概要
材料となる竜舌蘭(リュウゼツラン、Agave)は、単子葉植物綱キジカクシ目キジカクシ科リュウゼツラン亜科リュウゼツラン属に属する単子葉植物の一群の総称であり、100種以上が知られている。メキシコを中心に米国南西部と中南米の熱帯域に自生する他、食用や繊維作物、あるいは観葉植物として広く栽培されている。和名に「蘭」とあるが蘭の仲間では無い。
多肉質の肉厚な、棘だらけの葉をロゼット状に繁茂させ、「マスト」と呼ばれる長い花茎を生じるのが特徴。一般に成長は遅く、花を咲かせるまでに数十年を要するものもある。あまりの成長の遅さに「100年(1世紀)に一度開花する」とまで言われ、英語ではその巷説からセンチュリー・プラント(century plant)と呼ばれる。
リュウゼツランの仲間では開花期になると、それまでの栄養成長で蓄えたデンプンの糖化が起き、大量の糖分を含んだ液体の転流が花茎に起こる。メキシコでは先史時代から、若い花茎を切り取って切り口を掘りくぼめてこの液体を集め、そのまま調味料としたり酒の材料としてきた。この酒が「プルケ」である。
白濁したねっとりした酒だが、メキシコでは着色料で色をつけた物も販売されている。
『メスカルはプルケを更に蒸留させた物』という誤解があるが、原料は花茎ではなく、葉を落としたボール状の茎(ピーニャ)のデンプンを糖化させた絞り汁である。
テキーラは特定の地域で栽培した特定の品種のリュウゼツランを原料にテキーラ村とその近辺で蒸留したメスカルである。