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ムジナ(漫画)

むじな

「ムジナ」は相原コージが手掛けた本格忍者漫画。週刊ヤングサンデーで連載されていた(1993〜1997)。全9巻。
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概要編集

忍者社会のリアルな惨さに重きを置きつつ、相原コージの持ち味であるコミカルさやエログロ描写を交えた作品。

作中の要所要所で、忍法や忍具、状況について作者から非常に詳細な解説が入るのが特徴(ギャグの一環でもある)


また、漫画を描くにあたって独自的かつ前衛的な表現を「実験シリーズ」と称して用いることがある。例:「間違い探しを仕込む」「全ての登場人物をベタで塗り潰す」など


ほとんどの伏線を回収してから風呂敷を畳んでおり、高いレベルで構成されたシナリオも見所である。


2024年、復刊出版決定!


登場人物編集

卍の里の住民編集

特定の大名に属さないフリーな忍者集団。

首領・百目鬼幻也斎による圧政で中忍、下忍達は無謀な作戦に駆り立てられており、人員がどんどん減ってしまっている。


ムジナ

本作の主人公。落ちこぼれの見習い忍者で、ダメ忍者の父親を軽蔑していた。

しかし父親は過去に「優れた者ほど首領にこき使われ、最後には使い捨てられる」という忍者社会の現実から、無能のフリをしているだけで、本当は父子共に天才忍者。

父の本当の姿を知ってからは考えを改め、実力もどんどんつけていく。しかし精神面ではヘタレ気質が抜けず、父の「自分だけは何がなんでも生き抜いてやれ」「愛する者を作るな」という言葉を半ば言い訳気味に使うことも多い。

物語が少し進んだ頃、卍の砦で働く下女のスズメと出会い、恋してしまったために苦悩することになる。


スズメ

本作のヒロイン。卍の砦で働く少女で、何らかの理由で喋ることが出来ない。

その事で罵倒され続けてきたが、ムジナだけはしなかったため、強く惹かれるようになる。

器量・スタイルが良かったために幻也斎に目をつけられてしまい、仕込みの儀(要はセックス)に招来されてしまうが…

ずば抜けた胆力と精神力に加え、人を庇い、慈しむ心も持ち合わせている。


ゴキブリ

ムジナの父。大して手柄も上げないが、必ず生還はするため、いつしかゴキブリと蔑称されるようになった。しかしそれは演技で、実際は高い実力を持つ天才忍者。

兄一家の悲惨な末路(後述)を目の当たりにして、里のために働くよりも自分が生き残ることを優先するようになる。

しかし無茶な任務を与えられ自分が死ぬことを察し、ムジナに自分の真意と教訓、そして秘技「忍法・跳頭(はねがしら)」を伝授した。


アヤメ

ムジナの母。うだつの上がらないゴキブリを蔑んでいたが、本心では愛しており、訃報の折には泣き崩れた。その後、元凶とも言える幻也斎を誘惑するフリをして殺害しようとする。しかし見抜かれており、強姦されながら絞殺されるというあまりにも無残な死を遂げた。


陣内

ムジナの友人で、同じ班の「雲組」に所属している。幻也斎の息子で、班の中では一二を争う実力者。心優しい性格をしているが、それが「甘さ」として仇になることもある。

整った顔立ちをしており、女装しても違和感が無いほど。

物語の中盤で、暴虐の限りを尽くす父親に対して、「赤い牙」を組織し、クーデターを決行する。中盤のムジナは殆ど傍観者に徹しているため、この時期の実質的主人公と言える。


オサヨ

陣内の母。抜け忍の家族である幼い子どもを、幻也斎が始末しようとした際に庇ったため、殺害されてしまった。


サジ

ムジナ、陣内と同じ「雲組」に所属する。班の中では陣内とトップ争いをする程の実力者だが、性格は極めて粗暴。劣等生のムジナに何かにつけては暴力を振るっている。狡賢く、手柄の横取りなども厭わないなど、序盤は小物っぷりが目立つ。


