアクションで撃つリボルバー「スーパーブラックホーク」を販売し、市場競争でM29に勝利した。M29は高価なこともあって販売成績は伸び悩んだ。

※スターム・ルガー社の社屋はレミントン社と隣接していたことから、「.44マグナム弾の試作が行われていた頃、スターム・ルガーの社員がレミントン社のゴミ処理場から廃棄された試作カートリッジケースを拾って持ち帰り、スターム・ルガー社はいち早くスーパーブラックホークを市場に投入できた」、「スターム・ルガー社と内通するレミントン社員がサンプルを提供した」などと言った噂が流れた。


そんなM29の運命を劇的に転換させたのは、バイオレンス・アクション映画の巨匠、ドン・シーゲルがメガホンを取ったポリスアクションの金字塔『ダーティハリー』(1971年公開)であった。

クリント・イーストウッド演じるサンフランシスコ市警のはみだし刑事、ハリー・キャラハンが劇中使用した<長身のクリント・イーストウッドと比較しても>大型のM29は観客の度肝を抜き、一躍この銃をスターダムに押し上げたのである。

 

ダーティハリー

「I know what you are thinking. Did he fire six shots or only five? Well, to tell the truth, in all the excitement I’ve kind of lost track myself. But since this is a .44Magnum, the most powerful handgun in the world…and would blow your head clean off…you’ve got to ask yourself one question: Do I feel lucky? Well, do ya, punk?」

――てめえの考えてることは分かってるぜ。おれが6発撃ったか、それともまだ5発か、てことだろ? 実を言うとな、おれも夢中になって数えるのを忘れちまった。だが、こいつは.44マグナムといって世界一強力な拳銃なんだ。てめえのドタマなんざ一発でぶっ飛ぶぜ。自分に聞いてみな、ツキが残ってるかどうかをよ。さあどうする、チンピラ野郎?


この台詞とともに、それまで一部にしか知られていなかったM29と.44マグナム弾を、世間に広く知らしめた。


1983年公開の自身唯一のシリーズ監督作『ダーティハリー4』(Sudden Impact)に於いては

強盗が占拠した店にハリーが乗り込んだ際には、「お前らは俺達から決して逃げられない」「俺“達”って誰だよ?(強盗)」「スミスとウェッソンと俺だ」というやりとりも披露されている。



撮影用のM29はS&W社が特別に組み立て、テクニカルアドバイザーまでつけるという気合の入りようだった。

『ダーティハリー』を見た警察官の中には、M29を自腹で購入し携帯していた者もいたという。もちろん、護身用や警察用としては、明らかにオーバースペックである。

市場の熱狂はすさまじく、一時期は生産ラインが多すぎる受注に対処できない事態に陥った。


その後、.454Casull弾や.50AE弾など、さらに強力なカートリッジを使用するハンドガンが登場し、M29は「世界最強の拳銃」ではなくなったが、銃器史に名を残すレジェンドとなっている。


故・チャールズ・ブロンソン氏が当時、これに対抗してこの銃より威力の高いウィルディマグナムを自身の映画で使用したものの、こちらはさほど知名度が上がらずに終わったのは有名な話である。


パフォーマンスセンターのカスタムは内部に手を加えるだけでなく、ノンフルートシリンダーへの変更、銃身側面を削いでフラットにする、銃身下部に調整可能なバレルウェイトを入れるスペースがあるなどの専用の銃身を用いるなどの外見まで手を加えており、一見してM29とは見えない外見となっているものもある。


また、本体の素材をステンレスとしたアイノックスタイプのM629も作られている。


現在では通常の4インチのモデルとダーティハリー需要故か6.5インチモデルのみが販売されており、8インチと6インチモデルは廃盤になっている。



フィクションでの使用者編集

M29はダーティハリーでの活躍から、映画やTVドラマをはじめ、漫画・ゲームにも登場している。


  • トラヴィス・ビックル(タクシードライバー)- ダーティーハリーでの流行と重なった時期に作られた映画であり、違法なものを扱うセールスマンから購入して使用する。今作に登場するのは8インチモデルであり、劇中ではそれほど撃ってないにもかかわらず、舐めまわすようなカメラアングルで執拗に映される上、当時としては珍しいエンタメ映画的ではない、着弾した際に手が生々しくぐちゃぐちゃに吹き飛ぶリアルな威力の表現から強い印象を残し、こちらのモデルもファンには根強い人気がある。
  • 滝隆一(太陽にほえろ!)-当初はコルトローマンの2インチ(MGC製モデルガンがベース)を使用していたが、後期ではM29の6インチモデル(MGC製モデルガンがベース)を使用。
  • 澤村誠(太陽にほえろ!)-6インチモデルと射撃競技用に銃身を変更したPPCモデル(MGC製モデルガンがベース)を使用。
  • 牧野次郎(大都会パートⅢ)-8インチモデル(MGC製モデルガンがベースで、発火用は電気着火式)を使用。
  • 松田猛(西部警察)-前作に引き続き8インチモデル(MGC製モデルガンがベースで、発火用は電気着火式)を使用。
  • 沖田五郎(西部警察)-当初はPPCモデル(MGC製モデルガンがベースで、発火用は電気着火式)とバックアップ用にM36の2インチ(CMC製のモデルガンがベース)を使用していたが、後期はコルトパイソンの4インチ(此方もMGC製モデルガンがベース)を使用。
  • 山県新之助(西部警察)-前述の沖田から引き継いだカタチでPPCモデル(MGC製モデルガンがベースで、発火用は電気着火式)を使用。
  • 町田透(あぶない刑事)-TVシリーズ後期~劇場版第3作にかけて4インチモデル(MGC製モデルガンがベース)を使用。
  • 小池柾(ベイシティ刑事)-M629の銃身を2.5インチに短縮したカスタムモデル(MGC製モデルガンがベースだが、コクサイ製モデルガンがベースのものも確認できる)を使用。
  • 伊集院隼人(シティーハンター)- 海坊主こと伊集院が扱うリボルバーがこのM29であるが、これは主人公・冴羽獠の扱うコルトパイソンへの対抗とされる。
  • 中川圭一(こちら葛飾区亀有公園前派出所) - 連載第1回からM29を使用
  • ジル・バレンタイン(バイオハザード3)- 初代PS版ではアイノックスタイプのM629を使用。ただし、リメイク版ではライトニングホークに変更された。


関連タグ編集

S&W 44マグナム .44マグナム ダーティハリー

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