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アルキード王国の編集履歴

2021-04-20 14:29:18 バージョン

アルキード王国

あるきーどおうこく

アルキード王国は漫画『ダイの大冒険』に登場する国家。物語開始時点では既に滅亡している。

概要

地上界のギルドメイン大陸南端の半島にかつて存在していた国で、ダイの母ソアラの故郷。過去に起こったある事件により竜の騎士バランの怒りに触れ、半島ごと消滅した。


人物

ソアラの実父で、血縁上はダイの母方の祖父に当たる。一人称は「ワシ」。ソアラが助けた人物(バラン)を当初は受け入れていたのだが、彼の存在を快く思わなかった側近達から「あの騎士は人間ではないようで、もしかしたら魔王軍の生き残りなのかもしれませんぞ」との忠言を聞き入れ、悩んだ末にバランを追放する。


この当時はハドラーによる地上侵略が収まった直後であり、人々は魔物に対して恐怖を抱いていた。そのため、素性が知れない彼に対して疑いを抱くこと自体は仕方がないことではあったのが、人間でないことを理由に疑いを深めていった狭い視野が、のちの決定的な破滅へと繋がっていく。


既にこのときソアラは妊娠しており、二人を駆け落ちさせることになる。やがてソアラが子(ディーノ、後のダイ)を産んだあと、娘の居所を探り当て、テランに侵攻してソアラを取り返し、バランを捕らえる。無抵抗のバランから妻と子の無事を保証してほしいと懇願され、アルキード王も「魔物の子供とはいえワシの孫だ」と、ダイを手にかけることはしなかったが、流刑に処してしまう。

その後バランを処刑しようとしたが、突如ソアラがバランを庇ったため、結果として取り返したはずの娘を失ってしまう。


問題はこの後で、娘の死に様を「魔物を庇って死んだ恥さらし」と侮辱する言葉を口にしたためにバランの逆鱗に触れ、竜の騎士の力(恐らくドルオーラ)によって国ごと消し飛ばされてしまった。


アルキード王国の姫。後の事実上のバランの妻にしてダイ(ディーノ)の母。

詳しい説明は該当記事を参照。


アルキード王国消滅を考察

とはいえ、確かに胸糞が悪いシーンではあるが、一国の王である彼の立場に立って考えれば王の振る舞いにも擁護できる点は存在する。


王たるもの、自分の娘が素性が知れない者と付き合っているのならば連れ戻すのは当然のことである。それが得体のしれない力を持っているのかもしれない存在ならなおのことだろう。

そして前述の通り、当時は旧魔王軍の地上侵攻直後の事である。一国の王たるものであれば素性が知れない存在を警戒するのは当然であり、側近たちの内心がどうであれ、素性が知れない彼が疑われることもまた仕方ないことだったと言える。


また、最初期はバランを受け入れようとする意志を見せていたし、追放を決めた時もバランの嘆願を受け入れて、赤子の事は処刑せずに流刑に留めている。赤子を手元に残すことを許さなかったのも、王位継承その他諸々の問題を考えれば仕方ない判断だろう。

また、ソアラの行為自体、一国の王女として取るにはあまりにも浅慮であり、バランが示した覚悟や父が示した温情を結果的に無碍にしてしまったに等しい。特に父である王が激怒するのもむしろ当然と言え、内心では娘を失った悲しみを抱いていても、国民の手前それを表に出して嘆いて見せるわけにもいかない。

総じて彼自身が人間の負の側面を象徴した代表格とまで呼ばわれるべきとまでは言えず、更にいえばバランへの差別や迫害も魔物が恐怖の対象である以上は理解できない話でもない。


また、アルキード王とバラン・ソアラの両名と大きくすれ違ってしまった要因として、双方の論理が「集団生物の論理」と「一個人としての論理」で噛み合わなかったという点が大きい。

