「私は見ての通り、こういう存在だ」
容姿は単刀直入にいって四足歩行のケモノである。
長いマズルや遠吠えを披露するところはイヌ科のそれを連想させるが、骨格はライオンなどのネコ科に近いものがある。肩や脚には彼の一族に伝わる魔除けとしてイレズミが刻まれており、尻尾の先には炎がともされている。
「好きなように呼んでくれ」
「VII」本編での記念すべき初登場は序盤の山場、神羅ビルにて。実験サンプルとして神羅に捕らわれているところを主人公のクラウド一行と出会い、成り行きで同行することになる。
この時クラウド達に自らを「レッドXIII」と紹介している。キャラクターとしてのデフォルト名も「レッドXIII」であるが、これはあくまで宝条に付けられた無機質な番号であるため熱心なファンには好まれないことが多く、ファンの間では概ね本名である「ナナキ」で定着している。
どういった経路で神羅に捕らわれたのか、サンプルとしてどの様な生活を強いられていたか、詳しい詳細は劇中で語られていないが、後に「オイラ、宝条にはいろいろウラミがあるからね!」と語っていることからロクでもない扱いを受けていたことは確かだろう。
「実に興味ぶかい話だ・・・・・・」
クールで思慮深い大人なキャラクター。普通、初見プレイヤーは彼をこのように捉えると思う。
取説にも年齢が48と記されており、主要キャラの中でもブッチギリの年長者であるのもこういった先入観を裏付ける要因の一つであったと思われる。
立て続けに乾いた台詞を言い放つことから、これらの彼の言動を「渋い!」「カッコイイ!」と受け取ることができなかった人には「とっつきにくいお堅いキャラ」という負の印象を与えてしまったかもしれない。しかしそんなイメージも早々と吹っ飛ぶことになる。
徐々に剥がれ落ちる化けの皮
「・・・・・・・・・・・・・・・じっちゃん」
神羅ビルで彼自身の口から唐突にこぼれる一言である。初登場からのクールな印象を覆すいきなりな発言に、パーティー参入早々多くのプレイヤーの心に大きな疑問符を抱かせることになるのである。
「なに、バレることはないだろう」
数々のイベントを跨いで、先の「じっちゃん」発言のショックからプレイヤーがようやく立ち直り始めた矢先。クラウド一行は変装することで神羅の運搬船に潜り込み、別の大陸へと旅立つことになった。
みんな見事な変装で敵の目をかいくぐり順調に旅を続けていた。
途中、ティファが軍服に身を包みながら自分の生い立ちを憂うという、
ちょっと泣ける小話なんかをはさんでしんみりしていたその時である。
プレイヤーの前に異様な光景が舞い込んで来るのである。
「二本足で立つのもむずかしいものだな・・・・・・」
ナナキである。
当然彼も変装していることになるのだが、先述どおり、彼は人間とはかけ離れた外見を持っている。
おかげで足はよたよた、尻尾丸出しという有様。にも関わらず、当の本人は自信満々で人間になりきっているのである。
「この服を着るだけで、どこから見ても立派な人間だろう?」
どう見ても人間じゃありません。本当にありがとうございました。
これらのエピソードから少なくとも彼を「正統派二枚目キャラ」と見る人はいなくなったと思われる。
「普段は二枚目だが、所々でギャグをかましてくれるちょっとおいしい立ち位置」、
そんな風に考えていた時期が俺にもありました。
真実は我々の予想のはるか斜め上に存在したのである。
「ただいま~!ナナキ、帰りました~」
故郷コスモキャニオンに到着した「レッドXIII」が開口一番放つ台詞がこれである。
全プレイヤーが目を疑ったであろう。なんとレッドXIIIの正体はちょっと背伸びがしたかった人間年齢15、6歳なオイラっ子だったのである。この様な結末を誰が予想しただろうか。
15、6ってレベルじゃねーぞ!な幼児退行ぶりは大半の正常なプレイヤーをドン引きさせたが、それと同時に一部の人間の中に何かが芽生えたのである。
「なにこれかわいい!!!」
最後に
この他に類を見ない強烈なギャップはFFVII発売から10数年経った今でも評価され、根強いファンが存在するに至る。
ただ、ケモノキャラの宿命か(「主要なケモノ<<<<<<<越えられない壁<<<<<<<イケメンな脇役」という腐った需要)外伝作品での扱いは総じて最悪である。そんな中、彼を主役としたシナリオが描かれている小説「On the Way to a Smile」は異例の扱いといえる。もし「何それ知らない。」というナナキファンがいればオススメしておきたい作品である。