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コルト社の製品の一つ。回転式拳銃(リボルバー)。


※ゲーム「ドールズフロントライン」に登場するキャラクターについてはコルトSAA(ドールズフロントライン)を参照。


概要編集

1872年にアメリカ合衆国コルト・ファイヤーアームズにより開発され、1873年、M1873(モデル1873)として米陸軍に採用されたセンターファイア式金属薬莢使用のソリッドフレーム・リボルバーである。1875年より民間への販売が開始された。

コルトSAAピースメイカー

SAA(Single Action Army)、ピースメーカー、人々を平等にする力(装置)としての意を込めて「イコライザー」、構造と装弾数をもじって「シックスシューター」や「シングルシックス」とも呼ばれる。

名前に”アーミー”と付くが陸軍専用と言う意味ではなく、1860年発売の.44口径リボルバー「アーミー」に倣ったもの。


開発ヒストリー編集

他社に先駆けてリボルバーを発売したものの、強度面に於いてレミントン社、金属薬莢専用設計に於いてS&W社の後塵を拝する形だった。

金属薬莢と前後貫通シリンダーを使ったリボルバーは、コルト社の従業員ローリン・ホワイトが開発したが、当時は金属薬莢の強度に問題があったため、サミュエル・コルトによって「使えないもの」として却下され、ホワイトはコルト社を退社して1855年に特許を取り、1856年に特許の独占使用権をS&W社に与えていた。

コルト社でも1860年代には金属薬莢に対応した設計が出来上がっていたが、貫通シリンダーがホワイトの特許のため使用できなかった。コルト社は特許料を払うのを惜しみ、ボートテイル状の前装薬莢を代用としながら、特許が失効する1869年まで待った。


デザイン編集

1871年にC・B・リチャードとW・メイスンがデザインした。

ローディングゲート、エジェクター機構を中心とするメタルケース・コンバージョン関連の特許を利用している。

外形デザイン編集

レミントン社の強固なフレームデザインに倣い、オープントップ・前後分離型のフレームを廃止し、背骨となるフレームトップを有する銃身と機関部が一体のソリッドフレームとされ、機関部の強度が大幅に向上している。

構造概念はオープントップ・モデルの最終形態である1872を踏襲したデザインであるものの、外観の一体感が図られたデザインへと進化している。

グリップフレームのデザインはドラグーンの系譜を継承した形であり、角丸長方形ラウンドタイプのトリガーガードが付属する。

機関部の構造とデザイン編集

撃発機構に関連した機関部のデザインはウォーカー、ドラグーン時代とほぼ同一のレイアウトで、ハンマーがセンターファイアに対応した撃針の付属した形態になっている。

寸法の類似する1851NAVY以降のパーカッションリボルバーの場合、スプリングなど一部の部品が流用できることもある。

前から見て銃身左下にはエジェクター・ロッドが備えられ、ハンマーをハーフコック・ポジションにすることでシリンダーのロックを解除し、ローディングゲートよりエジェクター・ロッドで空薬莢を押し出して排莢する構造となっている。

ハンマースクリューを延長することでグリップにストックを取り付けるモデルや、バックストラップ自体をストックに置き換えたカービンモデルも少数存在する。

後年にはバック・ストラップに固定用の溝を掘り、そこへストックを固定するモデルも登場している。


シリンダーがフレームに固定され、装填・排莢口が一つしかない為、再装填に時間がかかるのが欠点である。初期のSAAはシリンダーの軸(ベースピン)がネジで固定されており、迅速な排莢はほぼ不可能であった。

無煙火薬が一般化しつつある1890年前期に、ベースピン・ストップ・スクリューを、押しボタン構造の横配置にして、工具を使わずシリンダーを着脱できるモデルが製造されたが、戦闘用としてみた場合、シリンダーをはずしての再装填は非現実的である。

「替えシリンダー」で連続射撃が可能という俗説があるが、シリンダーと銃身、シリンダーストップの位置較正作業を行わないとオーバーランやフォーシングコーンへの過負荷などの危険性が高まるため、非常に怪しい。

SAA時代の終わり編集

コルト社は1889年にW・メイスンの特許によるスイングアウト・リボルバーModel1889(.38口径)を実用化したため、構造の陳腐化が顕在化した。

1892年、後継となる.38LC弾を使用するダブルアクション・アーミー(コルトM1892)に制式採用拳銃の座を明け渡す。


1898年の米西戦争でのフィリピン出兵時、薬物を使用し興奮状態のモロ族に対しSAAの大口径弾の打撃力が有効という事例もあったが、連発銃の進化が著しい当時に於いては時代遅れであり、スイングアウト構造で大口径弾を発射できるS&W社製リボルバーや、自動拳銃の軍事用途レベルでの信頼性を獲得したM1911が決定打となり、軍用・警察用拳銃としての役目は終わった。

その後編集

現在もSAAはホビー用・コレクション用として、スポット生産が行われている。1950年代のウエスタンブームで大流行した早撃ち等のカウボーイ・シューティングの確立によって一定の市場を獲得した。

照準器編集

照準器はフロントが背の高いブレード、リアが1st前中期でVノッチ、それ以降がスクウェアノッチであるが、特注品や軍再生品等のイレギュラーも多数存在する為、明確に区切るのは不可能といわれている。

後年の照準期と比べると粗末な作りではあるが、オープントップ時代のリアサイトがハンマーに設けられたVノッチであることと比較するならば、大きな進歩と言える。

銃身バリエーション編集

口径は.45のほか、.44、.38などのバリエーションが有る。

銃身長で様々な呼称があるが、当初製造(1873年)は7 1/2インチ軍用モデルのみであり、当時より現存しているSAAの大半も7 1/2インチや軍再生品の5 1/2インチが多い。アーティラリー(5 1/2)と言った銃身バリエーションは民間での発売(1875年)以降作られた物であり、有名なシビリアン(4 1/2) は1879年から製造されている。

