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ホメオパシー

ほめおぱしー

ホメオパシーとは、「その病気や症状を起こしうる薬(や物)を使って、その病気や症状を治すことができる」という原理、および思想に基づく治療法のこと。現代では疑似科学として扱われる。
目次 [非表示]

概要

極度に希釈した成分を投与することによって体の自然治癒力を引き出すという思想に基づいて、ある物質を何十回も水で薄め、砂糖玉にしみ込ませた「レメディ」と呼ばれる錠剤を飲むと自然治癒力が回復し病気が治る、という触れ込みである。

具体的にはAという症状に対し、Aを引き起こす物質Bを希釈した水を染み込ませたレメディを服用することで、Aが回復する、という流れである。


現代医学においてはプラシーボ(偽薬)以外の効果は特にないと定義される。

例えばワクチンのように、病原体の病原性(症状を起こす原因となる性質)を弱め、投与することで免疫を獲得する、という方法は、現代の医療においても十分に普及している。アレルギーの治療でも同様に、希釈したアレルゲン(アレルギーの原因物質)を用い、免疫を獲得する→症状をコントロールする、という方法が取られることがある。

こうした発想は近現代医学特有のものではなく、ギリシャ医学や漢方薬も同様のものがあり、例えば解熱剤に用いられる葛根湯には本来発熱作用のある麻黄が含まれている。


しかし、ホメオパシーに用いられるレメディ(とそれに染み込まされた水)は、そもそも原物質が無くなるほどに薄められており、科学的にはどう考えてもただの砂糖玉でしかないのだが、支持者達は「物質のパターン・波動が水に記憶される為、治療効果がある」と主張している。

そのため、いわゆる非科学(スピリチュアル)に分類される「オーラ」や「水の記憶」などの「物質はどれほど希釈されても"記憶"としてその性質を持つ」という思想と相性が良く、物質が希釈されればされるほど効果がある、という現代科学とは真っ向から対立する理屈を持っている。


WHOでは「補完・代替医療」の一種と定義され、その有用性は少なくともプラシーボ効果による「自然治癒」や「緩和」の域を出ないとされる。


歴史

もともとはドイツの医師であるザームエル・クリスティアン・フリードリヒ・ハーネマンが18世紀に考案した。

当時のヨーロッパの医療は瀉血といって、「体内の不要物や病気の原因となる物質」を取り出すため、わざわざ血を出して治療する、というほぼ迷信に近い療法が横行していた。当然この「治療」が逆効果になって死亡する人も多かった。

ハーネマンはこうした当時の医療に問題意識を抱いており、ある日実験のためマラリアの治療に用いる薬を症状がない状態で服用した。すると、ハーネマンにはマラリアの治療薬であるのにマラリアとよく似た症状が現れた。彼は上述の「あるものには同じ効果があるものを用いて治す」という原理を発見したのだが、投薬には「体に害が及ばない程度の量」ではなく「薄めれば薄めるほど良い」という結論にたどり着いてしまった。


それに比べば、ただの砂糖玉を与えるだけで実質何もしていないホメオパシーは人間本来の自然治癒力を邪魔することはなく、少なくともマイナスではなかったのである。また、ホメオパシーを受けられる患者は富裕層が多く、良好な衛生状態が確保されていたために通常医療よりも患者が生き残る見込みがあった。しかしハーネマン自身は「(患者本人の自然治癒力により)病気が自然に治った」のをホメオパシーそのものが効いたと思い込んでしまい、この間違った見識に基づいたトンデモ理論を構築して行く事になる。その結果ヨーロッパではすっかり広まってしまい、保険適用される国まで出る様になった。

加えて、ホメオパシーは事務的な一般医療と比べてもはるかに細やかで、体調だけではなく生年月日や好きな色など、健康状態には直接関係のないことまで質問をして時間をかけ、その結果を元に数あるレメディの中から最適のものを選ぶ、という診察スタイルをとる。このため患者が手間暇をかけて診察してくれるホメオパシーの治療を信頼しやすくなるという背景もあった。

