概要
元号が昭和だった時代の天皇は「昭和天皇」と呼ばれる。では前の元号「平成」の天皇を「平成天皇」と呼ぶかとなると、2022年現在は全くの間違いにあたる。昭和天皇が「昭和天皇」と呼ばれるようになったのは、昭和64年(1989年)1月7日に崩御した後に追号として定められてからの事であり、在世期間中の昭和天皇はやはり「今上天皇」と呼ばれたのである。
例えば太平洋戦争を扱った作品で、東条英機が「天皇陛下万歳!」という台詞はあっても、「昭和天皇陛下万歳!」というシーンは決してなく、もしそんなシーンが描かれれば時代考証としては完全に間違ってるということになる。
元号=追号となったのは明治以降のことであり、たとえば明治天皇の先代は孝明天皇で、元号としての明治の一つ前は「慶応」であるが、元号「孝明」や「慶応天皇」は存在しない。
後醍醐天皇や霊元天皇のようにみずから諡号を定めた天皇も実在するが、それらの例は醍醐天皇、孝霊天皇・孝元天皇に則ったものであり、元号は全く関係ない。
元号が天皇の代替わりで変わるようになったのは明治以降の事であり、明治以前は天災(火山の噴火や地震など)や大事件が起きる度に変えられており、必ずしも天皇の代替わりで元号を変更していたわけではない。たとえば明治天皇が践祚したのは慶応3年(1867年)1月9日であったが、孝明天皇崩御の後も、1868年10月23日(慶応4年9月8日)、1月にさかのぼって明治に改元されるまでされるは暦の上で1年にわたり慶応のままであった。
在位中の元号を崩御後の諡号にするとも決まっておらず、平安時代初期に平城天皇がおられるので、百年後の歴史書において先の天皇が「平成天皇」と呼ばれることが確定したわけでもない。
しかし、近代以降の歴代天皇は、明治天皇・大正天皇・昭和天皇は治世の元号が諡号に冠せられる。前述のとおり、元号が天皇の即位により改り、その一時代の天皇という感覚が強くなったからである。これに鑑みるに、十中八九後世には「平成時代の平成天皇」と呼ばれると思われる。
ただし、それは諡号であるので崩御されない限り、平成天皇という言葉は不適切となる。
また当然ながらの話だが、現在の天皇を「令和天皇」と呼ぶこともこれらと同様の理由で間違いにあたる。