バイオセーフティレベル

ばいおせえふてぃれべる

細菌・ウイルスなどの微生物・病原体の危険度をランク付けしたもの。略称はBSL。研究者のミスによって実験室から病原体が外部へ流出するのを防ぐ目的で設定されている。

バイオセーフティレベル（略称BSL）は、細菌やウイルスなどの病原体・微生物の危険度を格付け・ランク付けしたものである。

主に研究者のミスによって病原体が研究所・実験室から外部へ漏出するのを防ぐために設定されている。

感染力、死亡する可能性、重症化する可能性、地域社会や環境への悪影響、有効な治療法・予防方法の有無などをもとに総合的に評価される。

BSLのレベルに応じて研究所・実験室ごとに実験で扱える病原体が異なる。

主な病原体のバイオセーフティレベル

レベル1

健康なヒトあるいは動物に病気を起こす可能性の低い微生物。

ただし、AIDS（後天性免疫不全症候群）などで免疫力が極端に低下している場合はレベル1でも危険。

ウイルス

• ワクチン製造のために弱体化されたウイルス ： ただし、天然痘ウイルスを除く。

細菌

レベル2またはレベル3に属さない細菌。

ワクチン株、大腸菌、緑膿菌などが該当するだろう。

真菌、カビ

レベル2またはレベル3に属さない真菌。

寄生虫

レベル2に属さない寄生虫。

レベル2

ヒトあるいは動物に病気を起こすが、地域社会や環境に対して重大な災害を起こす可能性はほとんどない。

実験室感染で重篤感染を起こしても、有効な治療法・予防法があり、感染の拡大も限られている。

ウイルス

• インフルエンザウイルス ： 鳥インフルエンザウイルスを除く
• 麻疹ウイルス（はしか）
• 風疹ウイルス
• ムンプスウイルス（流行性耳下腺炎/おたふくかぜ）
• ヘルペスウイルス（ヘルペス）
• 水痘ウイルス（水ぼうそう、帯状疱疹）
• パルボウイルス（伝染性紅斑/リンゴ病/りんご病）
• コロナウイルス（風邪、鼻炎） ： SARSコロナウイルスとMERSコロナウイルスを除く。
• アデノウイルス（プール熱/咽頭結膜熱、流行性角結膜炎/はやり目など）
• エンテロウイルス（夏風邪、手足口病、急性出血性結膜炎/アポロ病など）
• ポリオウイルス（急性灰白髄炎）
• ノロウイルス（胃腸炎）
• ロタウイルス（下痢、胃腸炎）
• A型肝炎ウイルス
• E型肝炎ウイルス
• デングウイルス（デング熱）
• 日本脳炎ウイルス
• B型肝炎ウイルス
• C型肝炎ウイルス
• ヒトパピローマウイルス（子宮頸癌/子宮頸がん）
• プリオン（牛海綿状脳症/BSE、クロイツフェルト・ヤコブ病）

細菌

• 溶血性連鎖球菌/溶連菌（猩紅熱など）
• 百日咳菌（百日咳）
• インフルエンザ菌（中耳炎、肺炎、髄膜炎など）
• 髄膜炎菌（髄膜炎）
• マイコプラズマ（マイコプラズマ肺炎）
• 腸管出血性大腸菌（出血性下痢、溶血性尿毒症症候群/HUS） ： O157/O-157など
• 赤痢菌（赤痢/細菌性赤痢）
• コレラ菌（コレラ）
• 腸炎ビブリオ（胃腸炎、食中毒）
• ビブリオ・バルニフィカス（食中毒、全身の組織の壊死）
• サルモネラ菌（胃腸炎、食中毒） ： チフス菌とパラチフス菌を除く
• エルシニア菌（胃腸炎、食中毒）
• カンピロバクター（胃腸炎、食中毒）
• セレウス菌（食中毒）
• 黄色ブドウ球菌（食中毒、とびひ）
• ピロリ菌（胃炎、胃潰瘍、胃がん/胃癌）
• リステリア菌（食中毒、流産）
• ボツリヌス菌（ボツリヌス症）
• 破傷風菌（破傷風）
• ジフテリア菌（ジフテリア）
• ウェルシュ菌（食中毒、壊疽）
• レプトスピラ（ワイル病）
• レジオネラ菌（肺炎）
• 淋菌（淋病、性行為感染症）
• 梅毒トレポネーマ
• クラミジア（肺炎、オウム病、性行為感染症）
• 癩菌/らい菌（ハンセン病）
• ボツリヌストキシン ： ボツリヌス菌が出す毒素
• ベロ毒素/志賀毒素 ： 腸管出血性大腸菌O157や赤痢菌が出す毒素

真菌

• アスペルギルス
• クリプトコッカス
• カンジダ

寄生虫

• マラリア原虫（マラリア）
• 赤痢アメーバ（アメーバ赤痢）
• クリプトスポリジウム（下痢、胃腸炎）
• ランブル鞭毛虫（ジアルジア症）
• トキソプラズマ
• エキノコックス

レベル3

ヒトあるいは動物に生死に関わる程度の重篤な病気を起こすが、地域社会や環境に対して重大な災害を起こすことは少ない。

有効な治療法・予防法がある。

ウイルス

• 鳥インフルエンザウイルス
• SARSコロナウイルス（重症急性呼吸器症候群）
• MERSコロナウイルス（中東呼吸器症候群）
• 2019年新型コロナウイルス（COVID-19）
• ウエストナイルウイルス（ウエストナイル熱/西ナイル熱）
• 黄熱ウイルス（黄熱病）
• リフトバレー熱ウイルス
• SFTSウイルス（重症熱性血小板減少症候群）
• ハンタウイルス（腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群）
• 狂犬病ウイルス
• HIV/ヒト免疫不全ウイルス/エイズウイルス（AIDS/エイズ/後天性免疫不全症候群）

細菌

• 結核菌（結核）
• チフス菌（チフス/腸チフス）
• パラチフス菌（パラチフス）
• 発疹チフスリケッチア
• 日本紅斑熱リケッチア
• ペスト菌（ペスト/黒死病）
• 炭疽菌（炭疽）

真菌

• コクシジオイデス

レベル4

ヒトあるいは動物に生死に関わる程度の重篤な病気を起こし、かつ、地域社会や環境に対して重大な災害を起こす可能性が高い病原体。

有効な治療法・予防法は確立されていない。

レベル4の病原体を扱える実験室がある国は限られている。

日本ではレベル4の病原体を扱える実験室があるのは国立感染症研究所（東京都武蔵村山市）と理化学研究所筑波研究所（茨城県つくば市）だけである（ただし、理化学研究所では地元住民の反対運動により、現在、レベル3以下の病原体しか扱えない）。

2016年現在、長崎大学へのレベル4実験室設置に向けた協議が進んでいる。

ウイルス

• エボラウイルス（エボラ出血熱）
• マールブルグウイルス（マールブルグ病）
• クリミア・コンゴ出血熱ウイルス
• ラッサウイルス（ラッサ熱）
• 南米出血熱のウイルス
• 天然痘ウイルス

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