解説
テレビ朝日系列の水曜21時台(ただし本作放送時点において一部系列局では放送日時差し替え)に設けられている、東映(=東映テレビ・プロダクション)制作の刑事ドラマ枠(水9)にて放送されたテレビドラマ(刑事ドラマ・アクションドラマ)の一つ。
1987年10月から1988年3月にかけて、テレビ朝日系列局ほかにて全24話が制作・放送された。藤竜也・世良公則のダブル主演。
2つのエリート捜査隊の流れをくむ形で同年4月より設定された水曜21時台の刑事ドラマ枠の第2弾として作られたもので、「2つのチームが捜査を行うのはいいが、はっきり言って足を引っ張り合っていた」というお粗末な内容であった前作『大都会25時』とは打って変わって、神奈川県警察港町警察署捜査課別動班に放り込まれたはみ出し者3人と、それを放置している直属の上司が横浜を舞台に大暴れする内容で、ガンアクションを中心としたアクションを重視していた、言わば「あぶない刑事」の勢いに乗っかろうとした作品。
時節的にも「刑事ドラマ」のジャンル自体の著しい弱体化に加え「ニュースセンター9時」(NHK総合)と「夜のヒットスタジオDELUXE」(フジテレビ系列局、ただし一部系列局除く、また22時台にも放送)との視聴率争いの中で埋没、もっと悪い事に日本テレビやTBSも水曜21時台をドラマ枠としていたばっかりに、この2局と少ないパイの奪い合いとなってしまい、結果1シーズンのみの放送に留まった。後継番組が18シーズン・約20年にわたって制作・放送されたのとは対照的であった。
とは言え、本作をきっかけに世良を主演に据え、よりガンアクション演出に重きを置いたVシネマ『クライムハンター』三部作が、本作の脚本家の一人である大川俊道を中心に企画・制作されており、同作の成功が1990年代前半のオリジナルビデオ市場の活況化を生むなど、本作の果たした意義は必ずしも小さいものではないとも言える。
主な登場人物
- 小池柾(演:藤竜也、メインイラストの人物)
酒とジャズをこよなく愛し、英語と中国語を使いこなし、マリンスポーツを嗜む一方で、おネエちゃんにだらしがないオヤジ(しかもバツありと言うから救い様が無い)。
アメリカのガンメーカーであるスミス&ウェッソン社のM29(ダーティー・ハリー曰く「この銃は、世界一強力な44マグナムだ。お前の頭なんかきれいに吹き飛ばせる。」でおなじみの、本来は狩猟用を想定した.44マグナム弾を使用する銃)をベースとしたセンチネルアームズ・カスタム (銃身を2.5インチに切り詰めスナブノーズ化し、更にマグナポートを設けるといった改造が施されている。外観色はシルバーだが、ベースはあくまでスチール製のM29であり、ステンレス製のM629ではない、らしい) で、この拳銃には「ジョン」の愛称が付けられている。
- 星野秀夫(演:世良公則)
暴走族の総長あがりという、小池とはまた違ったベクトルでヤバい人物。
転職誌を愛読し、刑事稼業から足を洗おうと考えてばかりいるが、事件を解決してコロッと忘れては、また事件に遭遇しては転職誌を読みふけるという、学習能力にやや欠ける人物。
こちらもアメリカのガンメーカーであるコルト・ファイアーアームズ社のオートマチック拳銃であるコルト M1911(日本では官給品を意味するガバメントという通称が有名だが、米国では1911=ナインティーンイレブンと呼ぶのが一般的らしい)を愛用している。こちらの愛称は「マギー」。
撮影に使用されたプロップガンは、コルト社M1911 (1911はパテントが失効している一方で米国では安定した人気を持つ定番のモデルとあって、本家のコルト社以外からも多数のクローン1911がリリースされている) の最上級モデルであるゴールドカップ・ナショナルマッチ (競技用として高精度に作られたモデル)のモデルガン (MGC製)にガンエフェクトを担当した納富貴久男氏がガンマニアとしても有名な演者の世良公則氏の要望を取り入れつつ、カスタムパーツ(リアサイトにボーマー・サイト、セーフティ機構を殺したビーバーテールグリップセーフティ、フィンガーチャンネルが目を引くロジャース製カスタムグリップ etc.)を組み込んで仕上げた物で、前述のセンチネルアームズ・カスタムとは異なり、実在するカスタムガンを模したわけではない (とはいえ、近代の1911はクローンも含め、マギーに似た外見のモデルが一般的で、外見だけでいえば実在するモデルといって差し支えないかも)。
余談だがコルト・ガバメント (コルト M1911) は実際に日本の警察でも採用されたことがあった。
- 河合あゆみ(演:石川秀美)
港町警察署少年課から捜査課別動班に移ってきた女刑事(見習い)。事件捜査では男勝りな暴れっぷりを見せる一方で、別動班の部屋で平気でおやつを食べてしまうと言う、かわいらしいけど刑事としてはどうなのよ!?と突っ込みたくなる行動を取ることもしばしば。
元々はスミス&ウェッソン社のM36(またの名をチ-フ・スペシャル)を携帯していたが、後にドイツのガンメーカーであるカール・ヴァルター社のワルサーPPK/S (当初はブラックモデルだが、最終的にシルバーモデルへと変更) に切り替えている。一応、ケンタロウという愛称が設定されているが、劇中、その愛称を呼ぶ、もしくは呼ばれる機会はなかった (主役の二人に比較すれば発砲シーンが少ない上、使用銃が3度も変更されたせいか、愛銃という要素が薄かったのも影響しているか)。