オタカ

サジの母親。日々里の男達に夜這いを仕掛けており、サジは頭を悩ませている。

夫は既に死亡しており、そのショックで淫乱化してしまったと噂されている。


シロベ

敵の些細な動作から攻防を展開する「察気術」の天才。

優秀な忍びだったが、平気で手駒を使い潰す首領の無茶ぶりに嫌気が差しており、ゴキブリの死をきっかけに抜け忍となることを決意する。

抜け忍の身内は竹製の鋸で、死ぬまで首をじわじわと切られる「鋸引きの刑」という生き地獄に処されるため、自らの手で妻と娘を殺害して脱走。

かつては温厚な人物だったが、非情な態度で追手や目撃者を殺害していった。

ムジナ初の実戦相手でもある。


鉄馬

雲組の教官で、リーダーもある。ハゲ頭と得物のムチが特徴。

シロベの高等技を難なく対処し、自爆の不自然さに気付くなど、やはり実力は高い。

ムジナが下痢を理由に作戦に参加しなかったときはキツく凄んだが、女装作戦を提案し、ノリノリで実行する等のコミカルな一面もある。


彦一

幻也斎の側近。里の現状を嘆いており、クーデターに参加する。

サルでも描ける漫画教室』内の劇中劇『トンチ番長』の彦一と同名かつ同じ顔をしている。


奥目衆

幻也斎の身辺と砦の警護を担う謎の忍者集団。

一人一人の能力が高く、卍の里で随一の忍びである彦一も警戒していた。

正体は首領選りすぐりのくノ一集団であり、首領にとっては護衛であると同時に愛人集団、すなわち大奥でもあった。


百目鬼幻也斎(どめき・げんやさい)

卍の里の首領。部下を捨て駒のように扱い、人情のカケラもない言動を平気でする。

しかしその能力はあらゆる面において別格で、頭も非常に切れる。また、くノ一を虜にするために性技にも長ける。

自分の裸体に亀を侍らせて、股間で圧殺するなど、変態めいた奇行を取ることがある。


外吉

小汚い格好をしたうつけ者で、ウシャウシャ言いながら踊りつつ、里のあちこちを徘徊している。


疾風(はやなし)の小太郎

里一番の手練れと評された忍者。黒姫城の城主暗殺に向かうが鷹目の半兵衛に敗れ、秘密保持のため己の顔を切り刻んで息絶えた。


才蔵

ゴキブリの兄でムジナの伯父にあたる。

里で最も優秀な忍者とまで言われたが、当時の首領百目鬼白雲斎により優秀ゆえに使い潰された挙句、激務による疲労から敵の手に囚われる。強靭な精神力で一切口を割らなかったが、卍の里の仲間により口封じで殺された。

妻はそれを受け発狂の末に自殺、まだ幼かった娘は首領に手籠にされ、くノ一に仕立て上げられたが、敵陣に潜入中に正体が露見し口封じの為に殺された。


ハチ

ウツキ

雲組のメンバー。脱走したシロベ討伐の任務の際に戦死。


ゲン

雲組のメンバー。シロベの自爆により片足を失う重傷を負う。一命はとりとめたものの、これ以降は登場せず。


スダレ

雲組のメンバー。満千代救出の任務で百鬼衆のカイナによって致命傷を負わされる。

置いて行かれたが即死はせず、身動き一つできないまま獣に齧られ白骨化していく様子が定期的に挿入された。


セタ、モッケ

雲組のメンバー。


ヒカゲ

雲組のメンバー。剣術を得意とする。

実験シリーズ「余談を入れてみる」によれば潜在的なホモだったらしい。


セナ

陣内のストライキ計画に賛同した忍の一人。

ストライキを密告しようとするサジを討とうとするも、首領の手の者によって殺害される。


三ノ目

ストライキ賛同者の一人。名前の通り目が3になったような厚ぼったい瞼が特徴。

実は首領側の内通者であり、ムジナに疑惑をなすりつけ殺そうとするも、彦一によりそれが露呈し陣内に処刑される。


ヒコネ

「赤い牙」メンバー。長髪のチャラそうな雰囲気の男。

かつて「里の娘は16歳になるまで性交を禁じる」という掟を破ったのがバレて男性器を切り落とされ、恋人も顔を焼かれた。


ガン

「赤い牙」メンバー。組織内では年長者で妻子持ち。


シギ

「赤い牙」メンバー。

変顔で首領を笑わせ魔空剣を妨害する活躍を見せる。


孫野善兵衛

卍砦の賄頭を務める壮年の男。女にいたぶられて悦ぶマゾヒスト。


百鬼衆編集

狐嶽城の斎条道元に雇われた忍者集団。各自が何らかの障害を抱えているが、並外れた戦闘力を持つ。忍びの世界に名が知れ渡っており、その名を聞いた雲組は動揺しまくっていた。


観世音(かんぜおん)

百鬼衆の長。

盲目を発達した聴覚と嗅覚で補っている。男だが女言葉で喋り、見た目も丸坊主に褌一丁とイロモノ全開なのだが、この格好は服や髪のスレなど余計な音を出さないためのものである。

