山奥のラーメン屋
やまおくのらーめんや
概要
「山奥のラーメン屋」は、洒落にならない怖い話こと、洒落怖の一編である。
山道をドライブ中の男女が、道に迷い、山奥にラーメン屋を発見。しかしそのラーメン屋は、異様な雰囲気を醸し出していた……という怪談である。
あらすじ
北陸のある山中を、彼女とともに深夜にドライブしていた投稿者は、道に迷ってしまった。
ナビは機能せず、困っていたところ、パッと明かりが見えた。
それは、広い駐車場を持つラーメン屋の明かりだった。
「こんな山奥に? しかももう真夜中だぞ?」
投稿者は、なにか違和感を感じたが、彼女の「道を聞いてみれば」という言葉に従い、駐車場に車をとめた。
やたらでかい駐車場だが、車は一台も停まってない。
店に入ると、かなり広い店内が満席だった。
しかしよく見ると、だれもラーメンに手をつけてない。
ただ座ってるだけ、会話もない。
シーンと静まり返る店内に、ラーメンの湯気だけがもうもうと舞っている。
その光景に怖くなり、投稿者はすぐ店を出て車を走らせた。
結局朝方に近くなる頃、通りかかった族車の兄ちゃんが親切にも先導してくれて、ようやく県道まで出られた。
その兄ちゃんにラーメン屋の話をすると、
「ああ、知ってるよ。ここらじゃ有名だ」
「でも、よそ者しか見られないんだ。俺たち地元の人間は話を聞いたことしかない」
「俺だって、あんたみたくラーメン屋から逃げ出してきて、道に迷った人をつれて帰るのは一度や二度じゃねーもん」
更に、
「ああ、それから女連れだったなら、女店員に話しかけられなかったよな? 話しかけられなかった? ああ、そうかよかったな」
女店員? 見なかったが、話しかけられるとどうなるのかは、
「知らんほうがいい」
と言って、教えてくれなかった
別れ際、
「それから、もうここにはこないほうがいいよ」
「二度目はひどいらしいから」
そういい、兄ちゃんは爆音で去っていった。
気持ち悪い体験でした……という、投稿者の結びの文で、この話は終わる。
解説
山奥で迷った先に、建物(店)を発見。そこで奇妙な体験をする、という系譜の怪談。
駐車場には投稿者の車以外は停まっていないのに、広い店内は満席。しかも時間は真夜中なのに、店が建っている場所は山奥で、徒歩で人家のある居住地まで行き来する事は考えられない状況。
加えて、店内の客たちは、ラーメンどんぶりを前にして、動かず、言葉も一言も発せず、ただ座って佇んでいるのみ、という、異様な光景が広がっていた。
この時点で投稿者は引き返し、族車の兄ちゃんに助けられるのだが、助けた男の口からは、どこか思わせぶりな言葉が並ぶ。
「地元では有名だが、地元の人間は遭遇せず、話に聞くのみ」
「遭遇できるのはよそ者のみ。これまでに何人もの遭遇者がいたらしく、男は何度も助けていた」
さらに、
「女性が同行していた際、女性店員に話しかけられていたら、大変な事になっていた」
「(具体的に何が起こるかは)『知らない方がいい』」
「再びここに来ないようにと警告される。二度目は酷いらしい(何が『ひどい』のかも不明)」
と、再訪したら何かが起こる、それもより悲惨なものになるらしいと、含ませるような事を言い残し男は去る。
あのラーメン屋はなんなのか、客たちはなぜ食べずに佇んでいただけなのか、登場しなかった女性店員とはどんな存在で、話しかけられていたらどうなったのか、二度目はひどいとはどうひどいのか、そういった事全てに説明が無く、「訳の分からない、気味の悪さ」の読後感を残す怪談である。
続編などはなく、この話だけで終わっているところも、説明不足と理解を拒むような不条理さを感じさせている。