ムジナ(漫画)
むじな
概要
忍者社会のリアルな惨さに重きを置きつつ、相原氏の持ち味であるコミカルさやエログロ描写を交えた作品。
作中の要所要所で、忍法や忍具、状況について作者から非常に詳細な解説が入るのが特徴(ギャグの一環でもある)
また、漫画を描くにあたって独自的かつ前衛的な表現を「実験シリーズ」と称して用いることがある。例:「間違い探しを仕込む」「全ての登場人物をベタで塗り潰す」など
ほとんどの伏線を回収してから風呂敷を畳んでおり、高いレベルで構成されたシナリオも見所である。
登場人物
卍の里の住民
特定の大名に属さないフリーな忍者集団。
首領・百目鬼幻也斎による圧政で中忍・下忍達は無謀な作戦に駆り立てられており、人員がどんどん減ってしまっている。
ムジナ
本作の主人公。落ちこぼれの見習い忍者で、ダメ忍者である父親を軽蔑していた。
しかし父親は過去に「優れた者ほど首領にこき使われ、手柄や実績などお構いなしに使い捨てられる」という忍者社会の現実を目の当たりにしていたため、敢えて無能を装っていた事を知り、それ以降を父の教えを念頭に行動するようになる。
物語の開始時こそ落ちこぼれだったが、これは父親が先述の理由からわざとムジナが弱くなるように鍛えていたからであり、必死の特訓や実戦を越えていくうちに目覚ましく成長する。
ただし精神面ではヘタレ気質が抜けず、父の「(自分だけは何がなんでも)生き抜いてやれ」という言葉を半ば言い訳気味に使うことも多い。
物語が少し進んだ頃、卍の砦で働く下女のスズメと出会い、恋してしまったために苦悩することになる。
スズメ
本作のヒロイン。何らかの理由で喋ることが出来ない。
その事で罵倒され続けてきたが、ムジナだけはしなかったため、強く惹かれるようになる。
器量・スタイルが良かったために幻也斎に目をつけられてしまい、仕込みの儀(要はセックス)に招来されてしまうが…
ずば抜けた胆力と精神力に加え、人を庇い、慈しむ心も持ち合わせている。
ゴキブリ
ムジナの父。大して手柄も上げないが、必ず生還はするため、いつしかゴキブリと蔑称されるようになった。しかしそれは演技で、実際は高い実力を持つ天才忍者。
かつて兄がおり、その兄は里で最も優秀な忍者とまで言われたが、当時の首領に優秀ゆえに使い潰された挙句、口封じで殺されてしまった。それを受け妻は発狂の末に自殺、まだ幼かった娘は首領に手籠にされ、くノ一に仕立て上げられたがやはり口封じの為に殺された。
この件から、里のために働くよりも自分が生き残ることを優先するようになる。
しかし無茶な任務を与えられ自分が死ぬことを察し、ムジナに自分の真意と教訓、そして秘技「忍法・跳頭(はねがしら)」を伝授した。
アヤメ
ムジナの母。うだつの上がらないゴキブリを蔑んでいたが、本心では愛しており、訃報の折には泣き崩れた。その後、元凶とも言える幻也斎を誘惑するフリをして殺害しようとする。しかし見抜かれており、強姦されながら絞殺されるというあまりにも無残な死を遂げた。
陣内
ムジナの友人で、同じ班の「雲組」に所属している。幻也斎の息子で、班の中では一、二を争う実力者。心優しい性格をしているが、それが「甘さ」として仇になることもある。
整った顔立ちをしており、女装しても違和感が無いほど。
物語の中盤で、暴虐の限りを尽くす父親に対して、クーデターを決行する。中盤のムジナは殆ど傍観者に徹しているため、この時期の実質的主人公と言える。
オサヨ
陣内の母。抜け忍の家族である幼い子どもを、幻也斎が始末しようとした際に庇ったため、殺害されてしまった。
サジ
ムジナ、陣内と同じ「雲組」に所属する。班の中では陣内とトップ争いをする程の実力者だが、性格は極めて粗暴。劣等生のムジナに何かにつけては暴力を振るっている。狡賢く、手柄の横取りなども厭わないなど、序盤は小物っぷりが目立つ。
オタカ
サジの母親。日々里の男達に夜這いを仕掛けており、サジは頭を悩ませている。
夫は既に死亡しており、そのショックで淫乱化してしまったと噂されている。
シロベ
敵の些細な動作から攻防を展開する「察気術」の天才。
優秀な忍びだったが、平気で手駒を使い潰す首領の無茶ぶりに嫌気が刺しており、ゴキブリの死をきっかけに抜け忍となることを決意する。
