「運命? 運命などに、おれの人生を左右されてたまるか。おれは自分の長所によって成功し、自分の短所によって滅亡するだろう。すべて、おれの器量の範囲内だ」
概要
CV:堀川りょう(OVAシリーズ、劇場版『わが征くは星の大海』『新たなる戦いの序曲』)
緑川光(劇場版『黄金の翼』)
「常勝の英雄」と呼ばれる戦争の天才。旧姓はミューゼルであり、上級大将昇進の際に断絶した名家ローエングラム伯爵家の名跡を継いでローエングラム姓を名乗るようになる。
豪奢な金髪に蒼氷色(アイス・ブルー)の瞳と彫刻のような比類なき美貌をもち、
過度のシスコンっぷりを作中で如何なく発揮する貧乏貴族出身の青年。
姉アンネローゼを奪ったゴールデンバウム王朝を憎悪し、親友キルヒアイスと共に銀河帝国の現体制を打倒せんとする。
軍人としての目覚ましい功績と皇帝の寵愛を受ける姉の影響で異例の速さで昇進を続ける。
紆余曲折の末、23歳にしてローエングラム王朝の初代皇帝に即位。後に首席秘書官でもあるヒルデガルド・フォン・マリーンドルフと結婚し息子のアレクをもうけるが、症例のない新病「変異性劇症膠原病」によって25歳で崩御する。
旧姓ミューゼル、乗艦はブリュンヒルト。
性格
気が強く怒りっぽいが竹を割ったような気質であり、覇気と活力に満ちた王者に相応しい性格の持ち主。
権力主義・門閥貴族・世襲制等、腐敗した専制政治を嫌悪する実力主義者。
行動的で自己主張をはっきりと行う。不敵な態度で幼少の頃から敵を作りやすく喧嘩沙汰は絶えなかった。学校では主席だったものの成績などに価値を見出さず、現実での行動力や結果を出す手腕を重視する。
物事の核心を突き、躊躇無く物言う性分に加え寵姫の弟という優遇される立場、さらに軍事上での才幹も相まって貴族や将校達から「生意気な金髪の孺子(こぞう)」とやっかまれたが、それらを振り払う実力を持ち合わせ帝国軍将兵の畏敬と忠誠を一身に集める。
戦闘においては安全な場所で戦争を指揮し兵士たちを死地へと向かわせる権力者を忌み嫌い、常に最前線で自ら指揮を取る事にこだわった。
無二の親友キルヒアイスを失ってからは少し影が差すようになったが、後の妻のヒルダや幕僚達に支えられて持ち前の英気を少しずつ取り戻していった。
為政者としても善政を敷き、基本的に民に寛大な名君であったが本質的にラインハルトは好戦的な軍人であった。そのため個人的な嗜好のもとに戦いを行うこともあり、ヤン・ウェンリーとの最後の対決となった「回廊の戦い」に代表されるような”本来なら回避し得た”戦争を引き起こしてしまった点に関しては批判を受けることとなった。
外伝では彼の叩き上げの出世時代がよく語られている。下っ端の頃は無能な上司に頭を抱えたり、出世のためにひたすら地道な努力と苦労を重ねているためか銀英伝ファンからは「外伝のラインハルトの方が感情移入できる」と言われることもしばしば。
能力
政戦両略に秀でた当代随一の天才である。
軍事面
用兵家としてはただ一人を除いて常勝の神話を保ち続けた、偉大な人物である。宿敵ヤン・ウェンリーが理詰めの心理作戦を得意とするのに対し、ラインハルトは大胆且つ直感的な戦術を得意としており、この点で両者は相性が悪かった。
智勇の均衡においては勇に傾斜するとされ、果断速攻が持ち味であり持久戦術は得意ではない。
彼は常に大多数の兵力を整え、万全の態勢で戦闘に挑むという姿勢を崩さなかった(ただし、そういう兵力に対する手筈を自分で踏めるようになったのはアムリッツァ会戦後あたりからである)。無論戦略面と戦術面の双方に長けており、ヤンも認めるところである。
事戦略においては自軍が必ず勝てる状況を作り上げる事で戦う前から勝利を手にしており、
戦術レベルはともかく戦略レベルではヤンはラインハルトに一度も勝利出来なかった(ラインハルト自身はその事で自分自身を評価していないが、ヒルダの策謀もラインハルトの戦略構想の上でこそ成り立つものであった)。
