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概要
漢字表記は「羆」。
頭胴長1.8~2.8m、体重500~700㎏に達する。体は褐色・赤褐色からほとんど黒色まで変化に富み、特に灰色がかった毛色のヒグマを指して「グリズリー」と呼ぶ。
ヨーロッパからシベリア・アラスカまで広く分布し、日本には北海道に亜種エゾヒグマがいる。多くのヒグマは人間を避けることを知っており、生息地においてもヒグマと実際に遭遇したことのある人は少ないが、ツキノワグマより巨体であり力も強いため、人間と遭遇した時は大惨事になる危険が大きい。
基本的にヒグマは森林や高山、砂漠、海岸等、食べ物を得られる場所ならどんな環境にでも棲む。
森が多い北海道においては主に山中に出没するが、近年はたまに市街地近辺に出てくるクマもおり、よく騒ぎになる(特にヒグマ棲息地である山と隣接した札幌のような都会で問題になる)。植物質から動物質まで様々な餌を食べる雑食性。昆虫や腐敗した死肉も食べる。
大型動物は積極的には狩らないとされていたが、近年の北海道ではシカを襲うこともよくあり、稀には共食いをすることもある。
北海道のヒグマは大陸のヒグマよりも植物食傾向が強く、特に山菜や果物、木の実などを好む傾向が強い。知床のヒグマは秋になると川を遡上する鮭を好んで捕食するが、その他の地域の川では遡上する鮭を人間が捕ってしまうためヒグマが食する機会は少ない。
ヒグマとしては様々なものを食べるが、個々のクマは特定の季節にはそればかりを好んで食べる偏食の傾向があるとか。(人の食べ物の味を覚えると人の生活圏に頻繁に侵入する恐れがあるため、ヒグマがいる地域では、決して生ゴミを安易に投棄してはならない。餌やりなどはもってのほか)
冬は穴の中で冬眠(厳密には「冬ごもり」)する。
北海道におけるヒグマの扱い
北海道ではメロンやカボチャなど農作物の被害や、市街地に出没するなどして警戒が呼びかけられる事態が現在も頻発しており、過去には人間の死傷事件も度々引き起こしている。
中でも1915年に起こった「三毛別羆事件」は7名が喰い殺されるという惨事になった。この事件は後に小説家・吉村昭氏により小説「羆嵐」(くまあらし)として作品化されている。
人間を襲い、人肉の味を知ったヒグマは、人を喰らうのが習慣になる危険性が高いため、自治体が猟師に依頼して射殺される。
アイヌの人々はヒグマの事を「キムンカムイ」(ずばり「山の神」と言う意味。「金毛神」と言う当て字がある)と呼び、狩猟で得られる獲物の中でも最高位か、或いはその立ち位置に極めて近いものとして敬った。豊富に獲れていたせいで、神が袋から地上へ投げ下ろしていたというぞんざいな扱いを受けていたエゾシカとは大きな違いである。
一方で、人殺しを経験したヒグマに対しては、動物では無く邪悪な魔物として扱う傾向もあった。
一部のアイヌ伝承では「山の奥に棲むヒグマ神は気性も穏やかで神としての位も高いが、山の端に棲むヒグマ神は気性が荒く、神としての位も低い」とする描写がある。
ヒグマを意味する俗語に「山親父」と言うものがあるが、これは「地震・雷・火事・親父」の語句に見られる厳格な父親像をヒグマに仮託しての命名と思われる。
もちろん、「火事」との語呂合わせっぽい親父なんかより、山親父の方がはるかに危険である事は言うまでもない。