八尾比沙子
やおひさこ
物語序盤で異変に巻き込まれて傷ついた主人公・須田恭也を助け、赤い水の意味や幻視能力、村をうろつく屍人の事等様々な情報を提供してくれる。村でも、普段から共に勤める求導師・牧野慶や、一部を除く村人たちから厚い信頼を寄せられている。
出会った当初も物腰柔らかく穏やかな好人物で、プレーヤーは彼女を頼れる人物だと思うであろう。しかし物語が進み、村の因縁が解き明かされていくにつれ、彼女に対する印象はがらりと変わる。
その正体は1300年以上の時を生きてきた不老不死の人間(八百比丘尼)で、羽生蛇村を襲った怪異の元凶となった者である。
今から凡そ1300年前の西暦684年、羽生蛇村は日照りによる大飢饉で壊滅状態にあり、当時子供を懐妊していた比沙子も飢えで死に掛かっていた。そんな折、巨大な三角岩と共に謎の異形が天上の“常世”から降ってきて、羽生蛇村に落ちた。空腹の比沙子を始め生き残っていた数人の村人は、我先にと落ちてきた異形に群がりその生肉を食べてしまう。
異形が断末魔の悲鳴を上げた瞬間、その声を聞いた村人達は皆死に絶えたが、何故か比沙子だけは無事に生き残った(理由は不明だが「妊婦だった為」というのが定説)。その代わり『永遠の命』という呪いを掛けられ、「常世の存在を下位の存在である人間が食らった」罪の贖いの為に、一人悠久の時を生かされることになったのである。
比沙子はその後娘を出産するが、娘は生まれながらに「不完全な不死(肉体だけが朽ち、命が永遠に尽きない)」の命を持って生まれてきた。そんな娘の呪いを解く為、「自分が食べた異形の肉を元に戻せば罪は晴れる」と考え、娘を異形への生贄にする事を思いつく。その生贄となった娘こそが神代家の先祖であり、つまり物語のヒロイン・神代美耶子は比沙子の直系の子孫ということになる。
が、1000年という人間には長過ぎる時間を生きた比沙子は、人格が荒廃して耄碌が始まっており、既に自分が何の為に生贄を差し出しているのか分からなくなっている。つまり「生贄の儀式」そのものが目的になってしまっていて、彼女は「永遠に贖罪が終わらない」という絶望に未だ気付かないでいるのである・・・・・・。