ケタ違いの仕込み杖の使い手で、鉄馬を一方的に殺害した。相手にトドメを刺せそうな時は勃起するという変態性を持つ。


梅庵

鼻が無く、発言が常に濁音になっている。鎖鎌の達人で、一度は鉄馬を退ける。


カイナ

隻腕で、義手の中に刀を仕込んでいる。外国人のような片言気味の喋り方が特徴。


ククセ

背中に異常な大きさのコブが出来た所謂せむし男。これで手裏剣や刀を防いでしまう。また、コブの防御力を活かして、地面を這うように動きながら無防備な脚を狙う戦法が得意。


カシム

両足が義足になっている老人。無力な非戦闘員のように振る舞っているが実は義足が火縄銃になっており、見た目で油断した相手を射殺する。


シコモ

百鬼衆で唯一の女性。全身に大火傷を負っており、醜く爛れた顔を隠すため右目だけを覗かせた覆面を被っている。得物は両手に装着した手甲鉤。


オビト

身長が271cmもある巨人症の大男。非常に発達した筋肉で全身が覆われており、手裏剣程度の刃物は通用しない。


エチ

知的障害者で、基本的に何も考えていないが観世音の命令には従う。

頭が空っぽゆえに、殺気を出さず人を殺せるという特徴がある。また、馬鹿力の持ち主でもあり、素手で人間の首を捻じ曲げたり、刀をへし折ったりと言った芸当を難なくこなす。

耐久力も尋常ではなく、陣内とサジに滅多刺しにされても一度は死ななかった。


シュジュ

小人症の男。素早く低い位置から繰り出される攻撃は防ぎにくく、戦ったサジは最後まで苦戦した。


法一

両耳がない。紐で手裏剣を自在に操る「傀儡輪」が得意技。


その他編集

鷹目の半兵衛

黒姫城の忍者。陰剣・鎌鼬により小太郎を倒す程の実力者。


満千代

伊河国の徳平信公の一人息子で、斎条道元の手により狐嶽城に裏切り防止用の人質として軟禁されていた。百鬼衆は満千代を奪還されないために狐嶽城の宿老が雇ったものである。

わがままな一面もあるのだが、忍者顔負けの洞察力と理解力を持つ。


斎条道元

志濃国の狐嶽城の城主。いつも咥えているゲソが特徴。


伊藤玄馬

狐嶽城の宿老。


忍術編集

本作品における忍術・忍法は殺傷力や破壊力よりも相手の虚を突き隙を作らせる事に特化したものとして描かれる。


忍法・跳頭

ゴキブリの忍術で後に息子ムジナに伝授する。

あらかじめ頭頂部を残して頭髪を剃り上げてカツラを被る。戦闘時には刀を抜くふりをしてカツラの留め具を外すと残った毛に繋いであったバネがカツラを跳ね上げる。

緊迫した戦闘中に起こった全く無意味かつ予想外の事態に敵が呆気に取られている間に倒す技。


蛍火の術

観世音との戦いでに刀の火花が引火したのをヒントにムジナが開発した術。

訓練で自在に出せるようにした屁を種火で引火させ敵の顔に炎を浴びせる。


獣隠れの術

ムジナの忍術。

の毛皮を被って動物になりすます。


陰剣・鎌鼬

鷹目の半兵衛の忍術。

接近戦になった際に足袋のつま先に仕込んだ刃で斬りつける。


鮟鱇の術

忍術というよりは戦法。

アンコウの触角のように囮を使って敵戦力を引き付けさせ、別動隊が目的を果たす。


発破死装隠れの術

シロベの忍術。

強烈な閃光で一瞬敵の目をくらませてあらかじめ用意していた死体と入れ替わり、それを自爆させて死を偽装する。


忍法・傀儡輪

法一の忍術。

見えにくく偽装した糸に繋いだ手裏剣を自在に操る。


忍法・火炎竜

奥目衆の忍術。

油をしみ込ませた布を被り火を付ける。自決したと思い敵が油断した隙に旋回しながら飛び上がりつつ手裏剣を投げ一掃する。


忍法・海月落とし

奥目衆の術。

追い詰められた際に一瞬で服を脱ぎ捨てる。奥目衆の忍装束は体型が隠れるようになっているため外見では女だと分からず、男だと思っていた相手が女の裸身をさらした事で困惑している隙に敵を倒す。


忍法・魔空剣

幻也斎の忍術。

触れることなく相手の体を切断する神通力のごとき術。

実態は口に含んだ水を歯に埋めた金属板の小さな穴から噴出させる技。首領の常人ばなれした肺活量によりウォーターカッターと化す。


忍法・跳頭(上)