ちなみにPPK/SはPPKより大型のPPフレームにPPKのスライドを組み合わせたPPKの派生モデルである。
なお、ワルサーPPKは警視庁のSPや皇宮警察の携帯用拳銃として長年使用された。
- 山崎末彦(演:いかりや長介)
港町警察署捜査課別動班の牢名ぬ・・・・ゲフンゲフン、もとい、リーダー。
嫁と2人の子供を抱える。
どこぞの警察署のベテラン刑事とは別のベクトルで喰えないおじさん、なんてな。
スミス&ウェッソン社のリボルバー拳銃のひとつであるM686を携帯することがある。
いかりやは同年放送の『独眼竜政宗』(NHK総合)に続いての連続ドラマへのレギュラー出演であり、民放ドラマとしては本作が初レギュラー作品でもある。
余談
暴れん坊の手綱を捌いた2人の男と別動班を嫌った男
セミレギュラーで別動班を嫌っていた港町警察署捜査課・課長=桜井浩一を演じた神山繁には、意外な秘密があった。それは同じ神奈川県警の所轄にて、小池&星野と同等な暴れん坊の手綱を捌いていた近藤卓造課長(演・中条静夫)とは「危険を承知で買う男」で知られる警備保障会社で一緒に働いていた。
オマージュ的なキャスティングと言えるが、山崎班長のいかりやの経歴を見ても指揮を執るにも嫌うにも「やるなら過酷非情な修羅場をくぐった猛者でなければダメ」という典型的な見本と言えた。
2つのエリート特捜隊の流れ…。
今も「特撮機動捜査隊」・「特撮最前線」と言われながらも、逆に再放送やソフト化で新たなファン層を築いてきた伝統枠…。
これも例外ではなく、メイン格では藤と神山らは怪獣映画の出演経験があった。また神山演ずる桜井の部下で工藤を演じた市山登は、『特捜ロボジャンパーソン』・『超光戦士シャンゼリオン』に出ていた。
またゲスト出演者にも特撮経験者が多く、世良に縁のあった又野誠治は2度も出た者もいた。
車輛も系譜的にも日産車が多く、メインでもセドリックを使用し後にフェアレディZも導入された。また別の所轄に使われたハイソカーが、色違いな別の車として出たことがあった。
ああ兇悪!さらば!!ベイシティ刑事の戦士たち 大爆破0秒前!別動班・最後の事件
ある日、謀略同然に別動班の解散が決まり全員に左遷扱いの異動が内示発表された。班にしんみりムードが漂う港町署・管内に、殺し屋部隊による殺人事件が起きる。だが思わぬ誤算により、事態は思わぬ方向に…。
その理不尽で不条理な最終回は、1人の男の無念の過去があった。
本作の本社側のプロデューサーに、加藤貢プロデューサーが参加していた。加藤はかつて特撮ヒーローものの『イナズマン』2部作を、東映特撮ヒーロー路線のヒットメーカーだった平山亨プロデューサーと合同でプロデュースしていた。だが多忙だった平山は、いつしか新人の加藤に任せ監修的な立場になった。若かった加藤は同じく若いスタッフの才能を活かしたハードなドラマ展開を築き、独自の世界観で「親御さんや大きいお友だち」…中高生や大人の鑑賞にも耐えられる作品を出し今も高評価を得ている。
だが『イナズマンF』の終盤から申請試写等で本社上層部に睨まれ出し、ついにチーフでありながら放任して加藤に全権を一任していた平山は大目玉を喰らう。一方の加藤は「すべてを無にしよう」と暗いグランドフィナーレを構想していたが、それを知った平山はついに加藤らを叱責。ついに加藤は折れ、この案は没になった…。
だが、加藤は諦めなかった。
おそらく加藤は、本作の世界観に「これなら使える。あの雪辱を晴らそう!!」と思ったのだろう。「この手があるんだが…」とこの没案を提示したのか、ついに「すべてを無にするグランドフィナーレ」を決行。それが、先の『非情のライセンス』にも通じた理不尽・不条理な最終回になったのだ…。
先の件は平山の叱責と加藤の折れにより「正しい苦渋の英断」だったが、この場合は加藤の悲願にして本作の世界観にふさわしい「すべてを無にした静かなグランドフィナーレ」だった。
それでも東京の無防備都市事件や、神山も出て話のパターンの大半が活用された警察庁・外事課の特捜隊の横浜ドリームランド事件をモチーフにしたりと「てんこ盛りな男達のラストショー!」な最後の事件だった…。
関連タグ
あぶない刑事:言わずと知れたアクション刑事ドラマの人気シリーズ。
近い時期に日本テレビ系列局ほかにて放送された、横浜を舞台にはみ出し者の刑事たちが活躍するコメディテイストのバディもの。一部のスタッフも本作と共通している。制作は東映系列企業にして、映像制作事業から一部撤退したセントラル・アーツ。
大追跡、プロハンター:やはり横浜を舞台とし、日本テレビ系列局(ほか)にて放送されたバディもののアクションドラマ(厳密には大追跡の方はバディものではなく、太陽にほえろ!などに見られる個性的な刑事たちによる群像劇スタイル)。
制作会社こそ異なる(前者は東宝・国際放映、後者はセントラル・アーツ)もののいずれも藤竜也が主演(プロハンターは草刈正雄とのダブル主演、大追跡については番組的に主演は加山雄三だが、物語上での実質的な主役は藤竜也だった。ちなみに、大追跡はあぶない刑事で舘ひろしとダブル主演をつとめる柴田恭兵のTVドラマ初レギュラー作品。プロハンターにも引き続き出演しており、両者とも柴田の演じたキャラクターは名前が違うだけで、性格や行動などは後に大ブレイク作となるあぶない刑事の大下勇次も含めてほぼ同じキャラクターといって過言ではなかった)を務めており、本作同様の出演者によるアドリブやコメディテイストが売りであった。
北方謙三:日本の小説家。第19話「復讐…」にゲスト出演