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ここではキノコの学術的な説明を扱う。
それ以外については「きのこ」の記事を参照。

概要

 キノコとは、一般に、菌類に分類される生物群の内、肉眼的なサイズの子実体を形成するもの、またはその子実体そのものの事を言う。
 子実体とは、菌類が繁殖のための胞子を形成・散布する目的の、様々な形態の菌糸が複合して作られる複雑な構造体である。

生態系における役割

 キノコを作る菌類には大きく分けて、菌根共生菌・木材腐朽菌・アンモニア菌等がある。

菌根共生菌

 菌根共生菌は、樹木の根と結びついて生活する菌類の事である。菌根と呼ばれる、樹木のそれよりも細かく広範囲にわたる構造を形成し、樹木には集められない土壌中の水分や栄養分を樹木に与える代わりに、樹木から光合成等で得た栄養分を吸収して生活している。
 菌類のこの役割は一般にはあまり知られていないが、植物の9割程が何らかの菌根共生菌と関係を持っているという研究もある。

 菌根共生菌の作るキノコの例 マツタケ ハツタケ テングタケ ベニテングタケ ドクツルタケ 等

木材腐朽菌

木材腐朽菌は、枯死した木や落ち葉を分解して(腐らせて)栄養源とし、生活している菌類の事である。彼らが存在しなければ、地球は落ち葉と丸太で覆われてしまい、やがて二酸化炭素ガスによる温室効果が失われ氷河期が訪れることになる(木材腐朽菌は、植物が炭素を固定した木材を二酸化炭素と水に戻している)。

 木材腐朽菌の作るキノコの例 シイタケ エノキタケ ナメコ ブナシメジ マイタケ ヒラタケ 等

アンモニア菌

 動物の死骸や屎尿等、分解過程でアンモニアを生ずる物の分解過程に出現する菌類を、アンモニア菌と呼ぶ。この菌群は、日本人の相良直彦氏によって発見された。
 このほかにも、特定の化学物質を分解する菌が存在する事が示唆されているようである。

 アンモニア菌の作るキノコの例 アカヒダワカフサタケ キツネタケ 等

 所謂、「死んだら土に還る」働きは、木材腐朽菌等の分解菌によるものである。
 これは、生態系を成り立たせる物質循環の「輪」を形成するパーツとして、無機物から有機物を生産する植物・それを消費する動物等と同等に、重要な役割である。
 しかし、我々は小中学校教育において、動植物のそれと同列に、菌類の働きを学習していない。これは、自然保護、保全が重要視されるようになった世界情勢を鑑みるに、国民の一般常識的な範疇に菌類を、ひいては生物全体の働きに関する基本的な知見を根付かせる事の、大きな欠陥ではないかと言われている。

 また、これら菌根共生や分解の働きは、もちろんキノコに限った働きではない。

日本におけるキノコの認知と同定

 日本においては、一般に約6000~7000種類のキノコが生息していると考えられている。しかしながら、そのうち一般の図鑑に露出しているのは3割程度とされている。

 キノコは、先述のようにあくまで菌の構造の特徴的な一部分にすぎない。また、外見的に類似した形態を持つ種が数多くある。諸外国に比べて一般市民に馴染みが薄い。研究者が少なく、研究が比較的遅れている事等もあり、その同定は困難。 違う種が同じ種に混同されていたり、同じと思われていた物が複数の種に分けられたりすることもしばしばである。
 
 このように、キノコの正確な同定にはそれなりの知識と経験が必要である。キノコに全く馴染みがない者にとっては道端に生えているキノコなど、例え植物でいえば「サクラ」や「スミレ」に当たるような代表的な物であっても同定不能であろう。(サクラやスミレは種名ではないが。)
 また、図鑑を熟読し、代表的な種を暗記するまでになったとしても、図鑑に記載されていない種類や、外見上極めて類似した食菌と毒菌等が数多くあり、初心者による同定・試食は大きな危険を伴う。
 ちなみに欧州では、一般市民のキノコの採集は比較的盛んなようだ。
 例えばフランスやイタリアでは、セップ・ポルチーニと呼ばれるヤマドリタケが貴重な食材として広く認知され、食べられている。このヤマドリタケに姿のよく似たヤマドリタケモドキという食菌が、日本にも多く産する。ヤマドリタケとは趣が異なるものの美味であり、キノコ愛好家達に食菌として利用されている。
 ロシアでは道端でヒトヨタケを摘む主婦の姿が見られ、その国からやってくる留学生は日本の林縁に発生している様々な種類の食用キノコを見て、「こんなにおいしいキノコがたくさんあるのに、何故誰も採集しないのか」と、驚いて教員にたずねたという逸話を聴いた事がある。

