映画『スター・ウォーズ』及びその関連作品群をモチーフに行われるスペース・オママゴト。
恥じらいを捨て役柄に成り切る強固な精神力が必要とされる、銀河でも屈指の難易度を誇る禁じられた遊び。
【初級】
○アカペラライトセーバー
最も基本的な型。ライトセーバー起動中に発生する唸りに似た独特の音を、機械に頼らず己のフォースを唇に集めて再現する。
ライトセーバーが発する音は代表的な物でも「抜刀」「静止」「斬撃」「納刀」と多岐に渡り、ライトセーバー毎に同じ種類の音でも全く違う場合(例えば、ダース・ティラナスのライトセーバーは抜刀音が明らかにアナキン達と異なる)があるため、極めるには高い音感と長い年月を費やすことになる。
小道具を必要としないためいついかなる時にも行うことが可能であり、現在までに銀河で最も広く行われた型であると推測される。
○アカペラチャンバラ
アカペラライトセーバーを発展させた型。実際の戦闘を想定し、殺陣を行いながらアカペラライトセーバーを行う。
ライトセーバー同士の衝突音や光刃で物体を切断した音等も再現する必要が生まれるため難易度は高い。
この段階になるとライトセーバーの柄を模してペンライトを握る者や、実際に相手を用意して互いの動きを確認しながら殺陣に入る熟練者も現れ始める。
○アカペラベイダー
フォースの暗黒面に魅入られた者が行う外法の業。強大なシスの暗黒卿ダース・ベイダーが発する呼吸音や機械的な声を、生身の肉体を有したまま真似る行為。
失われたシス・オーダーによると出来得る限り抑揚を抑え、言葉を喋るのではなく喉から音声を押し出す事が秘訣であるという。
【中級】
○ケイコートーセーバー
遥か彼方の銀河系で使われた最も優雅なる武器ライトセーバーを現実に用いる手段の一つ。家庭用の蛍光灯を携え演舞や殺陣を行う物理的にも経済的にも痛い型。
普通の人間が蛍光灯を手にしても発光しないため、事前に静電気で帯電しておくなどの工夫が必要であり準備に手間と時間がかかることが大きな欠点。なお、光刃の色は蛍光灯に各種のセロファンを巻く事で解決出来る。当然ながら切れた蛍光灯では光らないのでフォースよりもクレジットに重きが置かれる。
蛍光灯を構成するガラスや蛍光灯の中に入っている粉は人体に有害であるため、この型に熱中した若きパダワンの多くが心と体に深い傷を負った。そのため、蛍光灯を用いず箒等を用いる事が一時期強く提唱されたが、「それは単なるチャンバラである」として退けられた。
○真の暗黒面の力
歴代のシス卿達は敵対する者に対して頻繁に「真の暗黒面の力」の強大さや恐ろしさを物語ってきた。彼らに傾倒する悪しき者共もまた、事ある毎に暗黒面について語ることを誇りとしている。
こうして幾度も説明を繰り返さなければならないのだから、「真の暗黒面の力」の恐怖など一般的には浸透していなかった事が窺える。
○ブゥブゥブゥブゥブゥブゥブゥブゥブゥブゥ…
誇り高きグンガンの長ボス・ナスに敬意を表する型。口を半開きにしたまま首を高速で左右に振り回しつつ声を発する事で、独特の音を発する事を目的とする。この時最重要視されるのは首を振る速度ではなく、口端から飛ばす唾液の量である。
アカペラライトセーバーと同じく小道具を必要としないが、人前でこの型を行うことで自身の社会的な地位や評価を失う可能性は極めて高い。そのためこの型を若者の勇気を試す成人の儀式とする声も挙がったとか挙がらなかったとかブゥブゥブゥブゥブゥブゥブゥブゥブゥブゥ…
○マスター・ヘタレ
銀河唯一のグランド・マスターであるヨーダがルークを試すためあえて道化を演じ切った悲しき歴史を再現する型。最初は徹底的に相手の邪魔をし、相手が堪忍袋の緒を切らした時にすかさず遠い目をして「この子には教えられん…」と呟くだけの独りよがりな業。
極論を言えば、相手の我慢の限界まで邪魔をし続ければ必ず成功するという変わった型。しかし、あまりに早く相手を怒らせたり、相手を怒らせるのに時間がかかり過ぎると美しさに欠ける。
時折ルーク役から「隠棲している暇があったら早く皇帝倒しに行け」「じゃあ弟子の話はいいです」などと無茶振りされるので、そうした予想外の事態に柔軟に対応する術者のリビング・フォース(アドリブ力)が問われる。
【上級】
○リアルセブルバ
ダーティな走りで人気を集めたポッドレーサー、セブルバに種族を超えて近付く型。両手の力だけで自身の体を持ち上げ、最終的には歩行することを目指す。
ある程度のバランス感覚と筋力を必要とするため選ばれた者にしか行えない事で有名。最も簡単な実行法はあぐらをかいた状態から両手に力を込めて体を浮かし、そのままあぐらをとく事であろう。両足を前に投げだしたままバランスを保つためには強靭な腹筋が必要である。さらに、歩行する際には姿勢制御のために背筋にも大きな負担がかかるなどと意外に鍛えるべき部分は多い。劇中のセブルバのように人間の子供(アナキン)並の速度で歩き続けるのは至難の業である。
バランス感覚に優れた者であればカエルバランスの体勢から両足を腕の間に通しセブルバに移行する事、及びその逆が可能である。ジェダイの予言によるとこれを成し遂げられるのは「セブルバランスをもたらす者」だけであるという。