Elmer_Keith
えるまーきーす
元はアイダホの牧場主だったが、牧場を手放して以降は
ユタ州オグデンの米軍工廠で軍用ライフルの検査官としても勤めた経歴がある。
様々な仕事に携わる傍ら、銃及び弾薬の改良に関連した話題を
銃器専門誌へ寄稿する作家としても有名であり、晩年まで精力的に活動していた。
ステットソンのテンガロンと葉巻がトレードマーク。
彼の大きな功績として、拳銃用マグナム弾薬の開発が挙げられる。
キースが銃に関わる活動を始めた1920年代、無煙火薬のリボルバー弾薬こそ
市場では一般化していたものの、弾薬の設計、銃の設計自体は
黒色火薬時代の設計を引き摺った物が多く、無駄も多かった。
若い頃より、拳銃によるハンティングを趣味としていたキースは、
当時の米国内で主流であった.45口径のよりも、.30マウザー等の小口径高速弾薬に
可能性と魅力を見出し、個人的に.38口径拳銃弾薬をベースにした
ハイパワーカートリッジの試作と、それを発射できる銃の改造を行っていた。
この経験が、後の傑作ハイパワーカートリッジ誕生の礎となる。
.357マグナム
最初の作品は、1934年に開発された対ギャング用警察拳銃向け弾薬である.357マグナム。
ギャング達に人気のあったコルト社の.38スーパーへの対抗と、
バリケードとなる車のドアを打ち抜いてなお、
ドアの先の対象を殺傷できうる能力を求めて開発された。
自作の.38口径ハンティング用リローディング弾のデータを元に設計されており、
弾頭デザインにも自己のアイデアがふんだんに盛り込まれている。
また、当時市場に溢れていた強度不足の旧い.38口径拳銃に装填できないように
後方互換性をなくすための薬莢延長が行われ、安全面への配慮も行われている。
.44マグナム
.357マグナムの開発とほぼ同じ流れでデザインされている。
ハンドガン・ハンティングやフィールドでの護身用途として
熊を殺傷できるミニマムのパワーを目指し、1956年に完成した。
開発当初は.45をマグナム弾化することも検討されていた。
しかし、改造したSAAを用いて行った実験において、
当時の製法・設計の肉薄シリンダーでは
.45口径マグナムの安全な発射がほぼ不可能であると判り、
一回りサイズを落とした44口径をベースに開発することを決め、
自作の.44SPLのリローディング弾データーをベースに開発された。
これにもS&W社が大きく関わっており、前回と同じような形でM29が開発された。
開発の際、.44SPLのテストベットとしてElmer No.5が用いられており、
スタームルガー・ブラックホークのデザインに多大なる影響を与えている。
映画「ダーティ・ハリー」での印象的な活躍によって一般層にも一躍人気を博し、
遥かに高威力の拳銃弾が開発された今日においてもある程度の人気を保っている。