概要
英国ラズベリーパイ財団が開発したワンボードマイコン(シングルボードコンピュータ)。日本での通称はラズパイ。ラズベリーパイ財団と契約を結んだ企業(日本向け製品は日本国内のソニー工場)で製造されている。
当初は教育分野での利用を想定して開発されたが、現在ではIoTデバイスや産業用ロボット・サービスロボットの制御、デジタルサイネージの表示用など産業分野の利用の方が多い。2014年からはRaspberry Pi Compute Moduleという組み込み専用モデルも登場している。
現在の最新版は2023年9月28日に登場したRaspberry Pi 5。こちらは、各種性能向上や電源ボタンの新設に加えて新たにPCIe2.0×1のFPCコネクタが追加されている。
構成
構成はモデルによって異なるが、32ビットまたは64ビットのARMコアとGPUとDRAMを搭載したSoCチップに、USBポート(Raspberry Pi ZeroではmicroUSBポート)や汎用入出力端子、HDMIなどの映像出力ポート、無線LANもしくは有線LANポートを組み合わせている。ストレージは搭載せず、microSDカード(初代Raspberry Piの前期型のみ標準サイズのSDカードまたはマルチメディアカード)の利用が前提となる。その一方、Compute Moduleでは用途柄ストレージ非搭載モデルのほかにeMMCを搭載したモデルがある。
標準OSとしてRaspberry Pi OS(Debianベース)を搭載するが、NOOBSというインストールマネージャーを利用して他のOSも簡単に利用可能。
汎用入出力端子にはArduinoの「シールド」と同様に「ハット」とよばれる拡張基板を取り付けることができる。ちなみに、汎用出入力は端子本数が40ピン(初代の前期型のみ26ピン)もあるため差し込み時はともかく、取り外し時は慎重かつ力を入れて端子から引き抜く必要があるため、勢い余って端子を曲げてしまわないよう注意が必要。
番外編
上記のシリーズのほかにOS無しでの動作が前提のRaspberry Pi Picoが2021年に、その新モデルのRaspberry Pi Pico 2が2024年に登場している。こちらに関しても、ARMコアマイコンであることは変わりないのだがPico以外のRaspberry PiシリーズがARM11やARM Cortex-Aファミリーのアプリケーションプロセッサを採用しているのに対し、Picoの方はARM Cortex-Mファミリーのマイクロコントローラを採用し、動作させるプログラムもストレージからではなく、基板上のフラッシュメモリから実行するようになっており、フラッシュメモリへの書き込みは同じく基板上にあるUSBポートから行う様になっている。最近では無線LAN対応のRaspberry Pi Pico Wや端子取り付け済みのRaspberry Pi Pico H(無線LAN対応版はWH)も登場しており、SWD(※)端子用のデバッグプローブも登場している。このデバッグ用プローブが登場する前はデバッグをする為にRaspberry Piの汎用入出力ピンを使って行うか、またはデバッグプローブ用にPicoが余分にもうひとつ必要であった。
近年のマイクロコントローラでは特段珍しいことではなくなってきたことだが、このRaspberry Pi Picoシリーズは下記のような構成のデュアルコアマイコンでもある。
世代 | チップ型番 | コア構成 |
---|---|---|
初代 | RP2040 | ARM Cortex-M0+ ×2 |
Pico 2 | RP2350 | ARM Cortex-M33 × 2 |
Pico 2(RISC-Vモード) | RP2350 | RISC-V Hazard3 × 2 |
注釈
※・・・Serial Wire Debugの略でARMホールディングスがARM Cortexシリーズ用に定めたデバッグ用インターフェースの規格。占有する信号線が2本で済む点とJTAG端子を共用できることが特徴。