はじめに
『スオムスいらん子中隊』とは、
- 『ストライクウィッチーズ』の外伝小説シリーズ
- 1の主役的立場となる航空ウィッチ(作中では『機械化航空歩兵』とも呼ばれる)部隊「スオムス義勇独立飛行中隊」の通称
の双方を指す。
小説『スオムスいらん子中隊』シリーズ
概要
『スオムスいらん子中隊』とは、島田フミカネ及びProjekt Kagonish(鈴木貴昭)原作のメディアミックス作品『ストライクウィッチーズ』に属する小説(ライトノベル)シリーズである。作者はヤマグチノボル。 挿絵は島田フミカネ(表紙)、上田梯子(口絵及び挿絵)。角川スニーカー文庫より全3巻が発売されている。略称・愛称は「いらん子(いらんこ)」など。
『ストライクウィッチーズ』のメディアミックス展開の中でも、最初期に位置する作品でもある。
あらすじ
1939年9月。第一次大戦終結より20年余りの沈黙を続けてきた”異形の軍”ネウロイが突如活動を再開。中欧オストマルク(作中では『オストランド』)を呑み込み、その北に位置する大国カールスラントに迫った。列強各国は義勇兵ウィッチや武器を送り、強大なネウロイの前に疲弊していくカールスランドを支えるべく動いていた。
バルト海を挟んでカールスラントと対する北欧の小国スオムスにもネウロイの脅威は迫り、政府は列強各国に対して国際支援を要請していた。
扶桑皇国陸軍明野飛行学校実験部隊に属するウィッチ・穴拭智子。前年の扶桑海事変で怪異7体を撃墜し「扶桑海の巴御前」と讃えられた彼女も欧州派遣が内定し、正式命令が下るのを心待ちにしていた。
しかし、智子に下ったのは、激戦地のカールスラントではなく、前線から外れたスオムスへ派遣命令だった。
そこで戦果をあげれば前線に行ける、と意気込む智子であったが、各国から派遣されてきたウィッチたちは落ちこぼれや問題児ばかり。現地軍の中隊長でさえも頼りない年下の中尉。
かくして、ここに「いらん子中隊」もとい「スオムス義勇独立飛行中隊」が誕生したのである。
未完の物語
本シリーズは、2013年4月4日にヤマグチノボルが死去したことにより、3巻を刊行した時点で未完に終わっている。
3巻初版の末尾に 「4巻2009年春発売」の予告がなされていたが、刊行延期となった。
2011年7月にヤマグチが末期がんである事を公表。治療と平行して主力作である『ゼロの使い魔』の完結に注力するため本シリーズは中断状態が続いた。しかしヤマグチは続刊執筆を諦めておらず、「次巻で智子を鍾馗の中島系正統進化であるところの傑作四式戦疾風に乗せたいんだけど(中略)1940年頃の話なんでさすがに疾風は無理があるなと」「せめて二式単戦二型甲で妥協するしかないのか」(いずれも2013年1月9日付の公式ツイッター)と、死の直前まで構想を巡らせていた。
『ストライクウィッチーズ』はヤマグチが直接関わった企画ではないものの、原作者の島田フミカネは2015年3月6日付の公式ツイッターで「どうしてもいらんこのなかでのお話というのは手を出せないところがある」と語っている。ただ、いらん子中隊の後身である第507統合航空戦闘団の設定については構想している模様。
なおアニメ『ブレイブウィッチーズ』では、主人公の雁渕ひかりが当初カウハバ方面に配属される予定だったことが明かされている。
設定の差異について
「あらすじ」にあるように、TVアニメ版第1期の舞台が1944年のブリタニア(史実のバトル・オブ・ブリテンを4年後に移動)であるのに対し、『スオムスいらん子中隊』は1939年のスオムス(史実の冬戦争)が舞台となっている。
また『ストライクウィッチーズ』はその展開の都合上、各メディアでの設定等の違いが随所に見られる。特に本作は、アニメ版に先行して始まった事もあり、差異の度合が強い。→その辺について語ったヤマグチノボルのツイート
具体的には、
- 使い魔の描写の有無(本作では、通常時使い魔はウィッチと分離している)
- 「ネウロイ」の名の由来、関連して「オラーシャという国家」の扱い(本作ではネウロイという名は「現れた土地の名」から取られ、またその土地とは(現行設定における)オラーシャと同一とされる)
- 地球の地理的状況(本作掲載のマップでは(現実における)中国大陸、朝鮮半島、ペルシア・メソポタミア・シリア、コーカサス、ウクライナ、オーストラリア大陸北西部が存在しない。また南リベリオン大陸の形状も現行設定とは異なる)
- 企業名など固有名詞の扱い(例:「中島飛行脚」【本作】→「長島飛行脚」【他作品】)
- 実在モデルがいない完全オリジナルキャラの有無(エルマ・レイヴォネン、迫水ハルカら)
などが挙げられる。その違いを楽しむのも一興ではないだろうか。
なお、アニメ版の立ち位置を決定付ける大きな要因になった「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」というキャッチフレーズ及び設定は、本作においてはその限りでない。
しかし細かいことを気にしてはいけない。パンツとは、私たちのココロの中に在るものなのだから。