ムジナが海月落としをヒントに跳頭を改良した術。

跳ね上がったカツラから女の裸が描かれた垂れ幕が下がってくるため相手は跳頭以上に驚くことになる。












後半の展開(ネタバレを含む)編集

多くの犠牲を払いつつも、見事に幻也斎を討ち取った陣内達だったが…












百目鬼幻也斎

彼は影の首領の傀儡に過ぎなかった。報酬や情報などもほとんどあちらに取られてしまっている。

圧政も嫌々やらされており、妻オサヨの殺害も影の首領の手によるもの。

しかしそれを良しとせず、密かに資金を蓄えたり、大名に取り入ったり、私兵集団である奥目衆を組織するなど、裏で影の首領に対抗するための準備を進めていた。つまり本当に里のためにクーデターを起こそうとしていたのは幻也斎だったのである。その事に感づいた影の首領により、幻也斎へのクーデターが起こるように仕向けられた。

実は善人だった……とは言い難いが、甘い汁を啜ろうとだけしていたガン達(新たに首領に仕立て上げられたサジの裏で実権を握ろうとした)よりは遥かに出来た首領だったといえる。


陣内

幻也斎の死際に真実を知り、激しく動揺する。

その後、本性を表した彦一により、あえなく殺されてしまった。


外吉

影の首領その人。うつけ者のふりをして里の監視をしていた。

その正体は伊賀の上忍・服部半蔵である。オタカの死を受け、裏切りを決心したサジによって正体をバラされるが、これがキッカケで伊賀忍者が卍の里を皆殺しにするため乗り込んでくる事になる。

織田信長の手から落ち延びたところを徳川家康に拾われ、いたく感謝している。

その後、家康公が天下を取るためにも、今後は「情報」が武器になってくると説き、同業者の忍者集団を潰して回っていた。しかし、フリーの組織である卍の里は吸収してしまえば更に優位に立てる事に気が付き、幻也斎を脅して影の首領の座についた。

最後はムジナ・サジのタッグと戦う。

彼が本当に服部半蔵だったのか、はたまた影だったのかは不明とされている。


彦一

卍の里の人間だったが、半蔵に実力を認められ伊賀に寝返り、幻也斎の監視をしていた。

幻也斎の死後は真面目で駒になりえない陣内を殺害する。そして半蔵が都合の良い駒と認めていた事もあって、卍の里の者達に、サジを新たな首領に据えることを進言する。

その他にも、里の真相に気付いたサジの父親カゾの暗殺など、様々な裏工作を行なっていた。

本人は里を裏切っていることにかなりの後ろめたさを感じており「殺した同胞が化けてでるんじゃないか」と幽霊や化物の類を異常に恐れている。


オタカ

夫が殺された際、犯人に無理やり口淫をさせられたが、その際に陰部に思い切り噛みつく事で傷痕を付けることに成功。里の男達に夜這いを仕掛けていたのは、その傷痕の持ち主である夫の仇を見つけ出すためであった。

オタカの行動は、後半の様々な場面で強い影響を残した。


サジ

幻也斎の死後、半蔵と彦一の手引きにより新たな首領のポストに就く。

しかしオタカの真相を知ったことで裏切りを決意し、外吉が影の首領であることをバラした。

ひたすら強くなることを目指していたが、「自分が本当に目指していたもの」を思い出し、伊賀忍者との戦いに身を投じる。後半はムジナとサジのダブル主人公と言っても過言ではないほどの活躍を見せた。

序盤こそムジナに強く当たっていたが、話が進むごとに次第に認めていき、クライマックスで再会したときには非常に嬉しそうな顔をしていた。


スズメ

囚われの身となり、彼女を救うことが物語の最後の目的となる。

一貫して体力、精神力、胆力、底力がずば抜けており、苛烈な拷問に耐えたり、ある技を使って伊賀忍者を殺害したり、ムジナが追い詰められた時には心中を受け入れる意思を示すなど、作中屈指の傑物。


ムジナ

スズメの危機を知りつつも、一度は自分だけ逃げようとする。しかし、かつてゴキブリが「自分だけは生き延びろ、そして愛する者をつくるな」と言いつつも「愛する家族のために死ぬ道を選んだ(抜けると身内が鋸引きの刑に処されるため、自分が死ぬと分かってても逃げなかった)」事に気が付き、「自由なんかいらねえ」と、スズメの救出を決意する。

伊賀忍者に成り済まして卍の里に潜り込むがこの時にかつての友人「ガンモ」をやむなく手に掛けてしまう。そして、伊賀忍者がガンモに向けた侮辱に激怒・覚醒し、以後は化け物じみた力を発揮するようになる。

最後は伊賀忍者の群れに単身立ち向かうが……


関連タグ編集

相原コージ ヤングサンデー

白土三平 本作には『カムイ伝』など白土が描いた忍者漫画のオマージュが随所に見られる。

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