王族や貴族は、一見贅沢で不自由がない生活を営めるように見えるが、同時に自分が従える民に平和と安寧をもたらす責任と統率を任されており、時に国と民を守るために誰よりも己を殺し、一個人としての幸福を手放さなければならない重責ある立場にある。

ソアラは彼女自身が望む望まないに関わらずその双肩には国と民への責任があり、自分自身の振る舞いが国の民や国そのものに及ぼす影響が極めて大きいにもかかわらず婚前交渉を行い、挙げ句に個人の私情を最優先してバランと駆け落ちしているという点では、王族の自覚に乏しいと言わざるを得ず、半端な立ち位置で負うべき責務を投げ捨てたために事態が混迷してしまった。

また、バランにしてみても、竜の騎士という、1代限りで種の存続について考慮する必要がない戦闘種族として生まれたために、集団生物が生きるために群れや社会の維持を最優先させるという弱者の価値観に致命的に疎く、アルキード王の罵倒の真意を汲み取れなかったことも悲劇を巻き起こす一因となった。


付け加えておくと、バランにまつわる悲劇をヒュンケルを通じて勇者一行に伝えたのは本人ではなくラーハルトである。バラン同様の悲劇の経験者だけに、回想シーンでの彼の語り口調には全体的に彼目線かつバランびいきなところが大きく、客観性に欠いているという点も留意しなければならないだろう。


とはいえ、きっかけはソアラの死とはいえ、バランの人間への憎しみを後押ししたのは紛れもなく国王の発言であり、それによりバランは魔王軍の軍団長としてリンガイアやカール王国を滅ぼし、ベンガーナ王国にも被害を与え、多くの命を奪ってしまった。加えて、バランもソアラが死ぬまでは処刑を受け入れていた(竜闘気を使えば死なずに済むと分析した上で、処刑を敢えて受けようとした)事もあり、建前でもソアラの死を嘆く素振りを見せれば、バランも「ソアラが死んだのは自分のせい」と考えて処刑を改めて受け入れ、悲劇的ではあるが一旦は穏便に済ませられた可能性もある。

それを考えれば、如何なる理由があろうと、竜の騎士を迂闊な発言で怒らせ、国民どころか人類の危機を招いた事に対する弁明にはならないだろう。


また、家臣達の嫉妬にも問題ある。作中でもマトリフが魔王討伐後は歓迎されたものの、後にパプニカの一部の重鎮に嫌がらせを受け、パプニカ王国に不信を抱いて離れ、人を寄せ付けなくなった。ましてや、マトリフは大魔道師だが、れっきとした人間である。

例えバランが人間だったとしても、家臣達はあの手この手で追放しようとしただろう。そもそも、バランが人間である証明はないが、逆に魔族である証拠もないにも拘わらず、アルキード王国はバランを完全に魔族だと決めつけていた。まるで、中世西洋の魔女狩りである。


また、ソアラがバランを庇った事は、王家の人間として問題ある行動であったのは確かだが、アルキード側もそれによる悲劇を回避する手段もあっただろう。

バランと国王達との間は距離があり、視野を広くすれば乱入者に気付けたかもしれない。瞬間移動したのならともかく、おそらく走って乱入してきたソアラを見て、警告したり止めようとする人がいてもいいはずである。(ただし、ソアラが乱入してきたのはメラミ発動の瞬間だったので、止めようにも止められなかっただろう。)

それでも、国王は娘がバランの元に行かないように、軟禁、または護衛を付ける事もできたはずである。仮にそれらの対策をしていたとしても、ソアラを逃がしてしまいこの様な悲劇が起こったとしたら、見張りや護衛にも責任がある。

何れにせよ、バランの死を目にしようと視野が狭くなり、ソアラの乱入に直前まで気付けなかった国王側にも責任はあると言える。もっとも、回想はバラン視点であるため、バランが見ていない・聞いていないだけで、国王達がソアラの乱入を止めようとしたが間に合わなかった可能性もある。上にも述べたが、本編では当事者がバランのみであるため、真偽は定かではない。