戦争の天才と称され、卓抜した戦略眼を有し、戦略の重要度も理解していたが気質としては戦場で直接勝ちを納めることに拘る戦術家であったという。
相手に対し堂々と胸をさらす、正道的な戦術を好み、必要に迫られた時以外は奇策を用いることを好まない(第四次ティアマト会戦では敵艦隊の目前を横断するという奇策を用いたが、「今回限りだ。これに勝ったらこんな邪道は二度と使わん」と発言している)。
ヤン・ウェンリーからはこの気質を利用され、バーミリオン会戦において手痛い敗北を喫することになる。
バーミリオンの結果からヤンとの間には能力差が有るように解釈されがちだが、
レグニッツァの遭遇戦やガイエスブルグ要塞によるイゼルローン要塞攻略戦等では、
両者がほぼ同じレベルの戦術思考能力を持っている事を窺い知ることが出来る。
バーミリオンの会戦はラインハルトが敢えて自身が不得手とする持久戦術を執った事が敗因の一つであり、またヤンにとってのユリアンのような戦術面での思考をサポート出来る参謀が居なかった事も大きかった(ラインハルト自身、キルヒアイスが生きていれば、自分はヤンの死体と対面するはずであったと発言している)。
回廊の戦いでは、ロイエンタールの采配ミスでヤン艦隊の攻勢を招いてしまった際、ヤン艦隊の艦列の隙を見抜いたラインハルトの攻撃指示によってヤン艦隊を後退せしめた。
艦隊指揮における能力のみならず、白兵戦技術にも長けており、特に外伝でその姿を確認できる。時として決闘の代理者として出場した経験もあり、火薬式拳銃の早撃ちや、サーベルによる二次試合をこなした(しかも対戦相手は、筋金入りの殺し屋であった)。
政治面
卓抜した政治感覚を持った優れた為政者でもあり、
実権を握ったのちは帝国の不公正、不文律を改め民衆の絶大な支持を集めた。
「体制に対する民衆の支持を得るには主に二つのものがあればよい。公平な裁判と同じく公平な税制度。ただそれだけだ」という発言に、彼の見識の高さが表れている。
当時の帝国外の人間からも「これといった失政はない」と評され、
民主主義の信奉者であるヤン・ウェンリーをしても「改革における専制政治の有用性」を認識せざるを得なかった。ただし、ラインハルトにとって”政治”とは戦略を構築するために後天的に努力して得た能力であり、必ずしも得意とするモノではなかった。占領地の統治などでもミスが多かったため、「征服者としては一流、統治者としては三流」と後世評されることもあった。ラインハルト本人も「皇后の方が政治見識がある」と認識していたようである。
また、人事においても意外な失敗もあり、
レンネンカンプのハイネセン高等弁務官任命、ロイエンタールの新領土総督、ヨブ・トリューニヒトの新領土高等参事官任命などがそれに上げられる。レンネンカンプについては、当時まだ若手の士官であったグリルパルツァーとクナップシュタインをその配下につけたことも失敗(レンネンカンプの性格的欠点が二分されてコピーされることになった)の部類に入れることができよう。
また、ラインハルト自身が清廉潔白であったことの裏返しなのか、人事においては清濁織り交ぜた人事を心がけていた節があり、ラングのような公人としては害にしかならないような者も蔓延らせてしまった(後に粛清したが)。
これについてメックリンガーは「望遠鏡が顕微鏡を兼ね備えていなくても、批判には値しない」という旨の発言を残している。
また、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムやトリューニヒトのような者に権力を与えた事例からか、民主共和政体の有用性には懐疑的であった。
裏を返せば、彼にとって政治形態というものは実力のある人物が上に立てる仕組みであれば何でも良かったのである。
逸話