抜け忍の身内は竹製の鋸で、死ぬまで首をじわじわと切られる「鋸引きの刑」という生き地獄に処されるため、自らの手で妻と娘の首を跳ね飛ばしてから脱走。
かつては温厚な人物だったが、非情な態度で追手や目撃者を殺害していった。
雲組との戦いで死んだように見せかけ、一度は追跡から逃れかけるが、下痢で動けずに帰るのが遅れたムジナと鉢合わせてしまい、交戦する事になる。ムジナ初の実戦相手でもある。
鉄馬
雲組の教官で、リーダーもある。ハゲ頭と得物の鞭が特徴。
シロベの高等技を難なく対処し、自爆の不自然さに気付くなど、やはり実力は高い。
ムジナが下痢を理由に作戦に参加しなかったときはキツく凄んだが、女装作戦を提案し、ノリノリで変装する等のコミカルな一面もある。
彦一
幻也斎の側近。里の現状を嘆いており、クーデターに参加する。
奥目衆
幻也斎の身辺と砦の警護を担う謎の忍者集団。一人一人の能力が高く、卍の里で随一の忍びである彦一も警戒していた。
百目鬼幻也斎(どめき げんやさい)
卍の里の首領。部下を捨て駒のように扱い、人情のカケラもない言動を平気でする。
しかしその能力はあらゆる面において別格で、頭も非常に切れる。また、くノ一を虜にするために性技にも長ける。
自分の裸体に亀を侍らせて、股間で圧殺するなど、変態めいた行動をすることがある。
外吉
小汚い格好をしたうつけ者で、ウシャウシャ言いながら踊りつつ、里のあちこちを徘徊している。
百鬼衆
各自が何らかの障害を抱えているが、並外れた戦闘力を持つ。忍びの世界に名が知れ渡っており、その名を聞いた雲組は動揺しまくっていた。
観世音(かんぜおん)
百鬼衆の長。盲目だが、発達した聴覚と嗅覚で補っている。男だが女言葉で喋り、見た目も丸坊主に褌一丁とイロモノ全開なのだが、この格好は服や髪のスレなど余計な音を出さないためのものである。ケタ違いの強さを誇り、鉄馬を一方的に殺せるほど。相手にトドメを刺せそうな時は勃起するという変態性を持つ。ムジナを何度も追い詰めるが、偶然編み出した新技「蛍火の術」により谷底へ転落し、仕掛けてあった竹槍で全身を貫かれ死亡した。
梅庵
鼻が無く、発言が常に濁音になっている。鎖鎌の達人で、一度は鉄馬を退ける。
しかし女装した鉄馬に油を浴びせられたのちに放火され死亡。鼻がなかったために油の存在に気付けなかったのである。
カイナ
隻腕で、代わりに刀を仕込んでいる。雲組のスダレを殺害するが、陣内の女装に騙され、自らの仕込み刀を口に捻じ込まれて死亡。
ククセ
背中に異常な大きさのコブが出来ており、これで手裏剣や刀を防いでしまう。また、コブの防御力を活かして、地面を這うように動きながら無防備な脚を狙う戦法が得意。サジと戦うが、組み付かれた末に首を折られ敗北する。
カシム
両足が義足になっている老人だが、実はこの義足が火縄銃になっており、見た目で油断した相手を瞬殺する。雲組のモッケはこれで仕留めたのだが、ヒカゲに弱点を見抜かれ斬殺された。
シコモ
全身に大火傷を負った女性。両手に手甲鉤を装着している。陣内と戦うが、火のトラウマで怯んだ隙を突かれ死亡。
オビト
巨人症の男で、身長が271mもある。非常に発達した筋肉により、手裏剣が通用しない。
怪力でムジナを追い詰めるが、忍法・跳頭で混乱した隙に脳天を掻っ捌かれて死亡。
エチ
知的障害者で、基本的に何も考えていないが観世音の命令には従う。
頭が空っぽゆえに、殺気を出さず人を殺せるという特徴がある。また、馬鹿力の持ち主でもあり、素手で人間の首を捻じ曲げたり、刀をへし折ったりと言った芸当を難なくこなす。
耐久力も尋常ではなく、陣内とサジに滅多刺しにされても一度は死ななかった。二度目の滅多刺しで死亡。
シュジュ
小人症の男。素早く低い位置から繰り出される攻撃は防ぎにくく、戦ったサジは最後まで苦戦した。観世音が崖から落ちるところを偶然目撃し、動揺しているところをサジに突き落とされ、死亡する。
法一
両耳がない。紐で手裏剣を自在に操る「傀儡輪」を得意としていたが、技の仕組みを陣内に見切られ、敗北する
その他
満千代
伊河国の徳平信公の一人息子で、信濃国・狐嶽城城主の斎条道元の手により裏切り防止用の人質として軟禁されていた。百鬼衆は満千代を奪還されないために狐嶽城の宿老が雇ったものである。
わがままな一面もあるのだが、忍者顔負けの洞察力と理解力があり、観世音の目が見えないことに気付きムジナに教えた。