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概要

名称

漢字表記は赤手蟹。

属名Chiromantesは、「chiro」はギリシャ語で「手」、「mantes」は「占い師」を意味し、鉗脚を構えた姿を占い師に譬えたものと思われる。

(余談だが、カマキリの英名Mantisも語源は同じ)

種小名haematocheirギリシャ語で「血の色(のように赤い)手の」という意味。

英名はRed-clawed Crab。

漢名は紅螯蟹、紅螯蟷臂蟹(学名の直訳と思われる)など。

形態

歩脚を広げた状態(さしわたし・レッグスパン)では12㎝以上になる。基本的には雄が雌よりも大きい。

体色は灰色みが強い緑褐色が基色で、頭胸甲の前縁部が黄色、鉗が赤色で指部が白色というものが一般的だが、頭胸甲全域や指部までもが赤いものや、全身が燻んだ茶褐色のもの、一般的な体色を呈するが指部が著しく黄色く染まるものまでと、個体差はかなり激しく、棲息環境や餌資源など後天的に変化したと思われる事例も知られている。いずれの場合も、老成した雄個体が色合いが派手で、雌や若い個体は淡く地味である場合が多い。

頭胸甲は全体的に滑らかで光沢を有する。額は広く隆起は目立たない。眼窩外歯の後方側縁は歯を持たず、互いに平行である。胃域と心域との縫合線(H溝)が明確で赤く染まることが多い。鰓域上の隆起線も目立たない。

鉗脚は左右同大で、雄成体のそれは雌成体と比して太く大型化する。可動指は内側に彎曲し、上面に顆粒列は無く平滑。掌部外面も平滑で上面に櫛状歯列を持たない。

歩脚の前節及び腕節には剛毛が生じる。

生態

河川下流域から河口域付近の河川敷土手で見られることが多い。海岸近くの森林草地民家庭先でも、本体と共に巣穴もよく見つかり、用水路の割れ目や石垣の隙間に身を隠していることもある。遡上能力・登攀能力はかなり高く、河口から河川に沿って20㎞以上遡った地域で見つかることや、標高100m近い場所で見つかること、あるいは河畔林の樹上で見つかることも稀ではない。

基本的には夜行性で、薄暮時から日付が変わる頃に掛けてが特に活発になるが、曇天時や雨天時、日当たりが悪い林床部では日中に活動することも少なくない(特に若い個体)。

食性は雑食性で、主食は落ち葉植物種子だが、有機物であれば大抵のものは食べる。打ち上がったや干涸らびたミミズも食べれば、残飯生ゴミに集っていることも珍しくない。分解者の性質がやや強いが、捕食者の性質もあり、俊敏なゴキブリフナムシ同種の小型個体などを捕らえることもある。


日本での繁殖期(抱卵期)は6月から9月。交尾自体はその1~2ヶ月ほど前に行われる。特に太平洋側では雌は大潮の夜に、や河口に大挙して集まる(ごく狭い範囲に数千~数十万匹が集まるということも珍しくなく、道がカニで埋め尽くされていることさえある)。日本海側では特に決まった周期は無く、繁殖期間中は連夜で見かける(代わりに太平洋側ほどの「爆発的な」集合は見られない)。集まった雌は海水に浸かって全身を震わせて卵を海に放つ。放たれた卵からは即座にゾエア幼生が孵化する。ゾエア幼生は浮遊生活を3~4週間ほど送り、メガロパ幼生に変態して着底する。1ヶ月半ほどメガロパ幼生で過ごしつつ、沿岸から河口域に進入し、甲幅4㎜程度の稚ガニに変態する。

性成熟には2年ほど要し、自然下での寿命は5~10年以内だとされる。

(これは生理的な最大寿命では無く、飼育下では15年以上生存した例もある)

人との関係

一般に食用にはされない(食性が食性なだけに身や蟹味噌は泥臭く、精神衛生的にも不味である)。

民間療法として、東北瀬戸内地域などで、すり潰して絞り出した汁を頭痛薬解熱剤として用いられたことがある。

体液中に含まれるミネラル分(ナトリウムカルシウムなど)が、ヒトの生理機序に何らかの関与がある可能性は否めないが、本種は肺吸虫中間宿主であることが知られているので基本的には推奨できない。


身近な水生生物ということで、水族館動物園で展示されることも多い。また、ペットショップ熱帯魚店で売られることもある。成体に関して言えば最も飼育が容易なカニの一つで、陸場を多く取ったアクアテラリウムか、大きな水容器(この中で脱皮を行うので、飼育個体が充分に動き回れる程度の大きさが必要)を設置したテラリウムで飼育する。餌にニンジンオキアミといったカロテノイドを多く含むものを与えると、発色がより赤く鮮やかになる。相当大型の飼育容器を用いて、シェルターを大量に用意すれば複数飼育も可能だが、基本的には単独飼育が推奨される(単独飼育であれば、長辺30㎝程度の水槽で終生飼育可能)。


東海から近畿、瀬戸内海や九州では比較的普通種であり、環境省レッドデータブックへの掲載はないが、河川改修(三面コンクリート張り河口堰の建設など)や水質汚濁、繁殖期の陸上移動時の交通事故死などにより減少傾向を示す地域もある(特に東北から北陸にかけてと、四国太平洋側)。このため、11県の地方レッドデータブックには準絶滅危惧などに指定されている。

近縁種

Chiromantes属にはクロベンケイガニを始めとして複数の種が含まれていたが、その多くは別属に移属され、現在有効とされるのは、本種の他はリュウキュウアカテガニC. ryukyuanumのみとされる。リュウキュウアカテガニの分布は奄美大島以南の南西諸島で、本種とは分布域が重ならないとされる。形態は酷似しており、確実に区別するには雄成体の第6腹節の形状が有効だが、一回り小型で体色の赤みが弱い、頭胸甲はやや扁平で額が狭い、鉗脚があまり肥大化しない、歩脚は頭胸甲に比して長い、歩脚の前節及び腕節の剛毛が短いなどの傾向でも判別出来る場合がある。


むしろ本種と混同しやすいのは、別属だが分布域が重なるベンケイガニと思われる。

詳細は当該の項目を参照。

余談

アンガールズ田中卓志の持ちネタ(ものまね?)、「テアカガニの産卵」は、本種の放卵行動のことと思われる。

関連タグ

ベンケイガニ科 カニ 十脚目 甲殻類 節足動物 無脊椎動物 水生生物

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