食用キノコと毒キノコ

 我が国においても、一般市民による野生のキノコの試食は行われている。自然とふれあうレジャー企画が注目されつつある事も、一般市民がキノコと触れ合う機会を増やしてくれるだろう。
 野生品の食菌の味はいずれも個性的で、市販されているものと同種の菌でさえ、全く違った趣を見せる。(例えば、エノキといえば白色で小さな傘の束になったもやしのようなイメージだが、野生のエノキタケは普通のキノコ型でカサや柄は茶色い。味もコクやぬめりがあって全く違った味わいを感じさせる。)
 しかし、毎年必ず新聞で、「キノコ狩りの試食で数名が中毒死」という痛ましい事故が報じられている。
 これは、先に述べた同定の難しさや、我が国において菌類・キノコに関する基礎的な教育、一般市民への認知が極端に不足している事による極端な知識不足と疎遠感、毒菌と食菌の見分け方について、数多くの迷信が一般に広まっている事等に起因すると思われる。
 

毒キノコの見分け方の迷信

 先の項で、我が国において、毒キノコと食べられるキノコの見分け方に関する迷信が古来より流布、口伝されている事を紹介したが、これらの言い伝え、形状・性質や調理法による普遍的な毒キノコの見分け方は全て例外なく誤りである
 以下に、迷信とその例外の一例を紹介する。

  • 「縦にさけるキノコは食べられる」──有名なドクツルタケ等のテングタケ科の猛毒キノコはほぼ縦に裂ける。
  • 「虫食いがあれば食べられる」──ドクツルタケ等のテングタケ科の猛毒キノコにも多くの虫食いがある。
  • 「地味なら食、派手なら毒」──毎年真夏に死者を出す猛毒のニセクロハツ・ツキヨタケは、こげ茶色とベージュ色の非常に地味なキノコである。コレラタケやドクササコも全身茶色の猛毒菌である。
  • 「傘の裏が網目、スポンジ状のキノコは食べられる」──傘の裏が網目、スポンジ状になるイグチ科等の菌には美味な食菌が多い事から流布した。しかし実際には、イグチ科にも毒菌はいくつも知られている。多少知識のある者には実にうまそうに見えるドクヤマドリ・バライロウラベニイロガワリは、少量でも非常に激しい消化器系の中毒症状を起こす。また、愛知県で中條長昭氏によって発見されたミカワクロアミアシイグチは、極めて強い毒性を持つ事が知られている。 
  • 「樹上生のキノコは食べられる」──市販のキノコの多くが樹上生であることからか? 木に生える猛毒菌は、ツキヨタケ・コレラタケ・ニガクリタケ等、枚挙に暇がない。
  • 「塩漬けにすれば毒が抜ける」──科学的根拠は無い。フグの卵巣を塩漬けにして毒を抜く調理法があるが、キノコの毒には通用しない方法である。
  •  「ナスと一緒に煮れば毒が抜ける」──味は良いがえぐみが強い秋ナスを、旨み成分を持つキノコと共に調理する事で緩和し食べ易くすると言う調理法があり、恐らくこの辺が過大解釈された俗説と思われる。

 キノコの同定と試食に際しては、以下の事を忘れずに行いたい。


  • 「そのフィールドやそこに発生するキノコを、よく知る人物と共に同定を行う。」
  • 「必ず図鑑の記載との照合を怠らず、丁寧な同定を行う。」
  • 「他人の同定を当てにせず、必ず自分で図鑑との照合を行う。」
  • 「図鑑の記載と『よく似た』未知のキノコは数多く存在する事を知り、強引に図鑑に記載されている種類に当てはめて同定しない。」
  • 「図鑑の記載と少しでも異なる点があったり、疑いを抱いたなら試食を取りやめる。」
  • 「一部が欠損し、判別不能な点があるキノコを、推測や憶測で同定しない。」
  • 「食毒が不明であるキノコの試食を行わない。」
  • 「試食中に違和感や体調の異変を感じたら、試食を取りやめる。」
  • 「自分の知識に自信を持たない。」

また、これまで中毒例が無く食用として広く知られているキノコでも、細菌の付着などによって後天的に毒物が形成され、知らずに食べた人が中毒症状に陥ったり、酷い例では死亡も確認されている。
極端な例であるが、海外のアウトドアの本には
「貴方がキノコの毒の被害に遭いたくなかったら、市販のキノコ以外は決して口にしてはならない」
と記されているものすらある。


 この記事は、決して野生のキノコから読者を遠ざける事を意図したものではない。
 野生品のキノコの姿や味は、市販のそれとは比べ物にならない魅力に満ち溢れており、その観察や試食は、趣味とする事で人生を実に豊かにしてくれる可能性がある事も、付記しておきたい。
 毒キノコについては毒キノコの項にも詳しく記した。

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