ハーネマンの治療は大評判となり、晩年の彼はパリで豊かに若い妻と暮らしたという。


発祥の国ドイツでは、20世紀にナチスから新ドイツ医学の研究の一端を担う分野として期待されており、ヒトラーやその配下もホメオパシーの研究者を厚遇していた。


また実質ただの砂糖玉である故に経費が安く、経済的な余裕のない発展途上国でも広まってしまった。イギリス植民地時代のインドに生まれたガンディーも、ホメオパシーの熱心な信奉者であったとされ、現代インドでも広く利用されている。


しかし、近年の先進国ではその非科学性が知られるようになり、ヨーロッパ諸国では既に保険対象から外されている。しかし、代替医療としては日本以上に普及しており、専門の研究機関も一応は存在する。



問題点

現代の科学からすればまったくの出鱈目でしかないのだが、使っている人の中には、病気が自然に治っただけなのをホメオパシーのおかげと思い込む人が多く、結果的に現代医療を遠ざけるようになる者も少なからずいる。またホメオパシーの団体やホメオパス(ホメオパシーの施術者)の中にも、各種陰謀論と結びつき現代医療を受けさせないよう客に誘導する者が少なからずいる。

これが自分だけならまだしも、ホメオパシーの信奉者である保護者が、子に有効な医療を受けさせず重大な結果を招く例が時々起こっている。

火傷の治療で、ホメオパシーの思想に基づき「暖める」という選択肢を取った結果皮膚が剥がれ重度の火傷になってしまった、という事例は、2010年代のインターネット上でも話題となった。

酷い例では医療の専門家がホメオパシーを信じ込んでおり、助産院で出産後、助産師がホメオパシー信者で、本来与えるべきビタミン剤のかわりにレメディを与えていたため新生児が死亡。訴訟沙汰になった事件もあった。→山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故


しかし雑誌等でオーガニックブームなどの影響からファッション的に紹介されたり、中には一部の医師看護師などの医療有資格者に信奉する者がいたり、といったことでホメオパシーに傾倒してしまう例は少なからず見られる。

著名人が利用に言及し、結果として業者の広告塔状態になっていることもある。例として、爆風スランプサンプラザ中野くんや歌手のUAなどは、メディア出演の際にホメオパスであることを公表している。


日本は中国の影響から漢方薬が代替医療として普及していたため、中南米やインド、ヨーロッパ等と比べればもともとホメオパシーの信奉者は少なかったため、社会問題として取り上げられることは少なかったが、鳩山由紀夫政権時には鳩山本人がホメオパシーの信奉者であったため長妻昭とともに予算をつけようと目論んだ。これは各学会で猛烈な反発を呼び、日本学術会議が「ホメオパシーは非科学的な理論であり、治療効果も無いことが証明されている」という趣旨の声明を出す事態となった。日本医師会および日本医学会もこれに賛同する談話を出した。


また、ホメオパシーの派生として「バッチフラワー」(フラワーエッセンス、フラワーレメディ)と呼ばれるものがある。これはホメオパシーの信奉者であった医師のエドワード・バッチが生み出したもので、花を朝日に照らされた水に浮かべたり煮出したりして「花の癒しのエネルギー」を転写すると称したものである。

植物の成分が多少なりとも含まれるアロマテラピーの精油やハーブティーと異なり、科学的にはただの水でしかないのだが、ホメオパシーとセットで売られることも多く、またアロマグッズショップなどでアロマテラピー用品と混同されて売られたり、先述の通り雑誌やインターネットでファッション的に紹介されることも多く、疑似科学にハマる入り口となっている。


ヒッピーなどの流れを汲むオーガニック食品や化粧品の利用、それらの情報の共有を行う「自然派ママ」など、一部(インターネット上の)コミュニティからも広まることがある。また、その思想から「反現代医療」や「反ワクチン」との親和性が高く、医療トラブルの原因の一つになっている。

がんなどの「代替治療」でもホメオパシーをはじめとする疑似科学/民間療法が取り入れられていることが大半で、悪化の原因となったと推測される事例がいくつも報告されている。


かのフローレンス・ナイチンゲールは、現在よりもホメオパシーの地位が高かった時代に「危なっかしい素人には、薬より毒にも薬にもならないレメディを与えた方がずっとまし」という言葉を遺している。


2020年現在、「ホメオパシーはコロナウイルスに効果がある」などといったデマが広まっている。上記の通りホメオパシーに科学的な効果はないので絶対に信じないように。


外部リンク

ホメオパシー - Wikipedia

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