銀河史上比類無き活躍を成した英傑だが、ラインハルトは私生活においては質素で素朴な人間であった。名ばかりの貧乏貴族に生まれたこともあって贅沢な暮らしに馴染みが無く、皇帝になってからも宮殿はおろか邸宅の一つも建てなかったほどであった。趣味道楽にも無縁で、もっぱら仕事を楽しみとしているワーカーホリックの傾向があった。
女性関係にも淡泊であり、ヒルダと結ばれるまでは浮いた話の一つもない有様だった。このためヒルダと関係を持ってからは迷走と言えるような行動が見られ、読者に笑いを提供することとなった。
奇しくも私生活が簡素で淡泊な点はヤン・ウェンリーも同じであった。
台詞
「平和というのはな、無能が最大の悪徳とされないような幸福な時代を指して言うのだ」
「夢の大小はともかく、弱い奴は、いや、弱さに甘んじる奴は、おれは軽蔑する。自分の正当な権利を主張しない者は、他人の正当な権利が侵害されるとき共犯の役割をはたす。そんな奴らを好きになれるわけがない」
「キルヒアイス、お前は優しい。が、言っておく。お前は姉上とおれにだけに優しければいいんだ」
「名将というものは引くべき時期と逃げる方法とをわきまえた者のみに与えられる呼称だ。進む事と戦う事しか知らぬ猛獣は猟師の引き立て役にしかなれん」
「吾に余剰戦力無し、そこで戦死せよ。言いたいことがあればいずれ天上(ヴァルハラ)で聞く」
「彼女たちは、皮膚の外側はまことに美しいが、頭蓋骨のなかみはクリームバターでできている。おれはケーキを相手に恋愛するつもりはない」
「百戦して百勝というわけにもいくまい。一度の敗戦は一度の勝利によって償えばよい。いちいち陳謝は無用である」
「私を倒すだけの自信と覚悟があるなら、いつでも挑んできて構わないぞ」
「卿らの為に割く時間は余には貴重過ぎる。最後に一つだけ聞いておくが、卿らが議長を殺害した時卿らの羞恥心はどの方角を向いていたのか」
「撃つが良い!ラインハルト・フォン・ローエングラムは歴史上ただ一人で、それを殺す者もまた一人しか歴史に名が残らないのだからな。その一人に誰がなる!」
「もしフロイライン・マリーンドルフに・・あ、あのような事をして・・一切の責任を取らないのであれば・・余はゴールデンバウムの淫蕩な皇帝どもと、同類となってしまう・・余は、彼等と同類になる気はないのだ・・・」
「戦うにあたり、卿らにあらためて言っておこう。ゴールデンバウ王朝の過去はいざ知らず、ローエングラム王朝あるかぎり、銀河帝国の軍隊は、皇帝が必ず陣頭に立つ。予の息子もだ。ローエングラム王朝の皇帝は、兵士の背中に隠れて、安全な宮廷から戦いを指揮したりすることはせぬ。卿らに誓約しよう、卑怯者がローエングラム王朝において、至尊の座を占めることは、けっしてない、と… 」
天下無敵アドリブ銀英伝において
同人誌セレクションの付録としてついていたドラマCDでは、ラインハルトが出演している。が、決して大真面目な話ではなく、公式が病気レベルの会話であった。ちなみに話の流れは同盟首都を占領しようとする前であり、同盟市民をうまく収めるための討議を行っている、という設定だった。
ラインハルトは本編同様に大真面目だが、討議に参加したミッターマイヤー、ロイエンタール、オーベルシュタインの3名が、揃いも揃ってまさかのオヤジギャグを連発してしまう事態に。ラインハルトは理解に苦しみ会議を後にしたが・・・そこでキルヒアイスの心の声が聞こえてしまう。
その亡き友に、部下たちのことを嘆くのだが・・・。
ラインハルト様のお食事は・・・値が張ると
あぁ・・・キルヒアイス。 お 前 も か !?
という衝撃的なラストを迎えた。しかも終生脅かした発熱は、この会議が原因であるという・・・。
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キルヒアイス アンネローゼ ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ アレクサンデル・ジークフリード・フォン・ローエングラム