ソアラとの間に子供ができた事についても、竜の騎士の誕生のメカニズムを考えれば、バランの代で初めて発覚した事で前例も無いので防ぎようもないし、バランもソアラに告げられて信じられないような様子であった。(もっとも、それはそれで一国の王女の純潔を奪ったという別の問題が出てくるが。

神々も、如何なる意図で竜の騎士に生殖能力を付けたのだろうか。


更に言えば、1つの王国が半島ごと消滅した大事件にも拘わらず、真相はともかく誰もその事を話題に全く出さなかったり、興味を全く示さなかったのは異常すぎる(爆発の規模や超巨大なキノコ雲からして、特に最も近いベンガーナ辺りは異常に気付いても不自然ではない)。旧魔王軍の仕業として認知されていたのかもしれないが、その描写すらも全くなく、ラーハルトが語るまで魔王軍ですら(勧誘のタイミング的に事情を知っていそうなバーンですらも)話題にも全くしなかった。そのため、かの国と国王に問題は何もなかったのかどうかも定かではない。


最後に、竜の騎士は人間・魔族・竜の中で世界の秩序を乱す者が現れたら粛清するのが使命である。そのシステム上、人間を敵と見なして粛清する事自体は使命に反していない。バランが最初にアルキード王国の兵に抵抗しなかったのは、守るべき世界の一部と見なしていただけであり、決して人間の味方ではない。

バランの場合は私情も含まれているのも確かだが、人間の悪意に触れた竜の騎士が人間を見限る危険性があるのも確かであり、現に息子のダイもベンガーナの件で人間不信に陥りかけていた。そしてそんなシステムにしたのは、人間の神を含めた神々である。

アルキード王国は竜の騎士の事を知らなかったであろうが、知らずにタブーに触れて破滅に陥る事自体は、この作品に限った話ではない。ともなれば、アルキード王国の滅亡の原因は、まさしく神の逆鱗に触れた事に等しい。


総括すれば、ソアラが今際の際に言残したように「人間が抱く、得体のしれないものへの過剰な恐怖・警戒心・差別」といった心理的な弱さ、そしてバランの心とアルキード王の立場の何もかもがすれ違ってしまったことから生じた悲劇と言えるだろうか。

また、本家ドラゴンクエストでも、立場や恐怖心などで主人公一行や世界や国を救おうとした人を無下に扱った結果、破滅に陥った、またはプレイヤーから怒りを買った国や人物も少なくない。決して他人事ではない。


余談

バランとソアラの回想は悲劇であったが、上記にあるように仮にバランの立ち位置にいる者が国の崩壊を目論む悪党や魔族、あるいはそんな目論見もないただの女たらしだったなら、読者や視聴者は一転してその悪に同情はなく、アルキード王も家臣も国民も国を守ろうとしたとして非難されなかったであろう。逆に言えばそれだけで評価が覆りやすい繊細で危ういエピソードと言える。

また、巨悪を倒した勇者や旅人と一国の姫君のラブロマンスもお伽噺の定番である(初代ドラゴンクエストにおける主人公とローラ姫の恋路もこれに当たる)と同時にその裏で未知数の存在に国を任せ、政治を担わせる不安と言う現実を突きつけており、ハッピーエンドのファンタジーのアンチテーゼとしても機能している。

また、この後の話でバランは命を懸けた相手を人間というだけで死後も侮辱するという彼が嫌ったアルキード王と同じ振る舞いをしているのは皮肉である。(もっとも、その人間のまさかの行動によって改心するのだが。)

快い結末ではないが、様々な意見が多角的に述べられる重厚なエピソードとなっている。


だからこそ、最終決戦において人間の醜さを指摘したバーンに対するダイの返答も、ある意味この悲劇に対する答えにもなり得るだろう。


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