アーティラリー、キャバルリー、シビリアンといった呼称は後付けの便宜的な呼称であり、アメリカでは意味が伝わらないこともある。

特注品編集

バントライン・スペシャル編集

西部劇作家ネッド・バントラインが特注して5挺のみ製造された長銃身型は、「バントライン・スペシャル」と呼ばれ、12インチの銃身を持つ。

ワイアット・アープに寄贈されたバントライン・スペシャルのみ16インチ銃身だったとされるが、製造記録はコルト社には無く、バントラインによる創作という説が一般的である。

ビズリーモデル編集

無煙火薬化以降のモデルにおいて、独特のキャラクターを持つモデルとしてビズリー(ビズレー)モデルがある。英国のビズリー射撃競技会に向けたハイ・グリップスタイルの所謂ターゲットモデルであり、口径は英国で主流だった.455ELEYが主となる。

他の口径バリエーションも存在するものの、個別オーダーで作られたものが殆どで製造記録に残るほど少数の生産にとどまっている。微調整が可能なブレード式照準を搭載したフラットトップモデルも存在する。

他社による現代派生型と大口径での復活編集

現在はコルト社のSAAに関する特許が既に失効しているため、品質と低価格を両立したSAAコピーとして、イタリアのウベルティ社製やUSファイアアームズ社製などが人気を集めている。

SAAのソリッドフレーム設計は強力な拳銃弾薬に最適なプラットホームでもあり、ほぼ同じデザインで大口径のモデル製造されている。PL法があるため、トランスファー・ハンマー等で安全性を高めた物が多い。

スターム ルガー社編集

口径バリエーションが多く、記念モデルも豊富。


ブラックホーク

SAAの基本デザインを元に.357マグナム弾仕様に改設計したソリッドフレーム・リボルバー。SAAよりもフレームが肉厚で、.357マグナム弾に対応した強度を持つ。


●スーパーブラックホーク

ブラックホークをスケールアップして.44マグナム弾仕様としたもの。レトロなスクウェア・トリガー・ガードが特徴で、人気を呼んだ。

ユーザーの不注意に起因した暴発事故により、製造者責任裁判を起こされて敗訴。現代ソリッドフレーム・リボルバーの多くにトランスファー・ハンマーが導入される契機にもなった。


●バケロ

ブラックホークをSAAの形にシェイプした復刻モデルで、.357マグナム弾や.45LC弾を使用する。

バッケェロやバッキャロ、バクエロなど、呼び方が定まらないが、スペイン語でカウボーイ(Vaquero)の意。


フリーダムアームズ社編集

.454Casull弾のリボルバーで一躍有名になった。


●モデル83

.500WE弾から.22LR弾までの使用弾薬のバリエーションがある。

スーパーブラックホークよりも更に頑丈な設計。フレーム各部を極限まで肉厚にし、.40口径以上のモデルでは弾数を5発に減らし、シリンダーの肉厚を稼いでいる。

●モデル97

.45LC弾から.17HMR弾までの使用弾薬のバリエーションがある。上位モデル。


創作におけるSAA編集

1950~60年代のマカロニウエスタンブームが火付け役となり、ゲーム、漫画、アニメ等で「伝説的に」引き合いに出されることが多く、西部劇題材のものではほぼ必ず出てくるが、考証に拘った作品以外では、西部開拓が終了以降に製造された2nd~4thモデルのシビリアン(4 1/2)や、レミントン製のM1875が登場することが多い。

2nd以降のモデルガンが一般的な日本国内の作品では特に顕著で、20世紀以降生産のものが用いられていたりする。

西部開拓時代の貧乏な一般市民の間では、高価なSAAよりも、パーカッション・リボルバーを金属薬莢仕様に転換したものや、パーカッション・リボルバーをそのまま使用することが多かったと言われている。

フィクションに於けるSAA使用者編集

オセロットリボルバー・オセロット MGSシリーズより)

Revolver Ocelot

SAAを「世界で最も高貴な銃だ」と評する。

当初はマカロフ自動拳銃を使用していたが、覚えたての技術を使用した際にジャムを起こしてしまう。ネイキッド・スネークから肘で反動を逃がす癖はリボルバーが適していると諭されたこともあり、リボルバーに持ち替えた。

西部劇マニアであり、戦闘の最中、一発ずつ行うリロードの瞬間に得難い興奮を感じるらしく、SAAの虜になっている。

「戦闘中のリロードがたまらない!」「マグチェンジでは到底味わえない緊張感」「俺のリロードは革命的(レボリューション)だ!」などの迷台詞を残す。

MGS4ではリキッド・スネーク乗っ取られたからか、リボルバーは使わずシングルショット・ピストルのラプター(THOR .45-70)を使用した。


ホープ・エマーソンPEACEMAKERより)

霍普.艾瑪森

幼い頃からガン・ショーを行う旅芸人一座の一員として各地を巡り、一座が壊滅した後、父・ピースの形見の翼のエングレーブ(彫金)が施されたSAA「ホワイトウィング」を渡すため、兄・コールを探して旅を続ける。

父から受け継いだ様々な射撃技術を会得しているが、父の遺言「平和を作れ」に従い、自分が撃つのは「人の皮を被った悪魔だけ」を信条とする。 Wikipedia:PEACE_MAKER_(皆川亮二)


関連タグ編集

拳銃 リボルバー コルト・ファイヤーアームズ SAA

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